粉屋の大阪to考想

大阪都構想否決を受けて、その辺をだらだらと書いてみます。大阪の政治状況も併せて書いていきたいですね。Twitter: KONAYA @PAN_KOYA

「大都市制度(総合区設置及び特別区設置)の経済効果に関する調査検討業務」の調査結果に係る報告書」の雑感

 

www.city.osaka.lg.jp

大阪府大阪市では、「大都市制度(総合区設置及び特別区設置)の経済効果に関する調査検討業務」の調査結果に係る報告書を公表します。

 大阪にふさわしい新たな大都市制度の検討として、大阪府大阪市では「大都市地域における特別区の設置に関する法律」に基づき、「大都市制度(特別区設置)協議会」(以下「協議会」という。)を設置し、特別区設置についての具体的な制度設計を行っており、また、大阪市においては総合区設置についての具体的な制度設計を行っています。

 本業務は総合区制度と特別区制度それぞれの導入による経済効果について、議会や協議会等での議論に資するため、「副首都・大阪にふさわしい大都市制度《総合区素案》」及び「副首都・大阪にふさわしい大都市制度《特別区(素案)》」をもとに、定量的に推計・整理を行ったものです。

 

 今回はこの「「大都市制度(総合区設置及び特別区設置)の経済効果に関する調査検討業務」の調査結果に係る報告書」についてザクっと見てみたいと思います。まあ細かい数字はわかりませんので放っておきますw 個人的にここで書かれてる文言や数字についてのピックアップとコメント程度のものになります。「 」内部は報告書からの引用になります。

 

P.19

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「この図からは、大阪市の行政区ごとの歳出は他の政令指定都市の行政区と比較しても高いことがみてとれる。大阪市浜松市とともに行政区の予算に人件費を計上している。そのため絶対水準でみると予算規模が大きくなっているが、こうした要因を取り除いたとしても、人口規模の小ささゆえに規模の経済性の恩恵を享受できず、財政が非効率となっている可能性がある。」

 

 大阪市の行政区は24区と多く、また人口は多いものの1区当たりの人口は地から2番目。「大阪市は、基礎自治体の規模としては大きすぎるのに対して、行政区の規模としては小さすぎるため、区の規模を見直し、権限を拡大する新たな仕組みの検討により、行政運営の効率化」が必要なのは確かですね。

 

小難しい数字はバレット・ペーター両氏に丸投げするとして、次はP32以降ですね。

 

「(3)効率化の実現可能性

ここまでは、二元行政解消による財政効率化効果について見てきたが、総合区制度と特別区制度では広域機能に関する意思決定のシステムに相違があるため、削減可能額の実現可能性は異なる。広域機能が一元化されていない総合区の場合(指定都市都道府県調整会議における府市間の協議による)、理論上求めた削減可能額が必ずしも実現可能とは考えにくい。そこで、以下では実現可能性を検討し、実現可能額を求めてみた。」

「(3.1)実現可能性の数値化について
総合区制度において二元行政解消を進めるためには、府市間の協議が合意に至らなければならない。そこで、過去の府市間の協議実績を調査し、それらがどの程度の割合で合意に至ったのかを数値化してみた。」

 

これ結構おもろいw 

 

「概ね首長の方向性が一致している期間として「松井知事‐橋下市長(H23~27)の期間、首長の方向性が必ずしも一致していなかった期間として「太田知事‐磯村市長(H12~15)」「太田知事‐関市長(H16~19)」、「橋下知事‐平松市長(H20~23)」として大きく峻別した。その結果、首長の方向性が一致している期間の実現可能性は 57.7%(=15/26×100)であるが、一致していない期間の実現可能性は 10.2%(=(2+0+3)/(33+11+5)×100)である。」

 

 この実現性の違いってのは維新が訴える点として重要ですね。本当に今の大阪における府市の関係って奇跡的なんですよ、こういう数字を見ると。そしてその奇跡から生まれる各政策による経済的な効果は莫大であることも大阪府民、市民は実感できていると思います。

 

「5.3 府市連携による経済効果
(1)産業連関分析による経済効果

大都市制度改革の経済効果は、財政構造の変化を通じて経済構造の変革を促すことで得られていくと考えれば、産業連関分析によって経済効果を捉えることが適切」

 

「・地下鉄中央線延伸(540 億円, 工期 7 年)
・JR 桜島線延伸(1700 億円, 工期 11 年)
なにわ筋連絡線・新大阪連絡線(1310 億円、同時整備の場合, 工期記載なし)
産業連関分析によって経済効果を測る上での投入額として、上記 3 つの事業費総額 3,550億円と設定した。今後、事業実施に向けて調整されると見込まれる広域的なインフラ整備については未確定なところが多いが、今回は、工期を 10 年間と仮定した上で、10 年間にわたる生産誘発額を算出した。上記の総額 3,550 億円を建設部門に投入し、(5-10)式により生産誘発額を計算した結果、生産誘発額(一次波及効果)は 4,867 億円と推計された。」

 

ふむ。まあこの辺の検証はバレット・ペーター両氏に以下略。

 

「(4)総合区制度における府市連携に要する協議・調整の期間の設定
総合区制度において、費用負担等において大阪府大阪市が協調する必要がある社会資本整備を進めるためには、合意に至るまで協議・調整する期間が一定必要となる。まず、府市の首長間で方針が一致している場合でも、広域を担う組織が 2 つあることから生じる具体的な内容の協議・調整に時間を要する。さらに、首長間で方針が一致してい
ない場合には、そもそも協議そのものに着手できない可能性がある。そのため、総合区における社会資本整備の経済効果を算出するにあたり、具体的な内容の協議にどれだけの期間を要するのかについて、過去の府・市間の協議の実績を調査し、協議開始から合意に至るまでにした項目のうち、どれだけの期間を要したかについての協議期間を定量するとともに、そもそも両首長が協議を行うこと自体に合意できない場合にどれだけの期間に遅れが生じるのかについて定量した。」

 

 これ、面白い試みだなぁ。これ、総合区となってますが、現行の大阪府大阪市として考えていいかと思います。で、下のが結果ですが、まあ時間かかるよね、府市が統合されてないとって所ですね。

 

「以上から、総合区制度において、府市連携による社会資本整備を進める上で協議・調整に要する時間について最小値と最大値を設定すると、下記のとおりとなる。
【協議・調整に要する期間】
・具体的な内容について協議する期間 :1 年 4 か月

・協議そのものに着手できずに遅れる期間:4~10 年
⇒協議・調整による遅れの期間を、最小値 1 年 4 か月~最大値 10 年と設定」

 

P42,

「6.政策効果分析による特別区の経済効果」

地方自治体の財政構造は人口が増加すると、規模の経済性が働き、住民 1 人当たりの歳出が抑えられる。一方、人口規模の拡大は、きめ細やかな行政サービスを困難にさせる。補完性の原理の恩恵を失わせてしまうため、過度に人口規模が大きくなると住民 1 人当たりの歳出は拡大してしまう。その結果として住民 1 人当たり歳出が最小になる、言い換えれば最も効率的に財政運営を行える人口規模が存在すると考えられる。」

 

なかなか示唆的ですね。人口における役所の規模最適解は?って所ですかね。この報告書ではその人口を「おおよそ 50 万人前後」としています。

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 ここから、総合区と特別区の経済波及効果が以下。

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 結果のまとめとして以下

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「8.2 政策的意味
府市の連携の強化の程度は財政効率化や経済効果に影響を与える。
まず、財政効率化としては、基礎自治行政の財政効率化効果として、総合区は行政区と、特別区は市町村との比較により、それぞれの最適規模を導くことで、総合区では、10 年間で 3 億円から 712 億円、特別区では 1 兆 1,040 億円~1 兆 1,409 億円の効果が生じるとの結果を得た。(以下の数字も 10 年のもの)加えて、二重行政の解消については、大学と病院をモデルに算定し、府市協議の実績から総合区では 4 億円から 39 億円、広域機能の一元化された特別区では、39 億円~67 億円の効果が生じるとの結論を得た。
次に、政策効果分析による経済効果で言うと、意思決定の迅速化による社会資本整備の進展の効果として、交通インフラをモデルにした場合、総合区であれば、都道府県指定都市調整会議による協議の実現性、期間をこれまでの府市協議の実績から導くことで、ゼロから 4,218 億円の効果。特別区であれば、広域機能が一元化され、協議の必要がなくなることで、速やかな意思決定のもと迅速に社会資本整備が進むとして、4,867 億円の効果が生じるとの結論を得た。広域機能の一元化が制度的に担保されるかによって効果に差が生じたものと考える。加えて、マクロ経済計量モデルにおいても、総合区、特別区それぞれの効率化によって生み出される財政資金をもとに、それぞれの限界生産力を加味することで、総合区で最大 853 億円、特別区で最大約 1 兆 1,511 億円の効果との結論となった。」

 

 前回批判してた効果額より桁が違うのが出てきましたね、どうします?反対派の皆さんって感じですね。個人的な感想を書くと、まあそらこれぐらいは出るんでない?ってとこです。数字の精査は今後、いろんなところがやるでしょうからそれ待ちの部分はあります。総合区案の区割り数については今回の結果からば判断するとより、纏めた形のものがいいとかになるのかなぁ。まあその辺はわかりませんが、今後、この辺を議題に特別区設置協議会は進むんでしょうけど、「こんな数字は信用できん」とかで共産自民が言ってくるだけは確信していますw

 

 

資料:

www.city.osaka.lg.jp

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