粉屋の大阪to考想

大阪都構想否決を受けて、その辺をだらだらと書いてみます。大阪の政治状況も併せて書いていきたいですね。Twitter: KONAYA @PAN_KOYA

特別区名について ~東西区問題~

特別区名について、もうちょっと書こうと思ってたのが長いので、先にちょっと書いたものも纏めて一つの記事にします。

 まず区名問題ですが、これを書いている現時点(18/3/28)で区名の候補が出てきて、次の大都市制度(特別区設置)協議会(以下協議会)で話し合う感じですね。実際、次の協議会で決まれば、それで区名は決定です。事実確認を以下。
 

 

 ① 協議会は特別区設置協定書の中身を決める法定協 (大都市法に定められた協議会)である。
 ② 第8回で区割りを委員の決を採り、協議会で決定をしました。
 ③ 同様に第9回では区名を決定するのでしょう。ここで決を採り、区名が決定されれば、その後、これが変更されることは有り得ません。それが出来るのなら(決を反故にできるのなら)協議会で決定したことを全てひっくり返せることになりますから、それはできません。あの4つの区名で特別区設置の住民投票を行うことになり、その住民投票で賛成多数になれば、あの4つの区名で特別区は発足することになります。
 ④ 住民投票以降から特別区設置までの間に住民投票で区名を決めるといったこともできません。特別区の区名は特別区の財産のようなものであり、大阪市がそれを侵害することはできません。あくまでそれが出来るのは、特別区設置以降の話になります。区名は特別区設置協定書に書かれている事項であり、これの変更が可能であれば、その他、財産や財源調整など好きに住民投票後に変更ができることになりますから。
 
 現時点では以上の4点の理解で間違えてないと思います。以下、先の記事に書いたものを加筆修正しつつ、区名問題に対してどういう対処が可能かを書きます。重複しますが、お付き合いいただければ幸いです。
 

 まず、「特別区成立以降に区名は住民、ないし特別区長(議会)が望めば変更できる」ってことについて書きます。こういう説明を前回でも橋下さんや今回は松井さんも説明してるようです。でもはっきり言います。これは嘘です。嘘が言い過ぎなら本当ではありません。現実的に無理だもの。もしやるのなら住民が署名するなり、特別区長がそれを公約に掲げて当選すればできるでしょう。そう、できることはできる。でも誰がするんですか?そんなこと。 維新が賛成をして決めた区名を、維新の候補が区名変更を公約に特別区長選挙を戦うんですか? そしてそれで仮に変更しとして、それは正しい事でしょうか?そういったことで区名変更に使う膨大な予算、税金を使うことが正しい事とは私は思いません。
 維新が言っている「特別区移行後に区名変更ができる」という説明は逃げの説明です。それも後ろ向きの。いつから維新はできもしないことを「できる」と言ってしまう政党になってしまったんですか?そんなのは大阪自民と共産でお腹いっぱいです。この説明は前回の住民投票で、橋下さんが使った論法です。でもそれは歯切れの悪い、苦しい説明でした。前回は区名問題があれだけ問題になるとは思われてなかった部分もあるし、しょうがない部分もあったでしょう。私はあの橋下さんの説明をそういった形で理解しています。でも今回は2回目です。なのになぜ同じ説明を繰り返すんですか?
 特別区移行後、1か月で区名変更とかできると思いますか?単純に役所内の経費だけでも膨大です。看板から名刺、書類に至るまで全部を作り直しになるんですよ?そしてシステム改修。特別区のシステムは大阪市のシステムを改修して、4区で共用する予定です。私はこういうシステムを専門にはしていませんが、区名変更のようなシステム全体にかかわるような変更は相当に大変だと思っています。他の3区も連動して使ってるシステムを大規模に変更するんですから、他の3区との折衝だけで相当大変ですし、補償も大変です。だって移行時はシステム止めないといけないし、新システム移行後に問題ないかのチェックも業者はもちろん、役所の人間もでてこないといけませんからね。今回の特別区移行での改修費は182億円の試算です。1/10でも20億近くかかるわけです。5%としても10億。ほかに先ほど言った役所内の事務類の名称変更やら、看板変更。億単位です。そして民間の住所変更。そら何十年かに一回ならみんなも不承不承でもやるでしょうが、変更して数か月、数年で変えられたらたまったもんじゃありません。特別区域外、日本全国で住所変更しないといけません。そして民間でのそういった経費はいくらになるか見当もつきません。
 そういった困難を乗り越えて、区名に異議のある区は何十年か後には区名の変更はできるでしょう。それはどこの市町村でもやってます。でもそれをさして、「特別区移行後に変更できる」ってのはやっぱり嘘ですよ、本当に。「東西区」私のツイッターのTL内では大不評だし、私も大批判をしています。当たり前だけど、何も考えてなさすぎです、これ。前の湾岸区は不評だったのは湾岸区域の一部だし、中にはいいねと思う人もいたでしょう。そして湾岸区区域以外でそれほどこれが不評だったとも聞きません。でも今回の東西区は大阪市中で不評が出ますよ。だってなんも維新は考えてないと思われるもの、この東西区。「10秒で考えたん?」って言われますよ。まあ東西区を考えた人たちは色々考えてると思いますよ、時間をかけてね。でもダメです。センスなさすぎ。センスがないというのは東西区という字面もありますが、こういう区名を始めとした非理性的、感情的なことに対して有権者からの反応に鈍感、というかあまりに考えがなさすぎます。最近で言えば、希望との連携とかがそうですね。維新は理性的なことに対しての政治的センスは非常に高いと思っています。数字で割り切れることには。でも数字で割り切れない感情的なことに対する政治的センスが余りにもなさすぎる。絶望的なまでに。
 結局、区名って色々な物を内包(住民不安のはけ口、もっとも単純な反対理由、郷土愛他諸々)してますが、単純に言えばこれは都構想という品物の包装紙みたいなもんなんです。包装紙の良し悪しで中身を判断するなっていう意見はあるでしょうが、やはり包装紙、というか見かけというのは大事ですよ。この場合の見かけというのは考えた形跡であり、時間であり、決めた過程です。東西区にそれを感じられるかというと感じられないもの、本当に。で、東西区という名を聞いたときにそういった時間を使って考えたようには思われない。イコール、「維新って都構想の中身について本当に考えてるの?」って思われるんです。だから私は東西区に大反対です。これ一つで住民投票で10ポイントは賛成票が下がると思ってますから。
 でもあの4つの区名で今回の住民投票は戦うことになるでしょう。特別区設置協定書は仮称での区名は受け付けませんから、今までの協議会からの流れからしてそうなります。維新が賛成して、公明は保留、自民・共産反対で維新のみの賛成多数であの区名で本決まりです。次の協議会で決まるんだから時間はない。だからあの区名に不安を覚える人は早々に反対のメールなりなんなりで意思を表明した方がいいですよ、本当に。勝てるわけがない。 
 東西区という区名は役所が作ったのかもしれないし、維新の提案かもしれないし、その辺は現状ではわかりません。ただ維新が協議会で賛成をして決めれば、それは維新の案です。私は具体的な名称の区名を決める文学的なセンスを維新に期待していません。政治のプロである維新に期待するのは政治面でのセンスです。区名という感情的な問題は、日本語の日本最高の頭脳を集めて練りに練っても反対の出る、絶対に過半数の賛成は得られない問題です。だから東西区であろうが、そういう人たちが審議会で最高の特別区の区名をひねり出してきても大差ないといえば大差がありません。じゃあ何を人は見るかというとこの区名に決定するという過程なんです。大方の人間が反対だろうが何だろうが、しゃあないな、で納得できる過程を作るのが政治家の仕事です。そこを作るのが維新の仕事なんです。それをぱっと出してぱっと区名を決めるという過程でやると、絶対に感情的なしこりが残ってその後の都構想の作業は上手くいきません。だからちゃんと手順を作って、それに従って区名を決めていくべきです、維新は。で、実際にその手順をいくつか考えてみました。まず可能性の低いものから挙げていきます。
 
① 大都市法の改正
 区名称を仮称でも特別区設置協定書は良いとする。住民投票後に名称のみの住民投票で決めるなどをルールとする。その為にそれを定めている大都市法の改正、ないし、法解釈なり省令なりでそれを可能とする。国からの働きかけ、というわけですがこれができるのならもうしているでしょう。維新も当然、その筋では動いてたでしょうが、それができてない、できなかったということでしょうからこの案は不可です。
 
② 大阪市の条例の範囲内で考える
 基本の考え方として、住民投票で区名を決めるという形になります。
 
 ・A案
  4月から5,6月までに公募ないし、審議会を作って(もしくはその双方で)そこで区名の候補を選ぶ。6,7月に区名決定の住民投票を行い、特別区(と総合区)の区名を決定する。
  これが一番、穏当な案ですね。ただ時間、および議会での決定が厳しいでしょう。臨時で議会を開くしかないわけですが、それ自体も難しいと思います。

 ・B案
  吉村市長が辞任をして、出直し選挙をする。その出直し選、ないしその直後に区名決定の住民投票を行う。
  私はこのB案が一番可能性が高いと思っています。私は現状の協議会の進行はかなり難しいと思っています。公明は特別区に反対するでしょう。(私が公明なり、自民の議員なら賛成に回りますけどもね。逆の意味で。)よって最終的に特別区設置協定書の採決で公明党は反対に回ります。その際の出直し選というシナリオが一番、穏当でかつ、順当な区名決定へのプロセスになるかなと思います。理由はどうとでもつけれるでしょうし。出直し選で吉村さんの公約は都構想のみに絞って、勝つ。で、協議会を改めて招集して決へもっていくしかないと思っています。過激といえば過激な案ですが、これが一番現実的に可能なラインかなと思います。
  
 具体的な区名で言うと、私は大阪市域の特別区名に東西南北を使う理由がわからないんです。大阪府大阪市は中心に位置しています。そして最終的に大阪市の周辺市は最低限特別区になると私は考えています。大阪市単体で考えれば4つの特別区に東西南北を使う合理的な理由もあるでしょうが、大阪府全体で考えた時、大阪府の中央に位置する4つの特別区に東西南北を使うのはナンセンスです。だって中央にあるんだから、大阪府の。だから大阪「市」ではなく大阪「府」のどこに位置しているかで特別区名はつけるべきです。東西南北をつけるのならね。正味、区名については維新はもっと考えて行動してほしい。まあ区名報道自体が何かの仕掛けであるのかもしれませんけども。実のところ、そうであってほしいなぁ、と思う粉屋です。
 
 ちょっと都構想自体にも書いておきたいと思います。維新は都構想のバージョンアップをしなければなりません。役所が考えた今回の特別区素案は素晴らしい出来だと思います。でも役所の考える特別区大阪市の市域の外には出ません。役所が考えるのは大阪市における特別区設置の具体案であり、都構想ではないんです。それは役所の職分の範囲外ですから。だから100点の内容ですが、バージョンで言えば1.1、ないし1.2くらいのもんです。都構想を考えるのは政治家である維新の仕事です。維新は次の住民投票ではバージョン2.0の都構想で戦わなければなりません。
 それは大阪都は四つの特別区で終わるのか、大阪府全域がどこまで特別区で構成されるものになるのか。都構想の完成形の説明をすること。ここを避けると都構想に対して制度の不透明感がでます。維新は明確に10年後、20年後、30年後、そして100年後の大阪都の発展した姿を大阪市民に示さなければなりません。大阪市民に大阪市を保持することで、その発展を逃がすのかと迫らなければなりません。具体的な大阪都での政策を訴え、その新しい時代の新しい大阪を見たくないか。発展した大阪。その夢を大阪市民と共有することこそが本当の意味での都構想のバージョンアップ、バージョン2.0だと私は考えています。
 
 以上で終わりです。