粉屋の大阪to考想

大阪都構想否決を受けて、その辺をだらだらと書いてみます。大阪の政治状況も併せて書いていきたいですね。Twitter: KONAYA @PAN_KOYA

特別区設置協議会に自民党が提出していた大阪市一区案の効果額2382億円を問う

 今回は、大阪自民が大阪市政を担当した時にどれくらいの実績が挙げれるのかを考えてみたいと思います。その考える資料として第12回大阪府大阪市特別区設置協議会の資料を引用します。

 ここでは住民投票の折にいわれた効果額を大阪自民独自のものとして出しています。この試算の前提は府市で広域行政を統合、大阪市中核市一区として試算をしており、その効果額は2382億円としています。これについてどういうことかを見てみました。

大阪府/第12回大阪府・大阪市特別区設置協議会について

 第12回大阪府大阪市特別区設置協議会、これは都構想における特別区設置協定書の内容について協議をするために大阪市大阪府から知事・市長及び両議会の議員が参加した協議会です。前回の大阪における住民投票はこの特別区設置協定書の可否について問うた住民投票でした。この中でこの第12回は、大阪市特別区で区割りをされる中で、何区の区割りがいいかを四案の中から協議した回になります。ここで議題に挙げられたのは以下の四案になります。

試案1  7区(北・中央区分離)
試案2  7区(北・中央区合体)
試案3  5区(北・中央区分離)
試案4  5区(北・中央区合体)
資料1 財政シミュレーション(一般財源ベース)(追加資料)(再編効果・再編コストの内訳)住民投票の区割り案は最終的に、試案3の5区(北・中央区分離)方式を一部変更したものが採用されました)

 この提示された四案の中で、どれが大阪市にとって最も良い案かを協議しました。ここで、自民党を始めとした各党も資料を提出しています。自民党以外の党は、これらの案に対する意見と反対という立場で書いています。しかし、大阪自民はここで「1区案」を提出します。ピンと来られない方もおられるでしょうが、要するに大阪市を区割りすることなく、大阪市全体を1区として捉えた意見書を提出しているのです。これ自体が、特別区協定書を協議する場としてふさわしくないのはもちろん、協議会自体を愚弄した行為です。しかし、この大阪自民の意見書の中で具体的に数字を出して反論をしています。この数字自体は見るべきものはありませんが(数字の根拠がよく見えない)、大阪自民が大阪市として存続するのならこれだけの数字、コスト削減が行えるということを書いている資料としては一見の価値はあります。要するに彼ら、大阪自民が大阪市政を担当すればこれだけのコスト削減、大阪市に利益をもたらせるという数字なわけです。今般、大阪自民から推薦を受け、柳本市長候補予定が出馬予定です。大阪市政を大阪自民が担当するというこの局面において、この数字を整理し、具体的に大阪自民がどれだけの数字を積み上げることができるのかということを確認するためにこの項を纏めたいと思います。

 大阪自民が提出した資料が以下のものになります。

資料3 自由民主党提出資料 3-1 3-2

 ここで注目するのは、大阪自民が出す財源活用可能額です。住民投票の折に「一億円しか効果額は出ない」とか言われてたとこですね。(それに対する私の反論はこちら)ここで大阪自民は1区案で、2382億円が出ると書いてます。前回の住民投票での大都市局の最終試算はこちらになります。

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大阪市に全戸配布された「特別区設置協定書について(説明パンフレット)」から)

 財源活用可能額の試算方式が第12回の時と変わっている点もあるので一概に比較はできませんが、参考値としてこの2762億円を掲示します。またこの第12回で協議された四案の財源活用可能額は以下のようになります。

試案1  7区(北・中央区分離) 財源活用可能額 -1493億円
試案2  7区(北・中央区合体) 財源活用可能額 -1498億円
試案3  5区(北・中央区分離) 財源活用可能額 +1375億円
試案4  5区(北・中央区合体) 財源活用可能額 +1377億円

※資料2 財政シミュレーション(一般財源ベース)第10回資料より

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 まず、大阪自民が今回の1区案のシュミレーションの前提条件を見てみます。

①AB項目~では、今回の特別区の試算にを同様に盛り込む、という形になっています。

 ここでAB項目は何かということに触れておきます。AB項目は府市統合本部で検討された大阪府大阪市における二元・二重行政の仕分け項目になります。 

 A項目:経営形態の見直しをする事業・行政サービス

 B項目:類似・重複をしている事業・行政サービス

 大阪自民はこの試算を作成した府市大都市局の試算を丸のみして試算したっていうことですね。府市統合本部で問題とした課題を大阪市のままで全て実行した場合の試算です。

② ここでは職員削減効果について書いてますが、ここでいう「外部委託コストの縮減効果」は自民の資料からは読み取れませんでした。アウトソーシングすることによる削減だとは思うのですが。そういった効果を上乗せしているということのようです。

③ 府市の広域面の統合ということですね。要するに大阪市から広域行政面を引っこ抜いて、大阪府に戻す。大阪市は巨大な中核市となる形での試算だと私は捉えています。その際、大阪市にもある程度のシステム変更はあるが算定できないので0としているということですね。

④ 未利用地に関しては①と同様、そのまま盛り込むということです。

⑤ 財政調整基金から収支不足分を補てんした後に返済、となってますが、これの根拠は明示されていません。どこから財源を持ってくるんだろう?

 

以上の①~⑤を踏まえて以下の大阪自民が提示したグラフを見てみます。

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 彼らはこの試算で大都市局の試算1375億円を大きく上回る2382億円を上げることができると言っています。またこの時の大都市局の試算よりも二年前倒しで黒字化も可能と言っています。おもしろいですね。

 まずこの時点で指摘しておきたいのは大都市局の言う通りの試算であれば、2382億円を効果額として挙げれることを大阪自民が認めている点です。維新が解消を目指しているAB項目をすべて解消すれば2382億円、ないしその程度の額が出るわけですからね。彼ら、大阪自民党住民投票期間中、都構想の効果は1億円しか上げれないと言ってました。が、話が1/10としても200億円程度は効果が上がるわけです。ですから1億円と言っていたことがあり得ないことがここでわかります。

 次に指摘したいのは、大阪自民党大阪市長選で勝った場合、市政を担当してこの効果額を出せるのか?ということです。試算の前提条件③で、府市の広域行政の統合を元に試算を彼らはしているわけですが、これをやるのか?やらないのであればなぜ広域行政の府市統合をやらないのか?を大阪市民に説明する義務があります。AB項目の改革を行えば2000億円以上の効果額を見込めるのであれば、それを放置することは許されません。それは大阪市民及び大阪府民に対する裏切り行為です。試算の前提条件の①で「現状の賛否に係らず」という但し書きを大阪自民を付けています。であるのならばAB項目のうちどの項目が出来、できないものはなぜできないのかを説明する義務が彼らにはあります。またその場合の効果額は2382億円のうちから、どれくらい下がるのかも併せて説明が必要です。

 大阪自民の試算は、大阪市から広域行政を大阪府に移管し統合。大阪市は基礎行政のみとなる中核市になる形で試算をしています。もし、これを政策として立案するのであれば、都構想の対案として一定の理解を私はします。都構想を広域行政の一元化と基礎行政の分化として捉えた場合、都構想の前段階となる訳です。

 大阪自民の資料3-1の冒頭で彼らはこう書いています。

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 ここで「広域行政の一元化・二条行政の解消」といった目的は共通認識と書いています。また現行制度でそれは可能と書いています。であるのならば、私の書いたように彼らはこの効果額2382億円を出す義務がありまし、大阪府大阪市の広域行政一元化を進める義務も又あります。これをするのであれば今現在の維新を支持する人間からも一定の支持を取り付けることは可能です。

 

 と、まあここまで書きましたが、実際のところ、これらのことの政策化を大阪自民がするとは思えません。この第12回の議事録からこの一区案についてのかれらの発言を以下に掲示します。長くなりますがお読み頂けたらと思います。

 

 (大阪府・大阪市特別区設置協議会≪第12回協議会 議事録≫ P.18~より)

(松井委員)
僕は花谷委員がそこまで言うんなら、こういうことは言いたくありませんでしたけどね、本当に、この資料をそのまま出してきて、本当にそんなことを言うなと。これもうびっくりしましたよ、この自民党の資料。1案の、1区案シミュレーションですか、この1区案にすれば、我々の5区案よりも財政効果が出ると。ところが、第1の前提条件に現状のAB項目、市政改革については、現状の賛否は知らんと、かかわらずと、現状の賛否をする立場にあるのが、議会の議員じゃないですか。何度も賛否を決めてほしいということを言ってきてるわけですよね。その賛否をしない態度で、政治家としてあり得るのか。ここはもう本当に、それをよくそのままこの文章を出してくるなと。表紙のところで二重行政の解消、知事・市長と同じ思い、同じ思いなら、そのAB項目についての賛否ぐらいはしっかりと示してください。どれだけ議論やってきたんですか。それを示すことなく、我々の案を横滑りさせて、5区案をそのまま1区案に、足し算だけして、これだけ効果が出ると、おかしいじゃないですか。政治家の役割というのは何なんですか。そこを一度、ほんとよく見詰め直してもらいたい。自分の胸に手を当ててもらいたい、こう思いますね。
(浅田会長)
柳本委員。
(柳本委員)
 1区案を出させていただいた趣旨は、比較対象するためと、あと、あわせて再編することがいかに無駄かということを示すためにあえて出したにすぎません。ですから、前提条件をあえて合わせたというふうにご理解をいただけたらというふうに思っております。

 

粉屋)ダメだこりゃw まともに議論できないんだよなぁ。この柳本議員が言ってるのは、意味のないデータを比較対象として出していると言ってるのと同義です。大阪自民党が絶対にできない事をできると言って出してきたデータなんですから。ただ前提条件を合わせたのなら2382億円は出せるということでもあります。よって私の書いた趣旨、2382億円が出せるのか出せないのかをはっきりしてほしいと考えます。

 次に橋下市長の府市統合の意義について

P.20~

(橋下委員)
先ほどの花谷委員に対して。
広域行政の一元化が必要だと、ある程度、二重にならないことが必要だというところの理解は一緒だと思うんですね。それを、だから制度をいじらなくても、今のような状態でもできてるじゃないかと。確かに、できてることたくさんあります。実際に、うめきたというものも、これまでなかなか進まなかったのが、これはまだ府議会の皆さんの了承は得ていませんけれども、それでも、府と市で一緒になってやっていこうと、予算、財源についても、これまでのように大阪市内のことは大阪市の財布ということをやらずに、一緒にやっていこうということで動き始めました。
淀川左岸線の延伸部についても、これは府の時代から大阪市にずっと求め続けてきたこと。それでも、通過道路ということで、大阪市、手続進めませんでしたけども、今、環境評価のアセスに入っています。だから、やろうと思ったら、動いてることはあるんですね。でも、僕が言いたいのは、確かに、今こうやってますけれども、じゃあ、本当に大阪府大阪市の体制でできる、できると言うんだったら、何で僕らの前にできなかったんですかね。だから、本当に大阪府大阪市のままで、うめきたの問題でも、淀川左岸線の延伸部も、そのほか、今、観光政策のこと、それから細かなことを言えば、イルミネーションイベントのことにしても、何にしても、今できてることはたくさんあります。これも何も維新だけの力じゃなくて、自民党の皆さんのご協力も得て進めていることもありますけれども、ただ、そういう、もしロジックで、論理でいくんであれば、これまでもずっとできていたはずなんですよ。でも、できなかった。
一つは、指揮官が一本化、司令塔が一本化すればいいというふうに言いましたけれども、その指揮官、司令官というのは、誰も知事・市長の1人というわけではありません。知事と市長が仕事をするのに、もう巨大な大阪府庁大阪市役所という組織を、補助組織として、ある意味、僕らがやってることというのは日常の行政実務のうちの、量的にいえば1%あるかどうかですよ。99%ぐらいの量の行政実務は知事・市長のもとの補助組織である府庁や市役所が毎日毎日頑張ってやってくれてるわけですね。ですから、指揮官の一本化というのは、知事・市長の一本化だけじゃなくて、組織の一本化でもあるということも認識していただきたいんです。これは、やはり行政の組織のトップマネジメントをすればわかりますけれども、やっぱり議員さんの仕事と僕らの仕事は違いますから、指揮官の一本化というのは、そういう意味で補助組織をね、知事と市長のもとにある補助組織を一本化するというところであるというところにこだわりがある。だから、そういうところでちょっと認識の違いがあるのかもわかりません。

 

粉屋)大阪会議(その前身の大阪広域戦略協議会が題材ですが)について

 

(花谷委員)
だから、我々はね、これまでにない大阪広域戦略協議会というのをこの前の統一地方選挙で公約にして戦ったんですよ。そういう制度がなかったんです。知事と市長、そこに府議会議員と市会議員、それが入って一つの方向性、戦略を考えて、統一してね、例えば国に予算要望するのにしても、一緒にやればいい、そこで決めればスムーズにそれぞれ議会に戻って、スピード感を持ってできるじゃないかと。これを任意の場でするんじゃなくて、条例できちっとした裏づけを持って、協議をする場をつくったらいいじゃないかといって、選挙をやったわけです。
それに近い形のことを今していただいていて、補助機関の統一、これも現行制度でできてるじゃないですか。(※粉屋注:府市統合本部のこと)だから、我々もその協議をする、政策協議をする、戦略を一つにするための協議の場をきちんと担保のある場をつくれば、きちんとできるんじゃないですかと。今は任意でやっておられますよ、知事と市長は。それを条例化してきちっとやれば、制度を変えなくてもできるし、国に一緒になって要望もできるし、スピード感はすごくありますよと。明日からでもできるはずですよとずっと言ってきました。
(浅田会長)
橋下委員。
(橋下委員)
ですから、その連携協議という機関と、僕が言ってるところの新しい広域行政体、大阪都をつくるということの決定的な違いは、決定者を誰にするかということです。だから、連携協議というんであれば、そこから自民党さんは、じゃあ、その具体の中身を言われませんけれどもね、じゃあ、誰が決定権者になるんですかね。じゃあ、最後は知事決定でいいんでしょうかね。そしたら、これは大阪市としては、それは呑めないと思いますよ。大阪府議会、市議会のメンバーが入ってきたときに、議論が割れて、じゃあ、どうしますかといったときに、府議・市議で、それを母数として多数決をやるんでしょうか。それも多分うまくいかないと思います。
だから、連携協議というのは重要だと思うんですけどもね、それだけでは解決できなかったことが山ほどあって、今なぜうまくいっているかというと、それは僕と知事の間でもう、ここで決定しちゃうからなんですね。もうそれぞれの役所の言い分がいろいろぶつかったとしても、こうやろう、ああやろうと決定するわけですよ、これができなかったんですよ、今まで。大阪府知事大阪市長が話をして、合意ができたら合意でいいんですけど、合意ができないことに関しては、決定権、誰が持つんだということになって、進まなかった。だから、補助組織の一本化というのは、ラインで、もう役所の、もう何万というこの職員が、二つのラインで存在するんじゃなくて、ラインを一本化しようと。だから、係長や課長や課長代理、それぞれが決定権者が1人になって、それぞれで決定していくと、そこのもう決定的な違いがありますのでね、連携協議でできるんであれば、それは今までだって幾らでもできたと思います。でも、やっぱり今まで話し合いは幾らでもしてたんですから、府と市で。でも、できなかったことが山ほどある。だから、補助組織を一本化にしよう、広域行政については、補助組織を役所というものを一本化しようということなんです。
(浅田会長)
花谷委員。
(花谷委員)
そこなんですよ。都区協議会、今、先ほど私たちが指摘したように、府と市でも大変だったと今おっしゃる。都区協議会は、その構成組織が6から8になるんですよ。これはすごいことですよ。それだったら、今の状態のほうがずっと、二つがいい。今は任意でやっておられて、知事・市長で方針をお決めになって、それから条例案なり、議案なり、予算を決めて、それぞれの議会へ働きかけをしているでしょう。我々は、そこに議員が広域戦略協議会に議員が入っておれば、そこで民意もきちんと反映できます。それぞれの党、自民党公明党民主党さん、それぞれの民意も反映し、意思決定から、その場で意思決定をしてから、実施するまでの時間は非常に短いですよ。だから、スピードというのは、トータルのスピードですから、発案からでき上がりまでを見るのか、市長がおっしゃっているのは、このどこのスパンなのか、これきちんと最後のトータルでしたら、我々の提案のほうが早いと思いますよ、都構想の議論するより。
(浅田会長)
橋下委員。
(橋下委員)
都区協議会とね、大阪府大阪市の関係を、これは大きな誤解があるのは、仕事の役割分担がきちんとできてないじゃないですか。だから、広域行政の仕事と基礎自治体の仕事を役割分担をした上で、基礎自治体の仕事と、広域行政が協議をする話は、広域行政の同じ仕事の中で府と市が協議をするというのは、これは全然違います。だから、同じ仕事で何も府と市が協議なんかする必要なくて、きちっと広域行政は広域行政をやる役所が、それは議会と役所がしっかり意思決定すればいいわけで、今のように、広域行政でぶつかり合うような協議というものは、やめましょうということです。だから、都区協議会というのは、広域行政と基礎自治っていう仕事の役割分担をしっかりして、仕事の役割が違う中での協議ですから、それは。
(浅田会長)
松井委員。
(松井委員)
条例で決定できればやれるじゃないかという話ですけど、これはもう地方自治法で独立した自治体は、これがそれぞれ認められている限り、その首長の意思決定を法令で、その独立した自治体の意思決定は、そこで選挙で選ばれた首長は、議会にご審議いただいて、同意いただいてものを決定すると、これがもう基本の法律ですから。法令を上回る条例なんていうのは、これは無理です。だから、条例でそれは縛れません。これはもうわかり切ったことです。
花谷委員もわかってるんなら、意思決定ができないことをしっかり認めてもらいたいと思います。

 

粉屋)この後も議論は続きますがそれは議事録の方を見てください。都移行における都区協議会での議論などもあります。花谷府議の頓珍漢な指摘など楽しめる内容になっています。

最後に一つだけ

P.38

(橋下委員)
だから、最後は、その連携協議というのも、それも重要です。それはわかります。でも、今、知事が言ったように、連携協議というものは、まとまるものはそれで進むんですよ。でも、それがまとまらないものをどうするのかということで、今まで、それで大阪府大阪市でまとまらなかったことがたくさんあったんでね。

 

粉屋)大阪会議の問題点はこの最後に集約されてます。纏まらないものは纏まらない。