粉屋の大阪to考想

大阪都構想否決を受けて、その辺をだらだらと書いてみます。大阪の政治状況も併せて書いていきたいですね。Twitter: KONAYA @PAN_KOYA

大都市制度(特別区設置)協議会 第6回・第7回概要 ~ 委員間質疑 ~

大都市制度(特別区設置)協議会(以下協議会)の第1回(平成29年6月27日)から最終回(は、まだですけども)までの各回の議事録及び資料を纏めていきたいと思います。

 今回は6回目(平成30年1月16日)、「(1)総合区設置における財政シミュレーションについて(2)副首都・大阪にふさわしい大都市制度《特別区(素案)》について」になります。 

 

大阪府/第6回大都市制度(特別区設置)協議会

 第6回目なんですが、総合区に関する財政シュミレーションと国との折衝について報告がありました。それらに関して各委員から質疑がありました。基本ライン、前回の総合区版での質問という感じで目新しいものはあまりありませんでした。興味ある方は前半の維新の委員の部分を読まれることをお勧めします。個人的には国と協議会事務局間での折衝の方が面白かったのでこちらを今回は書きたいと思います。といってもあまり書くこともない。

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資料3 国との調整状況について

 関係省庁に特別区素案を出して、「ご意見・ご質問ありませんか?」って感じでお返事貰いました、ってとこですね。

 

 そのお返事がこちら。 別添1 各府省の意見・質問(11月29日送付分)意見・質問と回答

 で、つらつら見たんだけど適宜適切な意見ではあるんだろうけど、法改正じゃなくて事務処理特例条例等で大阪府の方で何とかしーやって感じのお返事もちらちらありましたね。で、この第6回はこれで終わりって感じなんですが、花谷さんの資料もそれなりには笑えるんですけども。わざわざ触れるほどの内容でもないし。

というわけで第7回もやってしまいます。

 

 7回目(平成30年1月30日)は、「(1)副首都・大阪にふさわしい大都市制度《特別区(素案)》について」です。第7回は委員会協議として、委員間で質疑がありました。 

大阪府/第7回大都市制度(特別区設置)協議会

 維新の辻委員の冒頭の意見表明は素晴らしいので全文を掲載します。

(辻(淳)委員)
大阪維新の会の辻でございます。委員間協議に先立ち、特別区素案に関する我が会派の意見を申し述べます。
大阪は長らく狭隘な土地において関西圏の広域機能が集中してきました。もはや大阪市域ではおさまり切らずに府域にまで大きく拡張してきた実態経済ですが、それに行政の枠組みが追いついておらず、非効率な行政運営が続いてきました。大阪府大阪市がそれぞれに都市戦略を決定したがゆえに、大阪の方向性は一向に定まらず、本来西日本のリーダー、経済の中心地として担うはずであった副首都機能を担うことができませんでした。それどころか、長きにわたり大阪府庁、市役所のそれぞれを過剰に意識した非効率な投資により府民、市民の財産は大きく毀損され続けることになりました。広域自治体基礎自治体の役割分担ができていれば、二重行政の投資ロスにより市民の多くの財産が毀損されることもなかったのです。加えて、予算編成権を持たない区行政においては、区民の税金であるにもかかわらず、区民が使い道を決めることができませんでした。人口270万人を抱える巨大過ぎる市役所機能のもと、市役所全体が住民自治からかけ離れたところで巨大な税投資の行方を決定し、それがゆえに住民自治とは大きく乖離した市役所自治が横行することになりました。予算編成権を持つ市長が住民から遠く離れていたがゆえに、住民による税のチェック機能が十分に機能しなかったことは、結果的に二重行政の投資ロスにつながるところです。大阪全体で大規模事業が最適化されていれば無駄な投資が無く、もっと大阪の成長や住民サービスの充実に財源が回せていたと思います。
 今から約65年前、1953年12月18日、大阪府議会において大阪産業都建設に関する決議文が採択されています。この決議文には、大阪府一円の行政を総合的に統一運営することは、大都市問題を解決し、住民の負担を軽減、その福利を増進すると記載されています。府と市の広域行政を一元化し、大都市問題の解決を目指すことは65年前の大阪府議会にて決議されたものです。以降、再三にわたり大阪における府市における二重行政の弊害については、会派を問わず問題提起がされ続けてきました。
 そして、2015年、住民投票が行われ、僅差での否決となり、都構想の対案であった大阪会議が実施されることになりました。ところが、この「話し合いで解決」は全く機能せず、大阪が抱える二重行政、投資ロスリスクは依然大きく残ることとなりました。その後、2015年秋、知事・市長のダブル選挙で信を問い、二重行政を解決せよとの民意を得て、さらに議会での承認を受けて、今、再度、法定協議会で議論が進むことになりました。全て民主的な方法にのっとりこれまで協議は進んでおります。
 大阪府大阪市再編の大きな目的の一つが、広域行政の一元化です。西日本経済の中心地として、大阪のこの強い都市戦略が実現します。現在、同一の会派から知事・市長が選出されるという非常にまれなケースのもと、府政、市政運営が続いております。人間関係のみの綱渡りではあるものの、知事・市長間の意思決定の統一を行ったここ数年の大阪の成長は目覚ましいものがあります。昨年1年間に大阪府内を訪れた訪日外国人、インバウンドは過去最高の約1,111万人になりました。来阪外国人数が1,000万人を超えるのは初めてのことです。これも大阪観光局の共同設置といった府市における統一した取組みが形になってきたものです。客室稼働率についてもこの5年間で68%から83%へと、15%も伸びています。景気全体の動きを見ると、大阪では着実に回復傾向にあり、民間の設備投資の回復や住宅投資、さらには個人消費が持ち直してきているとともに、雇用は増加傾向にあります。この5年間で平均4万人以上の雇用の創出があり、有効求人倍率も5年前の0.65から1.38へと大幅に上昇しております。
 広域行政に係る意思決定が一元化されれば、大阪は世界に名立たる日本の副首都として大きくその価値を知らしめることができるのです。松井知事と吉村市長は日ごろの綿密な意思決定のすり合わせを通して広域行政の決定を行えていますが、この非常にまれな状況、人間関係のみによる話し合いでの解決には、限界があります。過去の知事・市長の意見の不一致が何よりの証左です。また、今も大阪府大阪市、2つの議会があり、片方で通っても片方で否決をされれば前へ進むことができないのです。現在のこの人間関係のみで成り立っている二重行政の解消を制度として担保することで未来に向けてこの大阪の成長を確実なものにしていく必要があります。前回の住民投票を受けて制度が大きく改善された特別区の素案が提示され、議論が進んでおります。大阪の特別区中核市の権限をベースに政令市や都道府県の事務に至るまで住民に身近なサービスを総合的に担う、東京都の特別区より充実した基礎自治体となります。今回は、子ども関係など特別区の事務が拡充をされております。また現在、大阪市が実施している特色ある住民サービスは適正に承継された上で地域の状況やニーズを踏まえながら、内容や水準の維持に努めることも明記されました。水準の維持については、財政調整制度で事務分担に応じ必要な財源が保障されること、財政シミュレーションでも織り込まれていること、これらが確認できました。このほか、財政調整制度については、財政調整交付金の算定方法、算定項目などが明確化され、住民サービスの適切な提供に必要な財源が確保されること、これらが示されております。さらに、調整財源を府の特別会計で明確に分けて管理する、大阪府が使途を公表し、大阪府特別区協議会で毎年度検証するなど、特別区に配慮した内容ともなっております。また、地域コミュニティーの維持や窓口サービスの継続のため、現在の24区単位で地域自治区を設置し、住民意見を反映するための地域協議会も置かれるなど、住民自治にも十分配慮された内容となっています。こういった綿密な制度設計のもと、財政配分の検証も行った上で特別区素案が提出をされました。大阪市が提供している現行の基礎自治サービスはしっかりと確保された上で、住民に身近な自治体による、より地域に合った行政が展開をされます。また、広域行政においては二重行政のロスは永遠に発生せず、日本の副首都として効果的な都市戦略を提供していくことになります。この法定協議会においては、総合区案も検証しつつ、特別区設置協定書をまとめ上げることが法定されております。今後、さらに精度を上げながら、本協議会の建設的議論のもと、住民に最適な特別区設置協定書が策定されることを強く望みます。

 以上です。

 

大阪府市の関係を過去から現在までを纏めた良い内容だと思います。問題点もはっきりしていますね。しかし戦後からの話になってますが、実際のところ、大阪市大阪府の問題は市町村制度ができた瞬間、大阪市ができた時から始まってるんですよ。東京、大阪、京都の3市には特例法が施行され、市長・助役を置かれませんでした。代わりに知事・書記官が市長を兼務した三市特例という形で大阪市の市町村制度はスタートしています。知事に市長を兼務させたのも大都市というものをどう取り扱っていいか、当時の明治政府もわからなかったからです。というか世界中のどの政府もわかってないし、今なお最適解はないでしょうけども。で、当時の知事は官選中央政府が選んでいました。だから大都市を中央政府が直接コントロール、国が直轄していたんですね。都市を制御できる方法がない以上、最低限、国の管理下に置かざるを得なかった。もちろん当時の大阪市は現状のものと比べて、面積、人口も小さかったわけですが、それでも取り扱いには苦慮したということです。結局、明治以降の大都市をどうするか、都市制度はどうあるべきかという宿題は明治・大正・昭和・平成と四つの時代を経て尚、解決されない問題として大阪に横たわってるんです。

 で、話戻って、自民の花谷委員からの意見表明ですが。一部引用しますが何とも。

(花谷委員)

 前回、特別区にしなければ発生しない効果として再編効果額が示されていました。々
は、大阪市を残したままでも生まれる再編効果額だと反論しましたが、維新の皆さんは都構想にしなければ生まれないとの主張でした。当時の大都市局は累計で府市合わせて約3,386億円と示していましたが、今回の素案では府市の連携により改革が進んでいるため、再編効果としては示さないとの見解です。前回、再編効果額と言っていたものは大阪市のままでも発生する効果であることが明確になりました
我々の主張が正しかったことは無視して、これは松井知事と吉村市長だからできたと、
制度論以外のアピールを重ねておられます。再編効果が現状のままで生まれるのであれば、大都市制度の議論は必要ないことが明らかです。
今回の財政シミュレーションで盛り込まれているAB項目や市政改革の効果額についても現在の大阪市を廃止しなくても発現する効果とのことです。改革の効果を生み出すためには特別区の設置は必要ないことが明らかだと思います。

 

 まあ突っ込むけど、大阪市のままで再編効果額は発生すると花谷さんはまず認めれられてますね。「現状」のままで再編効果が生まれると。だから大都市制度の議論は必要ないという流れです。いや、その「現状」が松井知事・吉村市長の両輪体制だからできてるんでしょうに。橋下知事・平松市長ではできなかったんだから。ここで花谷委員の言う「現状」は大阪府大阪市がただある状態を言ってるんでしょうけど、ただ府・市が存在しても再編効果は生まれません。あくまで府にせよ、市にせよ、道具でしかありません。道具を使う人によりその道具から生まれる効果は変わります。「再編効果が生まれる現状」とは何か?そこの認識ですよね、本当に。橋下・松井、吉村・松井体制だから再編効果が生まれてるんです。そこをすっ飛ばらしたら駄目です。わざとでしょうけど。単純に言えば、仮に先の大阪市長・知事選挙で、柳本・栗原の両候補が勝ったとして、柳本・栗原体制で同じ再編効果が生まれたかといえばそれは絶対になかった。同じ自民党だけど、府と市の溝は深い。それだけは言えますよ、本当。いや違うというのなら大阪自民からそういった効果のある政策を提示してほしいところですね。

 公明の意見表明が次になりますが、公明は総合区押しのスタンスですね。まあ特別区も大都市制度を考えるのは大切だから、ちゃんと協議会には参加するよ的な。でも中立だよっていうね。

(八重樫委員)(略)

 最後に、総合区制度です。
総合区については現在、大阪市から素案が示され、大阪市会においても議論されているところです。先ほども申し上げましたが、政令指定都市大阪市というスケールメリットを生かしつつ、また、高度で専門的なサービスを残しつつ、住民自治の拡充も図れる総合区制度が、大阪が目指す自治体改革としてふさわしい姿であると考えております。
大都市制度改革は大阪市大阪府の将来のあり方を決める重要な議論であり、市民、府民の皆様が納得して判断できるようしっかりと丁寧に議論していく必要があります。ただ、昨年大阪市内で行われた住民説明会を見る限り、現状では大都市制度改革の必要性や総合区制度の効果などが市民の皆様に十分伝わっていないのも事実であり、さらなる
情報提供が必要であることを改めて指摘しておきます。
 重なりますが、大阪が今後取り組むべき大都市制度について、よりよい制度案づくりに向けて今後とも本協議会や大阪府議会、大阪市会で真摯に議論していくことが必要であることを最後に申し上げて、我が会派の意見表明といたします。

 

 共産はどうでもいいので割愛です。

 で、委員間の質疑に入るわけですが、松井知事から「広域インフラ(淀川左岸線等)がなぜ今までできなかったのか?」というのを各会派に説明をしてもらいたいという質問がありました。府市共同の案件がなぜ今までできなかったのか、お前ら反対派の口から言ってみぃってとこですね。で、まず自民に振られて花谷委員が答えたわけですが。

(花谷委員)
知事からのお尋ねは、全て入り口論だと思います。ここは特別区の設計をするところと、前回も事務局に現状のことはお尋ねしましたけども、お答えできへんということでしたので、入り口論は府議会で改めてさせていただきます。

 

 「入り口論」。ここ笑うとこなのかなぁ。前回の協議会では入り口論で延々堂々巡りしていた自民なのに^^;で、共産の委員とやりあうんですが、まあ不毛ですわ。色々、共産の委員も口を滑らしていたんですけど。逆にかわいそうになっちゃいますね。

 次に維新の横山委員から「過去を見て、将来にわたって総合区、行政区を主張されている方にぜひお伺いしたいんですが、この二重行政解消に当たって、話し合いで必ず解決できていくという思いはありますか。」という質問があってそれの自民花谷委員の回答がこちら。

(花谷委員)
何度も申し上げます。総合区に関しては大阪市議会で特別委員会でやっていただきたい。
ここでは、そこでの議論を参考にして特別区の制度設計をする場だと聞いています。

 

特別区の制度設計をする場だと聞いています。」何のギャグやねん^^; 前回、入り口論で終始して。そりゃ最初はやってもええよ、と維新は言ってたけどもさ。ループしかしなかったものなぁ、大阪自民・共産は。それで柳本さんとか制度設計の前に「なぜ、大阪市を解体、消滅させるのかという、入り口論に私は議論聞いていると戻らなければならないというふうに思うわけなのです。」とかって言ってたのに。少しは成長したのか、何か答えるとボロが出るから答えないようにしてるのか。ふーむ?

 

(吉村委員)
先ほどの敬老パスでいうと、いわゆる調整財源特別会計で管理するという形になるので、まずそもそも問題が起きないと思うんですが、ただ僕がちょっと指摘したいのが、府議会議員の判断根拠がいわゆる大阪市内は3分の1、大阪市外が3分の2だからというこの議論なんですけど、僕はその議論を聞いていると府議会議員の皆さん、そちらに座っている皆さん、恥ずかしくないのかなというふうに思います。要はそういった基準で行動するのは府議会議員の行動基準なんですか。現に違うと思うんですね。今もその問題はあって、じゃ、何か大阪市内に投資するときに、例えば高槻の府議会議員というのは高槻市のことを考えて判断するのじゃなくて、大阪全体のことを考えて判断するのが大阪府議会の仕事であり、役割であるというふうに思うんですね。突き詰めていけば大阪市内だってそうであって、大阪市内270万のどでかいサイズの中で、例えば湾岸地域に僕が投資をするというような判断をしたときに、じゃ、平野区の議員や内陸部の議員というのは自分の区のことだけ考えて判断するかというとそうじゃなくて、選出はそこですけども、選出された、そこの全体の中で判断していくというのが、これは府議会として僕はそうなんじゃないのかなと思ったけど、ここで3分の2と3分の1で分けるというような、現に行動パターンとして各会派でそれぞれ意見を出して賛否のいわゆる議案の行動を示すと思うんですけど、市内、市外で分けて賛否の判断をしたことなんか今までないじゃないですか。そんな中でそういうふうに市内、市外で分けてやるというのはいたずらに不安をあおることと同時に府議会議員の存在の否定だと思うんですけど、そのあたり、府議会の皆さん、どう考えてらっしゃるんですかね。

 

 吉村市長の意見なんですが、これは公明の意見表明にあった部分のアンサーですね。

 

さらに、こうした財政調整財源の配分を最終的に決めるのは大阪府知事特別区長、特別区議会だけでなく、同時に大阪府議会でも可決が必要です。しかしながら、府会議員88人のうち現在の大阪市内選出議員は27人しかおらず、例えば敬老パスのように他の市町村住民にはないサービスを特別区民だけに優遇する制度が大阪府議会で可決されるかは甚だ疑問と言わざるを得ません。当然、特別区だけでなく他の市町村の住民にも同じようなサービスを求める声が上がるはずです。

 

議員が選挙区から選ばれてもその選挙区のためだけに仕事していれば、それはその議員の政治的な自殺だと私は思います。議員というのは有権者に選ばれた存在ではありますが、有権者は雇用主ではありません。議員は選挙区の有権者に雇われてるわけではありませんからね。だから吉村さんの言うことは凄く真っ当です。いや本当にあれを議員が言うのは恥ずかしくないのかなと。自分たちの存在意義を否定してますから。大阪市の金が不当に使われるのであれば、それを止めるのは議員だろうに。その気概も能力もないのならなぜ議員になってるんだろうかと私は思います。だから議員さん方があの論法で都構想の反対をしてるつもりなら、それは間違えてますよ、とだけ書いておきます。

で、まあこの後に質疑はあるもの、ほとんど維新の委員と松井知事・吉村市長間でのやり取りにしかならないので割愛します。内容は面白い点もあるのでこの回の議事録は通しで読んでみることをお勧めします。

 第7回議事録

以上で終わります。