粉屋の大阪to考想

大阪都構想否決を受けて、その辺をだらだらと書いてみます。大阪の政治状況も併せて書いていきたいですね。Twitter: KONAYA @PAN_KOYA

日本維新の会:目指せ法案100本提出 その26 道州制導入等の 統治機構抜本改革法案 (道州制への移行のための改革基本法案 〔新規立法〕)

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 日本維新の会が秋の臨時国会で100本の法案を提出します。これらの疑問に思った事やこれはいい、と思う点を書いていきます。基本的に維新の資料を見ただけで書くので、勘違いもあろうかと思います。その点、ご指摘頂ければ幸いです。 

 

第26回目は道州制導入等の統治機構抜本改革法案(道州制への移行のための改革基本法案〔新規立法〕)になります。

 <立法の背景・趣旨>
「我が国のかたち」(日本国憲法の理念の下における国と地方公共団体の全体を通じた
統治の構造)を新たなものに転換することが喫緊の課題となっている。
→ 「道州制への移行のための改革」(地方自治の仕組みを道州と市町村との二層制に
移行するとともに、これに伴い国及び地方公共団体の組織及び事務、国と地方公共
団体の税源配分等を抜本的に見直す改革)を総合的に推進する必要がある。

 維新の今回の法案は新規立法です。道州制へ移行するための話し合いのテーブルを設定することがその目的になります。目的としては、道州制へ移行するためには憲法、法律で改革が必要ですから、これの目標時期を定めて総合的に推進する必要があります。理念や方針に関しては条文を見ながら書いていきたいと思います。まず、この道州制導入までの維新のプロセスを見ます。

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 プロセスとしては内閣に推進本部を置き、内閣府道州制国民会議を置きます。推進本部の部長である内閣総理大臣が、道州制国民会議に諮問をし、国民会議は三年に以内に答申を行う。この答申を受けて政府は2年をめどに道州制移行へ必要な法制(憲法・法律など)の整備を実施。そして道州制移行を10年以内に準備を行うという意欲的な内容になっています。

 では次にこの法案の条文を見ていきます。全27条あります。

(目的)第一条

 

第一条ではこの法案の目的は示しています。ここで、道州制への移行の為の改革として州と市町村の2層制への移行を謳っています。そして同時に国及び地方公共団体(州・市町村)の組織及び事務、税配分について抜本的に見直す改革を行う。そしてこれらの改革の為に改革推進本部及び道州制国民会議の設置をすることとしています。

 

 私はこれらの維新の方向性は正しいと思っているんですが、個人的に道州制の中身の基本概要について予め議論が欲しいと思っています。それはこの法案の前に、まず道州の基本的な形の在り方を定める会議が欲しいんです。維新は憲法改正案で道州制についても示してはいます。が、それらの中身についてもう少し議論が欲しい。勿論、この法案での改革本部などで定めるような細かいものはこの法案で進めたらいいと思います。それより以前のこの維新の法案にある道州制の基本形。この雛型が問題だと思っています。私は道州制は、国、州、県(ないし地域連合的なもの)、市町村の4層がいいと思っています。最終的な道州の形として県に当たる部分がなくなるのはいいと思うんですが、エイヤで一気に2層性は無理だろうと思っています。無理な理由は反対が多すぎてどうにもならないと思うんです。私は州をまず作って、そこに立法権を持たせ、州法の制定権限を与える。その州法に従い、国及び都道府県から権限を持ってくる形にすればいいのではないかと思っています。立法権をまず国から州に分権して、その州法に従い、行政権の分権を進めるのが一番スマートに移行できるのではないかと思うんですけども。国の行政権ではなく、国会における立法権の文献から始めるべきと考えています。行政権の分権をまず遂行する形にすると立法権とも絡み、整理が大変だと思うんです。

 また州レベルと市町村レベルの間の広域行政レベルが必要とも思っています。国の現在の広域行政レベルのうち、国全体の施策は国が行えばいいと思っています。そしてその州レベルのものは州に移管。そしてそレと市町村の間が重要だと思っています。広域行政としても、現行の都道府県の広さが正しいのかは別にして、広域行政と言っても施策毎に適当な面積というものがあると思っています。それを全て州レベルの面積で補うのは難しいのではないかと思います。要するに広すぎる。広域行政においてもその仕事を細分化して整理が必要です。私は都道府県の現状の区域が正しいと思っていません。もう少し都市部は都市部で広域行政は集約するような形が望ましいと思っています。だから現行の市町村を単位として考えた時、大阪市から神戸市までを一つの広域行政単位としてみてもいいのではないかと思っています。まああんまり深くは考えてませんが。

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 これらは私の私見ですからどうでもいいんですが、道州制を2層というのは難しい。まずこの道州制の在り方として2層にする。というのを決めないと話が進まないと思うんですよね。全国での道州制の基本形は2層にします。じゃあ中身を詰めようでこの維新の法案というのが、流れとしてはいいように思っています。

 

(基本理念) 第 二 条

広域の地方公共団体である道州を設置して、その地域の特性に応じた独自性のある施策を展開することができる地方自治制度を確立すること。

国は国しかできない役割に特化する。

 

を理念としています。良い理念だと思います。

 

(国及び地方公共団体の責務等)第三条 

(実施の目標時期)第四条

 

国は道州制への移行に責務を負い、地方公共団体は協力をする。国は地方公共団体の意見を配慮しなければならないとしています。そして法案の施行後、10年以内に新たな体制への移行が開始されるようにするとなっています。

 

(道州の設置等)第五条

 州は市町村を包括する広域の地方公共団体と定義しています。そして道州の境界は従来の都道府県の境界と異なるものとする事を妨げないものとするとしています。これは現状の48都道府県の境界(県境)を州の境とするのではなく、州に相応しい、広域行政を効率よく行うということです。だから都道府県の境界は考えず、最善の州の行政区画を設定するという事ですね。また道州の行政組織は、州が自主的に定めることができるようにするとあり、維新の憲法改正案にある道州条例(州法のようなもの)で定めれるようにするという事なんでしょう。

 

(国の事務の道州への移譲等)第六条、(国及び地方公共団体の税財政制度の見直し)第七条

ここでは国及び道州の権限について定義をしています。国は、「外構、安全保障、出入国管理、通貨その他の国際社会における国家としての存立にかかわる事務」と列挙式で定義していますね。また国民全体に係る事務、全国的な規模の施策の実施となっています。

 

都道府県の廃止等)第八条

道州の設置に伴い、都道府県は、廃止するものとする。

 

 この前、大阪自民の府議団が大阪府の廃止を言ってましたが、維新は全国の48都道府県を廃止すると言っていますw 大阪自民の案は維新の都構想が来年二月に纏まるので、それへの牽制なんでしょうけどもさ。足立さんも動画内で仰ってますが、口だけなら何とでも言えるんですよ。結局、政治というのは制度を整える事であり、法を作り、行政を動かすことが目的です。そういうものが何もなく、案の概要すら無いのにお題目である「府の廃止」をいう大阪自民は何とも言えません。少なくとも府の廃止をいうのならその概略案も同時に出すべきです。「ダイエットする」は誰でも言えますが、実際にダイエットするための計画や努力をする人間は多くないんですよ(腹を見つつ)

 

自民党府議団府廃止構想表明 /大阪(毎日新聞2016年10月29日 地方版)

自民党府議団は28日、将来的には道州制を目指し、府の権限を市町村に移譲して府を廃止すべきだという考えを明らかにした。今後、府連で考えを取りまとめ、今年度内に有識者を交えて制度案を作成するとしている。

 府議団の密城浩明議員は「市町村の強化や住民サービスの向上につながる」と説明。権限移譲には市町村の体制強化が必要で、合併して政令市となり、既存の市町村を総合区として残す案などを提案している。

 

 来年の3月だかに案を取り纏めるそうですが、そんなスピードだと誰も付いては来ません。絵に描いた餅と言いますが、口に出すだけの餅は腹も減りません。絵に描いた餅は、餅を想起して腹も減りますけどね。「絵に描いた餅」、概要位は提示をしないといけないし、現状で出来ないのならそれは案ですらないことにいい加減に大阪自民は気が付いてほしいですね。現状で方向性一つ指し示せないものは案ではありません。私でも言えもの。そんなことは。話戻って。

 

 2項の方では州の仕事の範囲を規定していて、都道府県の事務の内、広域行政と市町村への連絡調整は州。それ以外は市町村としています。そしてそれらの都道府県から降りてくる事務に対処するのに市町村が処理をするのが困難なものは複数の市町村で共同して処理することとしています。

 この最後の部分は、この前の地方自治法改正にある市町村間での「連携協約」を現行法では指すのだと捉えています。

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地方自治法施行令の一部を改正する政令等について

新たな広域連携」について 平成26年10月 総務省

 

 一つの市で対応するのが難しい事務(政策)も複数の市町村で協約を結んで、それに対処しようという事ですね。三人寄れば文殊の知恵の市町村版です。この制度をそのまま使うかどうかは別にして、考え方の方向性はこういう制度になると思います。第九条では市町村の事務を規定していますが、「市町村の事務処理の共同化」について道州は必要な措置を取るようにと定めていますので、こういう配慮をしなさいよってとこですね。維新案では県レベルに相当するものはこういう「共同化」で対処をすると考えてるのかなぁ。

 

 第十条では、この道州制移行の為に内閣に改革推進本部の設置を置くこととしています。第十一条では、この本部は、道州制への移行の為の総合調整を行い、その為の法律案及び政令案の立案を行うとしています。第十一~十九条では、本部長を内閣総理大臣とし、道州制移行の主任も総理大臣としています。また本部員は全ての国務大臣をもって充てる事としています。

  第二十条では、道州制国民会議(以下会議)を置くことが定められています。この会議では内閣総理大臣からの諮問に対して調査審議、意見を述べることが目的となっています。道州制国民会議の委員は、国会議員地方公共団体の議会魏の議員及び長並びに優れた意見を有する者のうちから、内閣総理大臣が任命します。こういうのって通常、有識者会議とかになりがちですが、国会議員と地方議会の議員と自治体の首長(知事・市長など)も含めているのが面白い点ですね。選考方法が難しいですけど。

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  第22条では諮問内容を規定しています。妥当な内容だと思います。第23~27条ではこの内閣総理大臣からの諮問への答申を三年以内とし、必要があるときは中間報告も求めれることとしています。答申などを受けたら国会で報告する義務があることも定められています。

 期限をきっちり切って、それを定めているのが維新らしくていいですね。他の政党はどうも時間は無限だと思ってる節があって。憲法改正でも時間を切って議論をすればいいのにと思います。時間を切らないからいつまでたっても終わらないんです。

 最後の第28条で、答申があったときは2年を目処に道州制への移行の為に必要な法整備をしなさいとなっています。答申を受けても放置をしてやらない、サボタージュをさせないということですね。

 

 基本ラインとしてはこの法案には賛成なんですけど、やはり都道府県の廃止には距離を置いてしまいますね。維新に私が求めるのは、具体地域ではなくて良いので(出すとなんだかんだ揉めもそうだし)モデル図でいいので、なぜ都道府県を廃止するべきなのか、廃止するとしてその行政効率やメリットについての解説を望みます。正直、州レベルまで広域行政権限を拡大した時の都道府県レベルの広域行政に関して、どれだけ緻密に行えるのかが不安です。その辺を市町村に任すというのは暴論だと思っていますし、どういう形で維新が考えているのかを知りたいですね。

 

 

 <参考>

●道州制への移行のための改革基本法案

衆法 第183回国会 46 道州制への移行のための改革基本法案

 

維新の党から提出をしていた旧法案

 

「おおさか維新の会」 憲法改正原案公開のお知らせ|ニュース|日本維新の会