粉屋の大阪to考想

大阪都構想否決を受けて、その辺をだらだらと書いてみます。大阪の政治状況も併せて書いていきたいですね。Twitter: KONAYA @PAN_KOYA

日本維新の会:目指せ法案100本提出 その22 農地所有解禁法案 (農地法の一部を改正する法律案)

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 日本維新の会が秋の臨時国会で100本の法案を提出します。これらの疑問に思った事やこれはいい、と思う点を書いていきます。基本的に維新の資料を見ただけで書くので、勘違いもあろうかと思います。その点、ご指摘頂ければ幸いです。

 

第22回目は農地所有解禁法案(農地法の一部を改正する法律案)です。

  今回の維新の改正点は次の物になります。

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  いやー綺麗さっぱり規定をすべて削除ですか。なかなか豪快です。個人的にはいいんじゃないかと思っています。現行法では、株式会社、農事組合法人、持ち分会社にそれぞれ農地取得に規制があり、農地の利用については制限が多い現状です。特に株式会社については様々な規制が有り、農地の取得はもちろん、農地の借入れについても多くの規制があります。こういった規制を解除しようというものですね。ただ維新の規制解除は「農地を農地以外のものにすることを規制」について変えていません。農地以外の転用不可は原則です。株式会社など農業に参入した法人が農地を取得して、農地をそれ以外に転用したり、転売したりする恐れもありますからね。「指定市町村の長。以下「都道府県知事等」という。)の許可を受けなければならない。」という形で残しています。

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 上の図にある維新の改正案の「関係規定はすべて削除」というのは、農地を利用できる各法人の農地取得条件を削除するものです。この各法人は農地適用取得条件を満たした農地所有適格法人になります。

 

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 この農地所有適格法人の中で特に株式会社については、その株式会社の在り方から多くの規制があります。(株式の非公開、譲渡制限など)ただそういった中でも政府は、様々な改正により農地取得に関してリース・所有の方式の緩和は行ってきました。これらにより、改正農地法施行(平成21年12月)後、改正前の約5倍のペースで一般法人が参入(新たに2,039法人)するなど、農地を利用して農業経営を行う法人は着実に増加しています。

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一般企業の農業への参入 農林水産省

 一般法人の借入農地面積の総計は5,177haまで増加してきているが、1法人当たりの借入農地面積の平均は2.5haであり、我が国の平均経営耕地面積と同様の規模で、参入はある物の大きな規模にはなっていません。維新としては法人及び法人の農地取得に関する規制を解除し、この流れを加速したいのだと捉えています。

 

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2015年農林業センサス:農林水産省

 現行の農業の経営体数です。農業経営体のうち、家族経営体数は 134 万4千経営体で、5年前に比べて 18.4%減少した一方、組織経営体数は3万3千経営体で 6.4%増加しています。家族経営から農事組合法人、会社組織への再編が進んでいます。

 

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 また農業の経営体が持つ農地の面積の増減率が上になります。100ha以上を持つ経営体が30%以上伸びていることからも、日本における農業大規模化、集約化のスピードは上がっています。

 

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中間の5~30ha層の割合は変わらないですが、小規模は減り、30ha以上の大規模経営の農地が増えているのが分かります。また下の図にあるように、販売金額が零細のものは大きく減少、5000万円以上の経営体数の割合が大きく伸びていってることが分かります。

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 上のは専業、兼業農家のここ5年の変化です。専業はあまり変化はありませんが、兼業農家は大きな変化ですね。私が学校に行ってた頃は兼業農家が増えたのなんの言われてたものですけど。まあここの兼業農家が法人化していってるんでしょうね。

 

 ここからは私見なんですが、戦後の日本の農業というのは機械化により失敗したと思っています。勿論、それにより農家の方々の労力が減ったことは否定をしません。ただ、例えば田んぼでお米を作る場合、その田んぼから500万のお米がとれたとします。これを機械化しても500万は500万で変わらないんですよね。機械化することにより、田んぼを耕す時間、苗を植える時間、そして稲穂を刈り取る時間は短くなりますし、その労力も大きく低減されたことでしょう。でも田んぼの面積が変わらなければ、収穫量は一定です。田んぼの面積を倍にすれば、収入は倍になりますが、単純に機械化をしても収入は増えません。機械化により空いた時間で、機械化にかかる経費を払うために別に働きに出て兼業化をする。本末転倒だと思うんです。

 戦後、日本の農業はGHQによる「農地改革に関する覚書」からの農地解放により、農業就労者の9割が自作農になりました。その結果として、ほとんどの農家が1haの自作農となりました。しかし、農地を拡大することに対しては大きな規制がかけられました。戦前の大地主制度を否定した結果の農地解放ですから、農地を買い取って大地主化をすることには制限を掛けられたという事です。だから戦後の農地法の理念は「農地はその耕作者、自らが所有すること」という自作農主義になりました。結果として農地の取得に大きな制限があり、戦後の農業の機械化によりその労力は低減されてもそれが収入には直結しなくなりました。収入が上がらないのに機械化分の支出は増えます。それを返済するために余った時間での兼業化が進んだのが、日本の農業を衰退させる大きな要因になったと考えています。プラス相続による農地の細分化、集約化の障壁の高さですね。しかし衰退する農業を変えるために、政府も農地法の大改正を幾度か行ってきました。それは農地の流動化の推進です。ただそれも所有には制限を掛け、借地による流動化の推進でした。自作農主義から賃借を通した農地経営規模の拡大と農地の効率利用を図る借地主義に転換をしたのです。しかしこれも様々規制があり、根本的な問題解決には至りませんでした。2000年からはこの流れを株式会社にも認め、様々な条件を付けてはいましたが株式会社(農地生産法人以外の一般株式会社には認められなかった)にも農地所有は認められました。2002年に遊休農地が多い自治体内に構造特区が設けられ、農業生産法人以外の法人への農地の貸し付けが可能になり、2005年にはこれを全国展開。2009年には農地法改正により、一定条件はあるが株式会社を含む一般の会社に対しても農地の借用が可能となりました。維新の改正はこれの流れを加速するものです。私はこの農地の所有に対する国の考えはもっと緩和をするべきだと思っています。よって維新の今回の改正案に対して支持をします。ただ維新の規制緩和は性急な面もあるので、法案審議を通して譲歩をする局面はあるかと思いますけど。

 

 農地って難しいんですよね。例えば、植物工場というものがあります。これは農地を使いません。だから農地規制はないんですよね。こういう植物工場の流れが今、来ています。

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 よって、農地=露地栽培の方の規制も解除をし、資金を呼び込んで農業生産を拡大するタームだと思うんですよ。日本農作物の海外輸出も伸びてますし、TPP以降に対応するためにも農業の集約化、資金面の強化は避けれません。そしてそれは法人化をすることでより進むでしょう。それを行っていくために一般株式会社による農業への参入は必須です。農業関連で大きな企業というのはほとんど聞きません。農協を別にすれば、農機具メーカぐらいのものです。日本のコメの数%を生産している企業、とかはありませんし、株式公開をして一部上場をしている農業生産会社はありません。(株式の公開は法律で禁止をされてますけど)それではだめだと思うんですよね。そしてそういう企業が出来れば、農業というものが高収益化をしているという事にもなります。市場からお金を集めれない=民間がその会社に対して価値を認めてないという事です。だから農業を生業とする会社が株式を上場をして農地を倍にする、とか面白いと思うんですけどね。農業という産業にとってもそれは有益だと思います。

 

 六次産業というものがありますが、私は否定的です。六次産業というのは農家の人(農業法人など)が自身で作った農作物を加工して商品化し、それを市場に流すまでの1次×2次×3次をすべてやるので、掛け合わせて六次産業と言っています。(1+2+3で足して6と言ってましたが、最近は掛け算らしいです)なぜ否定的なのかというと、政府は法律を作ってガンガン推進をしているのですが、そういう六次産業的なものはやる人は勝手にやるんですよ。政府が補助金を出してやるものではないんです。補助金を出すことを一概には否定はしません。例えばどこかの農業法人が六次産業的な事業をやり、それが軌道に乗って、それを加速をするために補助金を出すのならわかるんです。事業を伸ばすのはなかなか難しいですからね。成長を加速させる、一定規模になるまでの時間が短くするための保護政策としての補助金は否定をしません。ただ補助金を出すから六次産業をしない?で、「させる」のは違うと思うんですよね。勿論、それで成功する六次産業の事業もあるでしょう。でも大半のものは補助金を打ち切られたら、消えるものがほとんどになるでしょう。それは過去を見れば明らかです。事業の最初から補助金頼りですから、どうしたってそういう経営体質になります。例えば道の駅とかでそういう事業の商品を売るわけですが、道の駅が無ければそもそも経営として成り立たないようなものが多いわけです。基本的に民間が自分で金を出してやるものでない限り、民間での事業の成功は見込めません。自腹切ったものしか成功しないんですよ。人の褌で相撲を取るような商売は成功の見込みはありません。本来、維新の今回の改正案のようにまず参入障壁を下げて間口を広げ、資金の流入とそういう2次3次の知識を持った企業を呼び込むべきなんです。1次産業の知識しかない人間が2次3次に参入しても、失敗する方が多くなるのは当然ですし、非効率です。六次産業というのはプロというものを舐めた政策だと思っています。江戸時代だって、それぞれに分業をしてやってたんです。だから六次で纏めるという発想自体、とても可笑しな考え方だと私は捉えています。スーパーなどが契約農家から買って、そのスーパーで売ったりしてますが、そういうのが本当の意味での六次産業です。この法案が通ればスーパーのグループ会社に農業法人が出来て、直接、野菜などの生産をするようになるでしょう。だからそれを更に進めるためにもこの維新の改正案は日本全体にとって有益だと考えています。

 

<参考>

農業法人とは?| 公益社団法人日本農業法人協会

農地法人について詳しい。

農業法人について:農林水産省

「農業経営の法人化」パンフレット:農林水産省

2015年農林業センサス:農林水産省

5年後の農林業に関する統計資料

株式会社の農地保有を巡る動向についてー養父市の国家戦略特区を例に考えるー

2003年2月17日経済財性諮問会議提出資料 規制改革を加速的に推進する「12の重点検討事項」より抜粋

はじめに~農業法人と農地所有適格法人 | 農政部農業経営局農業経営課

九州における植物工場などハイテク農業(日本政策投資銀行)

オランダにおける人工光利用型植物工場事例

農林漁業の6次産業化:農林水産省

 

農業株式会社と改正農地法ー法務と税務 単行本(ソフトカバー) – 2011/1/15
金光 寛之 (著), 松藤 保孝 (著), 松嶋 隆弘 (著)

農業経営の未来戦略〈1〉動き始めた「農企業」 (農業経営の未来戦略 1) 単行本 – 2013/12