粉屋の大阪to考想

大阪都構想否決を受けて、その辺をだらだらと書いてみます。大阪の政治状況も併せて書いていきたいですね。Twitter: KONAYA @PAN_KOYA

大阪都構想意見交換会と維新の都構想の説明の在り方への問題提起

 今回は、大阪維新の会大阪都構想意見交換会について書きます。それと併せて、現在の大阪維新の都構想の説明の在り方について疑義を書いてみたいと思います。 

 大阪都構想意見交換会は大阪維新の会が、都構想での問題点、なぜ否決になったかなどを大阪市民に聞こうという会になると思います。会の進行方法は、まず都構想の概略を説明したり、なぜ都構想の住民投票が否決になったかを大阪維新の検証チームが報告をします。そして、直接、住民にマイクを持たせて意見を聞こうという構成になっています。私はこの都構想意見交換会は形としてよくないのではないかと思っています。なぜかというと、単純に会の一般参加者に質問や意見を募っても、掘り下げた質問もないし、初歩的なものや知識のないために頓珍漢な質問も多いんですよね。延々、自分の持論を延々と述べられる方もおられますし。勿論、含蓄深い意見もあります。そういう面での利点は認めるのですが、あまりにデメリットが多い。ここでいうデメリットは単純に参加しててつまらないという点です。私は実際に二回ほど、この意見交換会に足を運びました。初回はまあまあ面白かったのですが、二回目は正直、面白くはありませんでした。なぜかというと単純に前回のリピートだからです。何回も行くもんじゃないという意見や、つまらないという評価はこういう政治集会ではありえないと思われる方もおられるでしょう。でもリターンの客やネットで見る層には再放送でしかないんですよ。だから観客に対して面白いと思ってもらう点は非常に重要です。ぶっちゃけて言うと素人の言ってることなんかを政治集会で聞きたくないんです。政治集会で聞きたいのは政治家の話です。コンサートに行ってファンのカラオケなんて聞きたくない。プロの歌手が歌うのを聞きたいんです。

 

 ① 都構想意見交換会の在り方

 

 そこで私が考える意見交換会について書いてみたいと思います。まず質問をあらかじめ集めておきます。これは事前募集と当日の開場前から集めればいいと思います。法定の特別区設置住民説明会もありました。あの中で大量の質問が大阪市に寄せられ、それに対する大阪市の返答も大阪市のHP上にあります。そういうものを活用すればいい。そして登壇者である議員や市長が質問の肯定側、反対側に分かれて、その質問をディベート式で討論する。このほうが観てる側も面白い。予定調和ではあるんだけど、当日に入場者にマイク渡して質問をさせても面白いものにはならないと思います。質問を議員側でわかりやすい形にし、観客に伝えやすい形にする。ラジオでも大概リスナーからのお葉書を読むことはあっても、直接リスナーに電話してあーだこーだする番組はそうはありません。ラジオパーソナリティで、素人いじりができるのはさんまレベルだけですよ。だから質問を”素人”に言わすのでなく、予め質問の構成をしておく。そしてそれをディベート形式をとった議員間の討論という形で観客に見せる。ディベートと言っても真剣勝負ではなく、段取りを決めた”プロレス”です。でもこれにより、問題点も浮き上がり、それの解決方法も提示できます。また情報密度も上がります。一時間かけて素人の数問の質問を只聞いて終る現在の形より、観客に対して十分な情報を伝えることができるでしょう。そして何より、こういう形だと議員の政治家としての資質がはっきり観客に伝わる点も重要です。議員同士の白熱した討論を見る観客は、「議員はやはりすごい」「議会でこういうやり取りをしてるんだな」と思えます。そこから自分たちが支持する政治家の凄みが分かり、より支持の想いも深くできます。政治集会は議員の顔売りという側面もありますから、こういった点でも意義深いものになると思います。

 実際の方法を提示します。区割りを例にします。都構想の区割りは5区案でした。ディベートでは、

 否定側「なぜ五区案なのか?」
 肯定側「様々なバリエーションを考え、これがベストと判断した」
 否定側「バリエーションとは?」
 肯定側「5区案、7区案を考え、それぞれの区割りを変えたものを各2パターンの計4つの試案を最終候補とした」
 否定側「ではなぜ最終案になったのか?」
 肯定側「7区案の二つは最終的に行政効果が五区案のものに比べ低かったので検討から外した」 
 
 といったような感じでやればいいと思います。これだけだと質疑応答みたいですけどね。あと五区案になってからの区割り変更も加えるといいかな。自民党が提出した1区案を否定側にあげさすのも面白いでしょう。あれは本当にアホな案でしたから。これらに「五区案のメリットデメリット」「現在の区役所はどうなるのか?」「住民サービスは?」といったよくある質問を混ぜてやればいいと思います。詳細な台本は必要ありません。「Question」と「Answer」でザーッと並べて、一覧にしておけばいいんです。それを各議員が肉付けをした質問をして、それに対して肯定側が明快に答える。ディベート形式ですから、肯定側からも否定側に質問をするのも有ですし、それもまた面白さを増す要因になります。そういう風に「プロレス」ではあるんだけど、議論として飛んだり跳ねたりをして観客を楽しませる。それが大事だと思います。そうすればネットで見る観客も自然に増えていくでしょうし、会場の人間も増えると思います。それが維新全体への支持拡大のうねりにもなると思います。政治に興味を持つという事は、政治を識るという事です。その為の端緒になるのは、政治が面白いという事を政治家が伝えることです。橋下さんの凄みはその政治力にもありますが、多数の市民に政治が面白いことを伝えたことです。そしてその政治の面白さを十全に味合うためには、市民自ら政治について調査をし、考えを纏めることだと教えてくれたことです。これが政治に興味を持つという事で、投票に行くことが政治に興味を持つことではありません。

 

② 大阪維新の住民への都構想の説明方法について


 では、次に現在の大阪維新の都構想に対する説明への私の疑義、というか不満点を書いてみたと思います。都構想意見交換会での住民投票否決理由を検証する大阪都構想検証チームの結論は、大きな反対理由として「都構想が分からない」というものだそうです。要するに「大阪市民の都構想に対する理解を得られなかった」というものです。私はこの認識は間違いだと考えます。私の認識は「大阪市民の都構想に対する”納得”が得られなかった」というものです。「理解」と「納得」の違いについて以下に書いていきます。
 維新は都構想の住民投票で、大阪市民の理解を得るために数々のTMと説明会などを行いました。これ自体の意義とその努力について私は何ら疑問はありませんし、橋下市長をはじめとした維新の政治家とボランティアには尊敬しかありません。しかしその方向性が間違っていたのではないかと考えています。方向性というのは何かというと、「都構想全体に対する理解を得ようとした」ことにあります。ここを間違えたのだと考えています。都構想全体に対する住民理解は、絶対に得られません。それは維新自ら言ってることです。大阪市は大きすぎるんです。そして時間もありません。どれだけ努力、マスコミを動員をしても都構想全体の住民理解は得られないし、永遠の説明不足に陥ります。これは大阪市内に全戸配布した単純なパンフレット概要レベルでの話です。パンフレットレベルでの理解を住民全体でどれくらい得られるかというと、今からやって数年かけても50%どころか30%はいかないでしょう。正直、10%もいかないかもしれません。思いっきり悲観的な見方です。でも当然なんです。住民各人の政治姿勢の違いもありますし、理解する熱意も違います。

 都構想全体に対する理解を得ることの不可能な理由を別に一つ上げます。これをぐるっと引っ繰り返すと、じゃあ、今の大阪市民って大阪市役所の現行制度をどの程度知ってるの?っていう所に行きつきます。都構想のパンフレットレベルの大阪市役所の現行制度を大阪市民は知ってるの?ということです。大阪市民に大阪市役所の部局名を5つ上げ、それぞれの仕事を答えよと質問したらほぼ答えれないでしょう。逆に今の大阪市民は大阪市役所の現行制度より、都構想の制度の方が詳しい人は多い位だと思います。だから大阪市民は現行の大阪市役所の制度は知りませんし、大阪府役所についてはさらに知りません。要するに知識の土台がないんです。ちょっと逸れますがここの説明は増やす必要が大阪維新にはあります。反対派がよく言ってた「過去の箱モノの失敗は単純にその時代の失敗だ。大阪市役所という制度が悪いわけではない」みたいな論調がそれです。だったらお前ら辞職しろよと私は思うんですけどね。その時代に議員だった人間がそれを言う事には違和感しかありません。だから大阪市役所がなぜ現行のものでは駄目なのかという明確な理由の提示が必要です。私はシンプルに大阪市発祥以来、100年以上たった旧弊の組織の垢落とし、棚卸でもいいですけど、その為だけに都構想をする。それだけでもいい位だと思っています。話戻って、しかし大阪市民が知る大阪市役所の姿は、大阪維新のパネルにある過去の箱もの失敗のオンパレードという結果ぐらいです。だから市役所の現行制度の問題に対する認識が二重行政+αぐらいです。そこにそれへの制度改革である都構想の説明をしても、土台がないところに家を建てるようなもので、端から無理な話なんです。

 ではなぜ維新がこういう姿勢になったかというと、橋下さんの考えがそうだからです。これは橋下さんを批判しているわけではありません。橋下さんは維新の理念の体現者ですが、その根底にあるのは維新の理念も超えた民主主義原理主義です。民主主義の原理原則に忠実なのが民主主義原理主義者です。よって、特別区設置協定書を規定する大都市法にある以下の規定に忠実に従ったんです。そしてそれは弁護士である橋下さんにとって当然のことです。
 
大都市法 第七条  
2  関係市町村の長は、前項の規定による投票に際し、選挙人の理解を促進するよう、特別区設置協定書の内容について分かりやすい説明をしなければならない。

 

 この法の趣旨に沿うように、そして沿う為に大阪市市民に市長である橋下さんは、特別区設置協定書の内容の全てを理解できるように、全力で命を燃やし尽くすような説明をしたんです。しかし大阪市民には最終的に賛成に至るまでの納得は得られませんでした。理解ではなく、納得が得られなかったんです。

 「納得」について書きます。納得とは何か?デマを例にあげます。都構想ではデマが色々ありましたが、ここでは「大阪都の財政効果は一億円」と言ってたものを例にします。

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 反対派が「大阪都との財政効果は一億円」と言ってた理由については上記をお読みください。ただの詭弁です。しかし反対派はこれを連呼しており、当時の住民投票期間のテレビではこれが意見の一つとして流れていました。では反対派はこの「一億円」をどう使ったかというと、このデマで都構想の財政効果という「都構想の一部」を否定し、それにより都構想全体に対する不安と不信を煽ったわけです。結果としてこのデマを聞くものに都構想全体への反対を「納得」させたんです。デマを信じて反対票を投じた人間は全てのデマに精通し、理解し、納得して反対票を投じたわけではありません。一つか二つのデマを彼らなりに理解し、納得した結果、反対票を投じたんです。住民投票の時の多数あったデマのうち、ほんの一つか二つのデマを信じて、都構想全体を否定したんです。ここです。ここなんです。
 維新は全ての都構想の各事項について説明をしようとしました。そして理解を得ようとしました。全ての事項について理解を得られたら、必ず住民は特別区設置協定書に「納得」をして賛成票を入れてくれることを信じて。しかしそれは間違いなんです。全ての事項を全住民が理解することなんて有り得ないんですから。では維新がするべきは何だったのかというと、都構想の一部を完全に理解させ、それにより都構想全体に対する安心と信頼を勝ち取ることだったんです。実際、維新の支持者でも都構想の全てを理解している人は極少数派です。熱心な支持者でも全ての都構想における制度(パンフレットレベルに置き換えてもいいですが)の説明をできる人は多くないでしょうし、それの成り立ちの経緯(協議会などでどういった議論がなされ、協定書が作られたか)から説明できる人はよっぽど稀でしょう。それ以前になるともうほぼ0と言って差し支えありません。ではなぜ理解できなくても投票をしたのか?もしくは一部の理解で賛成できたのか?単純な話で納得していたからです、都構想に。都構想にわからない部分もあるが目をつぶって賛成に投票をできたのは、それまでの維新の政策と橋下さんをはじめとした大阪維新の会の政治家に対する安心と信頼が、それの担保をしてくれていたからです。そしてそれは間接民主制において正しい態度です。しかしW選挙で松井・吉村両氏が圧勝できたのにもかかわらず、住民投票で否決されたのはそういう納得が過半数以上を得られなかったからです。首長、議員選挙では維新には投票するが、住民投票で賛成票を入れなかった人達は特別区設置協定書に対して納得ができなかったんです。それぞれの住民が都構想の一部分一部分に引っ掛かりを覚え、それが都構想全体への不信感となって反対票を入れたんです。

 じゃあどうしたらいい、という話になるんですが、説明するしかありません。なんだそりゃになりますが、説明の方法を変えるんです。大阪維新特別区設置協定書の内容、最終的な都構想の姿を理解してもらうための説明をしていました。これを変えます。では何を説明するかというと、特別区設置協定書を協議していた大阪府大阪市特別区設置協議会(以下協議会)で話し合われた内容、協議内容について説明するんです。(この協議会で特別区設置協定書の原案をたたきあげて、特別区設置協定書は議会での承認後に総務省に提出され、認可を受けました。これにより都構想の住民投票は行われることになりました。)これは先の意見交換会でのディスカッション式でやった方がいいに繋がるんですが、ここで又、区割りの話をします。区割りの説明をするのに特別区設置協定書の内容を説明しても、理解できる人はそう多くないんです。なぜかというと、人間は一つのことの良し悪しの説明を受けた場合、悪い方、いわゆるデメリットの方に多く目を向けるんです。


例えば、私が服を買いに行くとします。お店で店員が寄ってきました。
店員「何をお探しですか?」
粉屋『シャツでなにかないですか?』
店員「ではこれなどはいかかがでしょうか?」
と一枚の服を出してきたとします。一着の服だけの良し悪しを考えると、どうしてもその服の悪い部分が気になりますし、他の服も見たいなという気持ちが出ます。良い店員の場合、複数を持ってきます。例えば四着持って来れば、その中に気に入るものはないにしても好みに近いものはあるでしょう。また店員もこちらがどう考えるか聞いて、別のも持ってきます。最終的に買う買わないは別にして、より自分の欲しい物には近づいていきます。これが一着しか持ってこないと、話の端緒もないし、その一着を否定した時点で店員との会話も終わります。単純に趣味があなたとは違うということになるんです。では四着出した店員がなぜいいかというと、客に選択をさせているからです。客の自主性を最大限尊重して、客の購入意欲を引き出そうとしています。客としてもこちらのことを考えてくれているという店員の姿勢を評価するので、会話がつながります。

 

 これで言いたいのは他と比較する対象があると、デメリットに対する考えは軽減されるんです。だから区割りでも四つの案を並べて、それぞれのメリット・デメリットを簡単に説明して、協定書の案のメリットを説明すればいいんです。説明を受ける人間が何を見るかというと、その案に対して検討された時間、言い換えると実際どれだけ深く考えられた案なのかを見るんです。結果重視と言いますがそれほど結果について、人間は重視をしているわけではありません。住民投票は決められた結果に対する賛否の投票でしかありません。結果は固定されているんです。だからこそよりそれが決まった過程を見るんです。勿論、結果に対する理解も必要です。しかしその結論に至るまでの過程の中で如何に考えたかという姿勢に対する評価が、それを説明する人間の評価になります。案自体について深い理解は得なくても、案についてよくよく検討されているものだと理解が出来れば、そこに安心と信頼が生まれ、それが都構想全体に対する安心と信頼に繋がります。結果として都構想への納得になり、賛成票を入れてもらえることになります。そして四つの案を並べて説明をすることで、疑似的に有権者が協定書案を選択したように感じる説明ができたらもう完璧です。この四つの案の中で、私が選ぶならやっぱり協定書の案だなと思ってもらうのです。物事を比較すればメリットもデメリットも相対的になります。しかし一つのことを検討する場合は、メリット・デメリットは絶対量で考えます。そうなるとどうしてもデメリットの絶対量を考え、そこに引っ掛かってしまうんです。そして一つ引っかかってしまうと全体の検討もできなくなり、それが全体の否定につながります。これがダメなら全て駄目になるんです。デマのパターンですね。結局、都構想において反対に回った人の多くはこのタイプだったと思っています。

 もう一つ、例をあげます。特別区区間の財政調整についてです。これ、私が最初に行った意見交換会でおっちゃんが聞いてたんですよね。で、おっちゃんの問題点を質問して、浅田さんが答えて、おっちゃん「あ、それならええやん」おっちゃんの疑問はこれで解消したわけです。結局、おっちゃんは自分でこれは問題だと思ってたのが事実とは違い、全く問題ないことが分かったんですよね。これは知識不足から来たものですけど、引っ掛かりがあるからそれに拘って、都構想の全否定におっちゃんはなったんです。結果としては反対票を入れたわけです。座るときに「それなら賛成にいれたのに・・」ってぶつぶつ言いながら座ってました。おっちゃんも納得できてなかったわけです。

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 私の以前の記事で、大阪維新に都構想の制度を纏めた本を出してほしいという事で書きました。なぜこれが必要かというと上のような人を減らすためです。そして読む人に都構想に対する安心と信頼を与えるためです。ぶっちゃけ、こういう本が住民投票前に五万部程度でも大阪市内で売れてたら、前回の住民投票は賛成多数になっていたと思います。本は一定影響は少ないかもしれませんが、読者に対する知識の平均化には凄い効果があります。まあ今の時代に五万部を売るのは大変ですが出版すべきです。まだ住民投票には二年あるんだし、二年しかないんです。その間に打てる手は全て打つべきです。都構想意見交換会でも私が言うような討論形式なら、毎回趣向を変えた形でやれます。区割りや区名、財政調整、府への移管、各種デマ、役所の新体制や特別区区長の話などいろいろ考えられるネタはあります。全体を説明するうえでの定番ネタも必要ですが、毎回違うネタを一つ二つ入れることは可能だと思います。そういったものを編集して、都構想解説動画としてHPにあげてればいいんですね。10回やれば都構想の各分野と十分な情報量のものが出来ます。定番ネタでもやる議員が変われば内容も変わります。今の都構想意見交換会だと定番部分はほぼ同じだし、質問内容でも抜粋して使えるようなものは少数です。ぶっちゃけどこかの回を選んで一本あげておけばネットではOKの話です。全回あげてもほぼ内容は変わらないわけですから。これが法定の住民説明会なら逆に全く同じものをするのがベターになります。でも大阪維新が党としてやっている活動なんだから、そこは自由にやるべきです。

 

③ 区名について(湾岸区)

 

 区名について書きます。区名は特に湾岸区が不評でした。それはまあ事実でしょう。しかしこの区名問題での本質は、湾岸区という区名にあるのではありません。問題の本質は「湾岸区」という区名がどういう経緯で「湾岸区」になったのかという経緯の不透明さと、なぜ区名を住民が決めることにタッチできないのかという制度への不満がその根源です。そこに対する不満が不信感になり、都構想という制度全体への否定につながった側面はあると思います。なぜ区名が事前に決められてたのかというと、大都市法でそう定められているからです。特別区設置協定書の作成を定める第五条二において、「特別区の名称及び区域」を定めることを求めています。よって特別区設置協定書において、特別区の名称をあらかじめ定めておくことは必須になっています。だから橋下さんの説明でも「特別区成立以降に特別区区長や住民が求めれば区名は変えれる」といったある種の後ろ向きの説明しかできませんでした。普通に考えたら名前ぐらい俺らに決めさせてよ、というのは当たり前に考えることです。区名問題のややこしいところは、これは理性の問題ではなく、感性、感覚に属する問題で、逆にその分だけ解決は難しい問題だということです。反対票を入れた人の中には区名が単純に嫌と言う理由で反対票を入れた人もいるでしょう。ここで引っかかって納得が出来なかったわけです。であるのならば解決方法は考えるべきです。0.1%でも賛成票の数を増やすことが必要なのですから。
 私の考える解決方法としては、この名称部分の法の解釈を変えることです。総務省に掛け合い、特別区設置協定書の特別区の名称は仮称を認めさす法の解釈をさせるんです。そして、住民投票可決後から都成立までの準備期間二年の間に、正式な特別区名称を定める住民投票を行うことをはっきり特別区設置協定書に明記することです。併せて徹底した周知活動を行うことも総務省には確約をします。あと行政区名をどうするかも併せて住民投票は必要ですね。住民投票可決後、速やかに特別区名称住民投票条例を議会で可決し、特別区の名称の公募などで名称候補を確定します。(もしくは住民投票時に特別区設置協定書と特別区名称住民投票条例を抱き合わせで住民投票を行うのが、法的に問題をクリアするうえでも楽かもしれません。住民が名前を仮称で行うことを了承したと判断できますし、区名は住民投票後に住民が決めれるという周知にもなります)そしてその準備期間二年の早い時期の国政ないし地方議会議員ないし首長選挙において、併せて特別区名称住民投票を行い、特別区の正式名称を決定するとしたらいいと思います。それが出来たら苦労はないよと言われるかもしれませんが、解決方法として私が考えられるのはこれぐらいです。しかし名称はお金が絡む問題でもありません。これが区域や市の資産等であれば、例外にするのは総務省もためらうでしょう。しかし名称なら別に問題ないでしょうし、総務大臣がいいよと言えば基本的にできると思います。国会でそういう発言をしてもらえればいいわけです。単純に「名称」の解釈なだけですからね。
 そして名称問題での一番の問題は、これが問題になると大阪維新の会が認識をしていなかった点です。だから全てが後手に回った。ロジックで全て考え、エモーシャルな部分を見逃してしまった事。これが一番の問題です。勿論、これは後出しジャンケンですし、私自身も区名がこれほど喧伝される、問題になるとは思っていませんでした。だから名称問題で真に反省すべきは、都構想住民投票においてこういうエモーシャルな問題が他にないか、見逃していないかを総点検をすることです。感情的に受け入れられない点を洗い出すことです。これは逆にデマを精査することで見えてくることもあると思います。彼らは感情に訴えますから。不安を煽りやすい部分を見つけることです。それは生活に直結する部分になると思います。例えば特別区の区境になる町は、行政の区分けで隣町は別の特別区になります。そういった地域は特別区の違いによる生活の変化に対する恐れ、不安が強まります。住民投票時で南の方は反対票が多かったですが、あれも言ってしまえばこれです。南の財政的に弱い特別区は切り離され、生活、住民サービスが低下するのではないか?という不安があったのでしょう。そしてを反対派に利用され、反対派の票田にされた。だから都構想の説明をする上で、制度の説明だけではなく、感情に寄り添った非理性的な部分でのケア(ケアと書いていいのかはわかりませんが)といった説明も必要だと思います。特別区になっても大丈夫だという非理性的な安心感を与える事が必要です。ただ私自身、この部分は見えてない点も多く、その解決方法についても今後の課題です。

 

④ 結論


 結論として纏めると、都構想の説明において大阪維新大阪市民に対して信頼と安心感を与え、それによる納得を如何に引き出すかに掛かっています。説明の戦略の方向性はこれです。戦術としては先にあげたように特別区設置協定書の中身ではなく、特別区設置協定書が作られた過程の説明をするべきです。これは有権者が自ら疑似的に特別区設置協定書にある区割りをはじめとした各制度を選択したという満足感を与えるためです。それにより都構想全体に対する納得を生むことが目的です。それが住民投票での賛成の結果を生むと考えています。それと制度という理性で割り切れるもの以外の、人間の感情というものに即した説明方法を作ることが重要です。

 


 今回の記事は今までの維新の活動に対して否定する考えも多分に含まれます。そういった点だけでもここまで読んで頂いた皆様に感謝を申し上げたいと思います。ただこれは今現在の私が維新の都構想の説明に対して率直に思っている意見です。その辺をご斟酌頂き、ご寛恕のほどをお願いいたします。ただご意見に関してはツイッターの方で受け付けておりますので、随時お願いいたします。(コメント欄でも結構ですが返信は遅れます)


<雑記>

若者の若者による若者のための参院選マニフェスト評価会!~おおさか維新の会編~

live.nicovideo.jp

2016年5月15日(日) 若者の若者による若者のための参院選マニフェスト評価会!~おおさか維新の会編~ - YouTube

この番組は見てて、非常に知的で面白いイベントでした。日本若者協議会とおおさか維新の会のメンバーの喧々諤々としたやり取りは興奮をしました。未聴の方は是非ご覧ください。

<参加議員>
馬場伸幸 幹事長、衆議院議員
浦野靖人 国会議員団学生・女性青年局長、衆議院議員
足立康史 国会議員団 政務調査会長代行
木下智彦 青年局長、衆議院議員
清水貴之 広報局長、参議院議員
永藤英機 学生局長、大阪府議会議員
池下 卓 大阪府議会議員
中野侑吾 兵庫県議会議員
藤田 暁 大阪市会議員
宮脇 希 大阪市会議員
黒田征樹 堺市議会議員

 

 私はこの番組を見て思ったのは、おおさかの国会議員さん達の堂々たる意見もそうでしたが、地方議員である方々の論陣の素晴らしさに非常に感銘を受けました。こういう方々がいれば、維新の次の10年は安泰です。そしてこういう若い議員方にこそ都構想の本を書いてほしいという想いを強くしました。一人で書くのではなく、10人なら10人の編著でいいと思いますし、そういう形がベストです。是非、都構想の本を書いてほしいという想いを最後に書いて、この稿を終わります。

 

橋下さんも本を早く書いてほしいなぁ~。

参議院選までにとりあえず10冊お願いします。(小声


<参考文献、資料など>

大都市地域における特別区の設置に関する法律

 

大阪市市政 住民説明会における質問票への回答について大阪市

 

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都構想住民投票の私なりの総括です。ここでは府全域での住民投票を提案していますが、その部分については、総合区と特別区住民投票という形に意見が変わっています。下の記事になります。

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