粉屋の大阪to考想

大阪都構想否決を受けて、その辺をだらだらと書いてみます。大阪の政治状況も併せて書いていきたいですね。Twitter: KONAYA @PAN_KOYA

粉屋流 大阪会議改正案を考えてみる<大阪会議> 

前回、大阪自民府議団の大阪会議改正案を考えてみました。そこで私なりに大阪会議の改正案を考えてみたいと思います。ここまで色々、大阪会議について書いてきましたがここらへんで総括をする試みでもあります。

 

 この大阪会議が機能しない理由は只一つです。大阪会議の制度設計が如何に首長の権限を発揮させないか?を目的としてるからです。地方行政は首長にその権限が100%ありますが、議員主導で地方行政を壟断するのがこの大阪会議の狙いです。よって当然首長側からは受け入れられない制度設計になっています。ここを変えてやればいいんですね。

 改正点としては以下の5つでOKです。基本的には①②の変更が必須になります。まあ、あとは修正前の大阪会議の原案通りでもいいと思います。

 

 ① 首長の議案提出権を認め、首長の提案する議案は全て議題として採用する

 ② 首長は大阪会議での議決結果に対して拒否権を持つ

 ③ 議員は議会において議案「提案」権が認められています。よって、議員が大阪会議に議案を提出する際は、議員の委員のみで構成される議案会議にて、その是非を採決します。是となった議案は大阪会議に提出されます。

 ④ 大阪会議の議長に当たる会長は議事整理権を専管事項として持ちます。大阪会議に提出された議案の優先順位は会長の職責とします。

 ⑤ 議案の採決は、出席委員の過半数とします。それぞれの自治体の過半数などという訳の判らん採決方式は採りません。

 

 これで機能するんじゃないかな。まあ実際の大阪会議では今の大阪の政治状況だと否決だらけで空転するでしょうけども。しかし会議の運営自体は出来ます。松井知事は大阪会議を大阪の改革が1mmでも進むのなら賛成すると仰ってましたが、今は1mmも進みませんからね。それもこれも大阪会議が「ポンコツ」だからです。それの修正の為にも上の改正が必要です。

 では①~⑤の改正点の必要性について以下に述べます。

 

① 首長の議案提出権を認め、首長の提案する議案は全て議題として採用する

 

 現行の大阪会議では、案通りなら首長が提案した議案は議員のみの代表者か会議で協議がされ、そこで結論が出ない場合は、大阪会議の本会議で採決を取ります。

 

(議事の決定)
第6条 会議の議事は、構成員の意見を聴いて、取りまとめる。ただし、議事がまとまらないときは、大阪会議で決する。

資料4‐2 代表者会議設置規程(案)

 

 なぜ代表者会議で議事を決することができないかというと、代表者会議に首長がいないからです。首長がいない会議で首長の提案する議案を否決してしまうと首長の議案提出権を侵害する恐れがあり、違法性が出てくるからでしょう。首長が出席する大阪会議での採決であればぎりぎりOK、ないしグレーというのが役人の判断なのだと思います。私自身は、アウトだと思っています。現行の大阪会議で代表者会議を設置するのなら、ここしか落としどころがなかったというのが結論だと思います。

 この代表者会議が出てきた過程はわからないのですが、第一回の大阪会議で柳本議員の発言を以下に示します。

 

(柳本委員)
ですから、この規約(案)については事前に3首長さんも我々議会のそれぞれの会派も
一定拝見をさせていただいて、さまざまな意見を事務局側に言わせていただきました。そのもとで、事務局でも一定ご調整をいただいて、修正していただいた経緯もあるというふうに認識しております

 (大阪戦略調整会議≪第1回議事録≫

 

 密室での経緯ですから大阪自民とは言いませんが、まあどこかの会派が代表者会議をねじ込んだんでしょう。それでこんな訳の判らんものが出てきたんだと思います。

 大阪会議は「会議体」です。代表者会議のように意見を纏めてるだけで採決を取らない「協議体」ではありません。そして大阪会議の採決結果は3自治体の首長と議会を拘束します。これをカバーするために大阪会議は次の修正を受けて可決されました。

第10条第1項中「求めなければならない」を「求めるよう努めなければならない」に改め、同条第4項中「改めて」を削る。

 議決結果の履行に対して首長に義務を課したのから努力目標になったわけですが、大阪会議は会議体なのでやはり尊重義務が発生します。そういった会議体である大阪会議が首長の議案提出を否決すれば、やはり首長の議案提出権を侵害したと言わざるを得ません。その結果が出れば、首長から違法再議を懸けられる恐れは十分にあります。この点は次の②で書きたいと思いますが、そういった違法性の恐れを回避するために首長の議案提出権は完全に認めないと大阪会議自体が運営できません。よって首長の議案は全て提出を認めることになります。

 

 ② 首長は大阪会議での議決結果に対して拒否権を持つ

 

 首長は大阪会議の議決結果に対して拒否権を持ちます。大統領の拒否権と同じですね。また首長が持つ再議権とも同様です。この場合は一般的な再議権相当になりますが。

 これをなぜ与えるかというと、単純に首長は会議体である議会において再議権を持っているからです。よって、大阪会議も同様に会議体ですから、再議権相当の権限として拒否権を与えないと地方自治法上、おかしな話になるからです。

 大阪会議の採決方法は現行以下のようになっています。

 

(会議)第8条4

 会議の議事は、出席委員のうち本市に属する委員、大阪府に属する委員及び堺市に属する委員のそれぞれ過半数で決することを基本に会議において定める。

大阪市条例第 79 号 大阪戦略調整会議の設置に関する条例

 

 

 大阪府大阪市堺市のそれぞれに属する委員のそれぞれの過半数を取らない限り、その議案は可決されません。これは3自治体それぞれに拒否権を持たす意味合いで、原案から修正された条文です。しかし、これはそれぞれの首長に拒否権さえ持たせておけば、必要のない条文なんですよね。なぜこういう制度になってるかと言えば、あくまで議員が主導権を握りたいから。それだけです。

 首長に拒否権を持たせておけば、採決方法は原案通り「出席委員の過半数」で構いません。よって今回、私が挙げた「⑤ 議案の採決は、出席委員の過半数とします。」でOKです。

 また首長に再議権相当の拒否権を持たす理由として、首長に再議権を行使し、大阪会議の存在自体を否定させないためのストッパーとしての役割もあります。「拒否権」として違法再議を行使されると、大阪会議という制度自体が消滅してしまいます。これを回避するためにも首長には大阪会議での拒否権を与える必要があります。

 大阪自民も首長に再議権を首長に行使しないように申し入れを行っています。

・平成27年8月12日 自民党系3会派から、大阪市長の意見(平成 27年8月6日付け)に対する意見が提出されました。

この内容については別稿で書いてるので詳しくは書きません。

橋下市長に大阪自民が違法再議を使うなと言ってる件について - 粉屋の大阪to考想

 しかし、大阪自民が再議権を行使される可能性を考えているのであれば、それを回避するために制度上に再議権相当の権限を首長に付与するのは当然だと思うのですが。行使されれば大阪会議自体が消滅するわけですから。なぜ今回の改正案でそういった拒否権相当のものを改正案に盛り込まなかったのかわかりません。大阪自民は大阪会議が消滅してほしいんでしょうかね?まあ実際、再議権を行使されて大阪会議が消滅することを大阪自民が一番望んでいるんじゃないかとは思っていますが。

 

 ③ 議員は議会において議案「提案」権が認められています。よって、議員が大阪会議に議案を提出する際は、議員の委員のみで構成される議案会議にて、その是非を採決します。是となった議案は大阪会議に提出されます。

 ④ 大阪会議の議長に当たる会長は議事整理権を専管事項として持ちます。大阪会議に提出された議案の優先順位は会長の職責とします。

 

 ③に関しては、議員側からの議案提案をどうするか?についてです。議員のみの委員で構成される議案会議(議員の代表者会議)で可決された議案のみを大阪会議に提出するという形にします。

 ④に関して会長が議事整理権を持ち、提出された議案の審議の優先順位をつけ、議事を整理します。

 

 以上の5つの改正をすれば大阪会議はすんなり運営はできるでしょう。

 

 最後に総括をしたいと思います。大阪会議というものが何かというと私の結論として次のものになります。

 

 「大阪会議とは今までの大阪の政治を

         法制度化したものである。」

 

 どういうことかというと維新以前の大阪の知事・市長は、与野党相乗りで推薦してきました。公式に推薦しなくても、その後援団体はある政党を母体としていたりと、大阪の政治はオール与党で野党がいない政治状況でした。よって、知事・市長の支援団体は全大阪となり、多くの外郭団体や補助金をばらまく政治が横行してきました。これを変えたのが維新であり、よって大阪自民いうように大阪を二分した政治状況になったわけです。維新が何かというと、今までの政治手法を継続するか否定するかということです。

 大阪会議はこのオール与党体制の大阪の政治を法制度化したものです。大阪会議では首長の権限はその現行制度上、徹底的に削られています。ないと言っても過言ではありません。あるのは本会議での投票権一票のみです。仮に大阪会議を不服として首長が出席しなくても大阪会議はその定員数を満たせば開催されます。首長の権限は大阪会議の議員一人と全く同じです。これは地方自治法上もあり得ないことです。大阪会議が国の調整会議に相当するものだというのなら首長の出席・欠席による開催の可否に対して条例の条文で規定はされてあって然るべきです。結局、首長が只の一人の委員でしかなく、大阪会議で物事を首長が決めようと思うと議員側に大幅な譲歩が迫られます。これは維新以前のオール与党時代と同じ状況になることを意味します。オール与党の時は選挙のために支持した各団体に利権をばらまく構図でしたが、大阪会議では大阪会議での首長の意見を通すために委員を出している各会派、そしてその各会派を支援する外郭・政治団体等に利権を配る構造になっています。

 大阪会議はこういった昔のバーター政治を法制度化したものにすぎません。その成り立ちからして不純でポンコツな代物です。よって二回目の会議を開くことすら、その提案者である大阪自民も欠席するようなものです。 こういった大阪の政治のありとあらゆる欠陥を抱えた大阪会議は大阪には必要ありません。必要なのは、

      都構想Ver.2

 これをどういった形にしていくのか。これからの維新に注目したいと思います。