粉屋の大阪to考想

大阪都構想否決を受けて、その辺をだらだらと書いてみます。大阪の政治状況も併せて書いていきたいですね。Twitter: KONAYA @PAN_KOYA

大都市制度(特別区設置)協議会 第10回概要 ~特別区修正案に対する委員質疑~

大都市制度(特別区設置)協議会(以下協議会)の第1回(平成29年6月27日)から最終回までの各回の議事録及び資料を纏めていきたいと思います。

 今回は10回目(平成30年4月25日)、「(1)副首都・大阪にふさわしい大都市制度≪特別区(素案)≫について(2)その他」になります。 内容は第9回の事務局の特別区案についての委員側から事務局への質問回になります。

大阪府/第10回大都市制度(特別区設置)協議会

 第10回は前回で事務局が説明した修正された特別区案に対して、委員側から事務局への質問回になります。まず冒頭は維新の守島委員からの質問がありました。

 最初の質問は特別区区名に関してで「第一区の名称の東西区という名称は、東西という言葉が位置的情報ではないのでわかりにくい。個人的には淀川であったり新大阪という地名を用いたほうがわかりやすさという点では優れていると感じますし、当該地域のアイデンティティというようなものを表現できるのではないかなと思う。」

「そもそも特別区の名称についてはいつどの時点で決定するのか」

 

という質問がありました。これに対して事務局側は、

 

(事務局)

特別区の名称については、大都市地域における特別区の設置に関する法律第5条において、特別区設置協定書における記載事項と規定されていることから、協定書策定時までに当協議会で決定。特別区設置後に、区議会の議決を得た上で区名の変更を行うことは可能。ただし、区名変更に伴う住所変更手続やシステム改修経費など、官民ともにさらなるコスト負担が生じる」

 

という回答でした。守島委員はそれに対して、「特別区設置後の区名の再変更というのは新たな負荷とかコストを生むので、まず前提にすべきではない」「町名の取扱いルールとして、新たに設置する特別区の名称と現在の町名の間に現在の行政区名を原則挿入とあるが要らないのではないか」というの意見として表明されています。前段の設置後の区名変更云々は賛成です。最初にちゃんと決めとけ、っていうのが私の考えですから。後段の意見ですが、これに私も賛意を示します。具体的に何が問題かというと、例えば私は東住吉の北田辺で育ちましたが、このルールで特別区になるとこういう地名になります。

 

 住吉田辺

 

 西があれば、東西南北で揃い踏みやな!って感じですが、南の東の北かい。どこやねん見たいな感じもあるわけです。守島委員は「町名の取扱いについては基本方針等取扱いルールそのものの必要性の有無を含めて再検討するべきじゃないか」と仰ってますがこれに同意します。町名は漢字五字以内ぐらいが妥当ではないかとも思いますし。

 守島委員の次の質問は「大規模プロジェクトに係る財政的な影響について」です。これは現在進行中、そして将来的に行われる大阪府市のプロジェクトの費用で、特別区大阪府での財政調整における配分割合に影響が出ないか?という点で懸念があります。これに対する回答として前回、事務局が出した資料への質問になります。事務局の回答としても基本的には影響はないでしょうから配分割合の変更は基本的に行わないという旨で回答をしています。

 

(守島委員)「特別区設置後において、従来なら府市折半で取り組んできた大規模プロジェクトのような事業が新たに発生した場合、政令指定都市が廃止されることで財源の負担のあり方も変わってくるのかなというふうに考えられるんですが、府市折半ルールのもとで市負担とされていた部分というのはどのように取り扱われていくのか考えをお聞かせください。」

 

 特別区設置後に大阪市が負担していた分はどういう形で取り扱われるのか?ってことですね。要するに大阪市が負担していた分を特別区が負担するようなことはあるのか?ということになります。

 

(事務局)「現在、大阪市が実施しております広域的な事務につきましては、特別区の設置に伴い、大阪府に事務が一元化され、財源の配分も行われることから、府市折半という考え方自体はなくなる」

大阪府に一元化された広域的な事務に関しては大阪府が責任を持って対応する、ということになります。この辺は予測されるデマ対策かな?

 

2番目は維新の横山委員です。

(横山)「今回の制度設計案での工夫の一つとして、地域自治区の設置が新たに提示されています。これは、現在の24区単位での地域コミュニティの維持、窓口サービスの継続、住民意見の区政への反映など、住民の不安感へ配慮して示されたものと理解しています。前回の住民投票の際には、24区ごとの地域のお祭りやイベントが特別区になるとなくなるのではないかと心配される住民の方もいらっしゃいました。特別区設置時においてこれらの事務はどのようになりますか。」

(事務局)「特別区設置時におきましても、これらの事務は住民に身近な特別区が承継し、具体的には24区単位で設置する地域自治区事務所で実施する」

 

地域活動の軸となる各地域で行われるイベントなど、24区単位で設置される地域自治区事務所にて所管されるので決して窓口が遠くなるわけではないということですね。

 

(横山)「24区役所で現在担っているまちづくりセンター設置等の地域活動を支援する機能が、特別区になると特別区役所に移り、地域から遠くなることで地域コミュニティがなくなるのではないかと心配される住民の方がいらっしゃいました。今回の特別区素案では、地域自治区事務所の主な事務の中に地域活動支援と記載されていますが、これはどのような事務を行うのでしょうか。」

(事務局)「現在、各区役所では、地域活動を支援する主な事務といたしまして、補助金交付を通じて地域活動協議会のもとで行われるさまざまな地域課題の解決や、まちづくりのための活動に対する支援を行っています。それからまた、地域活動協議会を核としました市民による自立的な地域運営に向けてまちづくりセンターを設置し、地域における担い手育成、広報活動、会計に関する助言指導等、こういった事務を行ってございます。これらの24区役所で現在行っている地域活動支援につきましては、特別区設置時におきましても地域自治区事務所で実施することといたしておりまして、引き続き地域に近いところでその実情に応じてコミュニティの活動を支援してまいります。」

 

24区役所で現在行っている地域活動支援については、特別区設置時においても地域自治区事務所で実施されるということになります。この後、数度の地域活動が変わるのかどうかという質問があり、財政関連の質問に移りました。

 

(横山)「引き続いて、特別区大阪府の財源の考え方、自主財源の議論等についてお伺いいたします。特別区の財政をめぐって、6,600億円の市税が、特別区税では1,700億円となり、自主財源が4分の1に減る、府に2,000億円吸い上げられるといった主張を仄聞(そくぶん)しております。
そこで、大阪市が現在自主財源としている固定資産税や法人市民税を財源として、各特別区に、特別区財政調整交付金が配分されることとなりますが、この交付金特別区での使い道が制限され、自主的活用することができないようなものなのでしょうか。お伺いします。」

(事務局)「特別区財政調整交付金でございますけれども、特別区の行政の自主的かつ計画的な運営を確保するということを一つの目的として交付される交付金でございます。使途が限定されます補助金等とは異なりまして、特別区の自主的判断によって使用できる一般財源となっております。そのため、地方財政制度上、地方自治体で標準的に収入される一般財源の規模をあらわします標準財政規模という指標に税や譲与税とともに算入されまして、実質公債費比率などのほかの各種財政指標の基礎ともされているところでございます。区民税と同様、国や大阪府から使途を制限されることはございません。」

 

まあ当たり前なんですが、この辺の説明と周知は今後必要ですね。どことは言いませんが、大阪自民さんなんかこういう事を書いておられますし。

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JiMiNSiMiN2018 Vol.26  自由民主党大阪市会議員団HPから)

 まあ役所に否定されてるようなことを市政報告に書くのは止めた方がいいんじゃないかな、大阪自民党さんの議員さん方は。

 ちょっと話は逸れますが、今回、自民さんのHP見に行って気が付いたんだけど、この画像。

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 この手形のマークって自治労さんとこの2018大阪市住民投票にむけたロゴマークの色違いだよねぇ。まあ前回の時も使ってたけどもさ。なんで共通したものを使ってるんだろう?まあええけど

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(自治労大阪ホームページ−自治労大阪府本部

 

話戻って、

(横山)「財政調整については、関連する主張として、配分割合は府が決めるため、特別区の配分割合が引き下がることを不安視するご意見があります。そこでお伺いいたしますが、府は自由勝手に配分割合を変えられるのでしょうか。」

(事務局)「特別区財政調整交付金の配分割合等につきましては、地方自治法によりまして、都の条例で定めることとなっておりまして、配分割合の変更のため条例を改正する際には、あらかじめ都区協議会の意見を聞くことが規定されております。また、同項では、交付金に関する事項の総務大臣への報告が義務づけられておりまして、総務大臣は、必要がある場合には助言や勧告を行うことができるなど、適切な制度運営を確保するためにさまざまな仕組みを設けられております。東京においてもこうした法令に基づいて運用されているところでございます。大阪の制度設計におきましても同法令が適用されることとなります。財政調整財源の配分割合の変更には、大阪府特別区協議会で協議が行われ、合意されることが必要でございます。大阪府は任意に配分割合を変更するということではございませんで、協議会の合意を受けて条例改正を行うことになってございます。」

 

 大阪府特別区への財政調整による配分割合を恣意的に変更することは法律上もできないし、条例上もできないってことですね。

 

 で、まあ次は自民の花谷委員ですが毎度同じことを仰ってますね。

特別区及び総合区における財政シミュレーションを出せ」

「この法定協議会では、もはや特別区に賛成しているのは維新の皆さんだけであり、公明の皆さんも含め、維新以外の会派は特別区には皆反対です。特別区の制度設計について議論しているのは、賛成している維新の皆さんだけであり、議論が深まらないのはある意味当然です。このような状況では、何回やっても同じことです。無駄な議論は早々にやめて、すぐにでも採決を行い、法定協議会での議論を終わらせるべきです。」

 

 相変わらずの「採決とって、はよ、協議会を閉めろ」ってところですか。時間あるのにさっさと質疑を終わってるし。何しに来てるんだろう、自民党の議員さん方は。

 で、四番目は公明の辻委員です。財政調整について色々仰ってるんですが、まあわからんでもない点もあるんだけど、基本的には堂々巡りの理論づくりになってるので維新はこれを壊す理屈を持たないといけないなぁと感じています。その後に公明の委員さん、共産党と続きますがこれといったところもないので割愛します。その後に事務局から国との調整について報告がありました。内容としては臨在債、地下鉄関係での交付金特別区になっても今まで通りやるよっていう内容ですね。

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以上で協議会については終わります。

 

以下、個人的に財政及び財政調整の説明について思う事。

 

個人的には単純に大阪市民にとっての府民税とは何か?を整理することなんじゃないかと思います。数字で言えば幾らの額を大阪市民は府民税として支払い、それがいくら大阪市役所の予算に還流しているのか?というところを整理するべきなんじゃないかと。これは個人ではできないんで、組織のある所にして欲しいとこなんですけどね。思いっきり乱暴な理屈を書けば下のようになるかな。ただ法人も含めて考えないといけないので、はっきり言って意味のある話でもないという事を前置きしつつ、ちょっと書きます。

大阪市:個人市・府民税の計算例 (給与所得者の場合) (…>市税について>個人市民税)

 上のは大阪市のページで「平成30年度分個人市・府民税の計算概要」になります。43歳で四人家族で大阪市民税・府民税がいくらになるかの計算をしたものです。

 

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  結果として上のようになります。大阪市民税88,200円。府民税22900円。総額が11.11万円ですね。この時の割合は

市民税:府民税=8.82/11.11:2.29/11.11=79.39%:20.61%

になります。

 で、現状の財政調整案での特別区と府の割合は以下。

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財政調整で 特別区:府=79%:21%

 この数字だけ見たら大阪市民が支払っている府民税分がそのまま府に行くだけなんだから、盗った盗られたの話ではないでしょってなるわけです。大阪市の府がやっている仕事分の予算が府に行くわけですから、そこがイコールなら何も問題はない。

 

 で、まあ自分で書いててなんですけど、この数字自体は意味がない。あくまでモデルの数字だけですので。個人・法人も含めた税全額や特別区に直接入る分の税収もあります。府民税としては警察は府の予算で運営されてますし、大阪市がしてない事業も府にはある。そういった諸々全てを勘案して大阪市民にとって府民税がどのような金額になっており、それがいくら大阪市の財源として移されているのかとかそこらへんも含めて丸っとした数字を出してほしいんですよね。単純に一言で言えば、

大阪市民が払う府民税と府に移管する事業総額のお得度は?

って所です。そこがイーブンになっていれば何も問題はないわけで、そこら辺を整理して説明できる数字・理屈をきっちり出すのが一番説得力があると思います。今はお金の出の方の数字、決算額からの説明になっています。要するに府がやるべき事業での決算額を集めたら21%は府に行かないとやれないよね、って所です。でもこれってどこまで行ってもどんぶり勘定からの説明であり、府の出が増えれば(決算額が増えれば)財政調整の際に特別区への入りが悪くなるという理屈に対抗するのは難しいんですよね。規律のある財政とか言ってても堂々巡りになる。単純に言えば特別区設置後に太田さんが再び知事になったらどうするんだ!?って所ですね。そこではなくて入りの方、税収の方で説明できないのかなぁと。それが一番版綺麗な説明だと思うんだけど。やっぱり難しいのかなぁ。

 

最後に関係なくもないけどの話。

大阪府/大阪府・大阪市税務事務連携協議会

上のような連携協議会が大阪府大阪市にはあります。目的は

大阪府大阪市は、効率的な税務事務運営、住民サービスの向上、適正・公平な賦課徴収を図ることを目的として、大阪府大阪市税務事務連携協議会を設置しました。今後、以下の事項について検討していきます。

(1) 大阪府大阪市の税務事務の連携に関する事項
(2) 地方税の適正な賦課徴収の確保に必要な事項」

って所ですね。設置されたのが平成24年7月10日だから、橋下大阪市長・松井知事体制になってから設置されたんですね。こういうの一つとってもやっぱり府市のねじれがあったって所ではあるんでしょう。これの第9回(平成29年7月3日開催)の議事録から以下を引用して今回は終わります。いろいろな部署でこういう話が出てるんだろうなぁ。

第9回大阪府・大阪市税務事務連携協議会議事概要

(6)その他
大阪府
先日の大阪府議会・大阪市議会で大都市制度(特別区設置)協議会の設置議案について、可決されたことから、今後、総合区も含めた特別区の議論が始まることとなる。
先日も、副首都推進局から事務分担の照会があったところである。税については、前回の協定書では、「大阪府の税源は地方税法に定める道府県税及び都の特例により課するものとされている市町村税に相当する税目(法人市民税、固定資産税、特別土地保有税都市計画税事業所税)とし、特別区の税源は、これらを除く市町村税に相当する税目(個人市民税、市町村たばこ税軽自動車税等)とする」とされていた。
税の賦課徴収については、公平・公正に間違いなく行うことが求められるため、現在、大阪市で賦課徴収等されている税目が仮に大阪府に移管されたとしても、当面は、大阪市で実務を担当されている職員の力また税のシステムの活用させていただかないと、到底、事務処理を行うことはできないと考えている。
さらに、単に税目が移管されるということだけでなく、それに伴う様々な課題が想定される。様々な課題があるということを副首都推進局にも理解してもらいながら、今後、これらの具体的な課題について、大阪府大阪市がお互いに知恵を出し合い、仮に特別区になった場合には円滑に事務処理が行えるよう、協議をお願いしたい。

 

以上で終わります。