粉屋の大阪to考想

大阪都構想否決を受けて、その辺をだらだらと書いてみます。大阪の政治状況も併せて書いていきたいですね。Twitter: KONAYA @PAN_KOYA

大都市制度(特別区設置)協議会 第3回概要 ~特別区(素案)~

大都市制度(特別区設置)協議会(以下協議会)の第1回(平成29年6月27日)から最終回(は、まだですけども)までの各回の議事録及び資料を纏めていきたいと思います。

 今回は3回目(平成29年9月29日)、「副首都・大阪にふさわしい大都市制度≪特別区(素案)≫について」になります。 

大阪府/第3回大都市制度(特別区設置)協議会

注:ここでは便宜上、特別区移行後の大阪府大阪都として表記します。

 

 ① 区割り

 

 第2回では総合区の素案の説明。第3回では特別区の素案の説明を協議会の事務局がして終わりって感じでした。まあええけど。で、内容ですが特別区の区割りを6区案、4区案でそれぞれ二通り作って計四案って感じですね。

 区割り 〜試案A(4区A案)

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 区割り 〜試案B(4区B案)

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 区割り 〜試案C(6区C案)

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 区割り 〜試案D(6区D案)

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 上の四案になります。表に纏めると下のような感じですね。

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 前回の五区案の人口は62.8万人、34.3万人、58.3万人、69.3万人、41.5万人でした。今回の区割りとしては5区案否決を受けて、集約した4区案、分散した6区案って感じなのかな。個人的にはこの辺の区分けは行政効率と地域経済の一体性を考えて作ってくれればいいと考えています。

 区名の方でなんか昨日、報道で出ましたが、さすがに「東西区」はない。時期的に早い・遅いで言えば早いと思うし。正直、区名問題は住民が決めるというスタイルにしないと住民投票単体だけで考えた場合、デメリットしかない。方法論から再考して欲しいです。

 

② 事務分担

 で、次は大阪府及び特別区における事務分担です。

大阪府/第6回大阪府・大阪市特別区設置協議会について

 上は前回の協議会の第6回の資料になります。ここの「資料4 大阪における大都市制度の制度設計(パッケージ案)【試案3(5区 北区・中央区分離) 」を比較し、前回と今回の試案の対比をしたいと思います。(前回・今回共にそれぞれの試案の数は共通です。当たり前だけど)この二つの資料の事務分担の項の事務数を表にしたものが下のものになります。

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 表の前三つは現状の大阪府・市の事務数でその合計になっています。新たな広域~は大阪都の事務数。特別区の事務数は「各特別区で実施」「水平連携で実施(特別区共同で行う事務)」の合計です。区役所の支所~は各特別区内に設置される現行政区役所を支所としてそこで行う事務になり、各特別区で実施の数に含まれた数字になります。終了する事務は都移行に伴い、大阪市の事務で終了する事務数。検討中のものはどこが担うか検討中ってことですね。

  で、この表を見ると前回と今回で比べて、大阪府・市の事務数が4294事務から4587に300近く増えてます。大阪府は整理されていますが、大阪市は大幅に事務が増えてます。今までの大阪市は大雑把に事務を分けていたのを住民により近い基礎行政部分で事務を増やしてるんでしょう。終了する事務も224→97に大幅に減ってます。大阪市の行政が効率化されていってる証左です。

 府から特別区に動く事務数は前回が21事務。今回は9事務。大阪府の事務数が前回と比べて減ってるのも併せて考えると、前回住民投票からニアイズベターの原則に従い、府から市へ事務の移譲が行われ、それぞれの役割を整理してるんでしょうね。 大阪府大阪市から承継する事務は前回は253事務、今回は410事務です。これが本来、大阪府がするべき事務を大阪市政令指定都市として担っている広域行政の部分になります。

 数字を見ると特別区での水平連携の事務数が増えてます。この辺が今回の都構想バージョンアップ部分の一つになるのかな。また支所の事務数も増えています。支所=現大阪市行政区ですから、より住民に近い部分に仕事を下ろしてるということですね。この辺は総合区での検討も織り交ぜてるのかな。ではより詳しく事務分担を見ていき、バージョンアップ部分を見たいと思います。「(参考) 新たな⼤都市制度における特別区・⼤阪府の権限イメージ」を前回・今回で比較してみて、変わっている点を列挙していきます。

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画像は今回のものです。ここの各項目について前回と今回の変化を纏めていきます。

・「こども、福祉」

 「認定こども園(幼保連携型以外)の認定」が今回、府から特別区へ権限が移っています。「母子福祉資金・寡婦福祉資金の貸付け」は前回は特別区でしたが、今回は大阪都の事務とされています。

・「健康・保健」

特定毒物の製造許可」は前回は都道府県権限でしたが、今回は政令指定都市権限になってます。権限自体は今回も大阪都が持つようになっており、これは前回と変わりません。「動物取扱業の登録」は前回は大阪都の権限になっていましたが、今回は特別区の権限になっています。

・「教 育」

都道府県権限の「私立学校、市町村立高等学校の設置認可」から私立幼稚園を外して、「私立幼稚園の設置認可」を特別区の権限と今回はしていますね。大阪都は「私立幼稚園を除く私立学校、市町村立高等学校の設置認可」に今回はなります。「博物館の設置登録」は前回は大阪都都道府県権限)で、今回は政令指定都市権限になっており、これはそのまま特別区権限としてますね。

・「環 境」

これに関しては、前回と今回で権限が都道府県・政令指定都市のどちらにあるかは変わってますが(法律の変更なんでしょうけど)大阪都特別区の権限に違いはありません。

・「まちづくり、都市基盤整備」

 「開発審査会」「都市計画(用途地域等)」の権限を大阪都の事務としています。都市計画(地区計画等)は特別区権限にしています。都市計画の権限を用途地域と地区計画に分けて、用途地域大阪都が担当し、地区計画は特別区が担当するということですね。この辺も前回と変わりありません。

・「住民生活、消防・防災等」

これに関しては前回と今回で変更はありません。

 

③ 職員数

 

 次に職員の比較を前回と今回でしてみます。比較資料は以下。

前回:2.職員体制(案)(資料4 大阪における大都市制度の制度設計(パッケージ案)【試案3(5区 北区・中央区分離)】

今回:資料2-4 特別区素案(各論)3.組織体制

 

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 大阪市から特別区に移る人数は前回より増えてますね。逆に大阪市から大阪都に移る人数は減ってます。事務数の削減と同時に仕事の効率化ができてるってことなのかな。また大阪府から特別区に移る人数は減ってます。一部事務組合の人数は減ってます。というか半減してます。一般廃棄物、下水道、保育所の人数が減っているのは、公立保育所の民間委託・ごみ収集業務の民間委託・ごみ処理業務の一部事務組合が進んでるって事ですね。

 

③ 財産・債務の承継

 

 次に大阪市の財産・債務の承継についてみたいと思います。

3.財産・債務の承継(案)(前回)

資料2-5 特別区素案(各論)4.財産・債務(今回)

 

前回 一般会計・政令等会計の財産

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今回 一般会計・政令等会計の財産

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これに関しては大きな動きとしては地方債権が減ってるなぁってとこですね。

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 財産は前回に比べて今回は2兆円増えてますが、主な理由としては今回は工作物が含まれているためです。前回の合計には工作物(橋りょう、門、塀、表示板等)は、不動産の一部であるが台帳が未整備のため、金額・件数等に含まれていませんでした。今回は算入しているので増えています。H28.3.31時点での大阪市公有財産台帳データから取っているようです。今回、新しく算入された工作物の項目は  2兆7,375億円(181,744件)になります。膨大な額ですが、作った当時の価格でカウントしてるようですね。看板1個20万円で作ったのなら20万円でカウントしているってことです。まあ工作物とされているのは換金可能な、一般で言う資産ではありません。しかし維新以前になる平松市政以前は、この辺を放置して財産には含めてなかったわけです。維新以降、大阪市政はきっちり仕事をしてるなぁと思います。

 

 これらの財産や債務は基本的に事務分担に基づき、それぞれ承継されます。その承継ルールも変化はないようです。バス・地下鉄の民営化の目標年度が前回はH27年だったのが今回はH30年になってるぐらいかな。「(バス・地下鉄の)新会社の株式は、株式の承継ルールに沿って特別区に承継」ってのは味わい深いですね。今は大阪市が100%持つ予定ですけども。ややこしいものは権利関係を複雑にするのが基本です。関電株もこれで切り離せるわけですし。吉村さんは腹が黒いw

 

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 偶発債務の方ですがこの4年間で着実に減らしていってますね。債務の承継関連も特に変化はないようです。

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上が前回、下が今回の財産・債務の承継のイメージ図になります。変わっている点としては、債務負担行為が大阪都特別区で増えてるのと、大阪府に承継される地方債残高が減っている点でしょうか。

 債務負担行為について書いておきます。債務負担行為とは地方自治法に定められたものです。

 ●地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)
(債務負担行為)
第二百十四条 歳出予算の金額、継続費の総額又は繰越明許費の金額の範囲内におけるものを除くほか、普通地方公共団体が債務を負担する行為をするには、予算で債務負担行為として定めておかなければならない。

 これだけだとなんだかよくわからないものですが、お役所の資料によると

「債務負担行為」とは、歳出予算の金額、継続費の総額又は繰越明許費の金額に含まれているものを除き、将来にわたる債務を負担する行為を指す。債務負担行為は、必ずしも次年度以降に限らず現年度であっても、歳出予算等に含まれているもの以外に債務を負担する場合も含まれる。また、債務負担行為として予算で定めた案件については、義務費として歳入歳出予算に計上されることとなる。
地方自治法第214条は、以前においては「予算外義務負担」と称されていたものを、昭和38年の改正で債務負担行為として予算で定めることとされたものである。このように債務負担行為を予算で定めることとしたのは、普通地方公共団体が債務を負担する行為は、支出義務の負担を伴うものであり、それは、歳出予算の支出によって履行されるものであること、さらに債務を負担する行為に関し議会がこれを審議する場合においても、現実の歳入歳出予算と将来の財政負担とを併せて審議することとした方が便宜であること、債務負担行為を予算の内容に加えて一覧できることとすることにより、住民や議会の議員その他の関係者の理解に資すると考えられたこと等によるものである。

(「債務負担行為」について - 上尾市

 さらによくわからない・・・。まあ平たく書くと以下。

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債務負担行為とは。複雑な用語の意味と注意点をわかりやすく解説 - 節税・公的制度 - みんなのお金ドットコム | お金のコトをもっと身近に)

 一言で纏めると債務負担行為というのは数年にわたる事業の予算枠を先取りしておこうというのものです。債務(借金)が増えるとかそういうものではありません。今回、債務負担行為が増えているのは数年にわたる事業が増えているからかな。現行の大阪市政が特別区になっても住民サービス・事業は継続して行われていく、ということを保証するものの一つになりますね。

 

④ 財政調整

 

 では次に特別区間における財政調整について比較をしてみたいと思います。

 4.財政調整(案)(前回)

 資料2-6 特別区素案(各論)5.財政調整(今回)

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前回

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今回

前回と今回の表を纏めると以下になります。

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 特別区全体の一般財源額の前回から今回での変化は6350億円→6783億円。大阪都大阪市から移転する一般財源のそれは合計が2318億円→2054億円ですね。大阪都特別区の財源の配分割合は前回は大阪都24%、特別区76%でしたが、今回は大阪都21.6%、特別区78.4%になっています。この辺は大阪都特別区の事務数の増減とかもあるのかな。どちらにしても今回は特別区により配分される形になってますね。

 これらの一般財源分の特別区の分配をどうするかがここでの課題になります。前回も今回も現⾏法上の「都区財政調整制度」(東京都で使われている)の仕組みを適⽤することになります。目的としては「⼤阪市が現在実施している住⺠サービスを適切に提供できるよう、特別区と⼤阪府の事務分担に応じた財源配分ルールを構築。特別区間の税源や⾏政需要の偏在による収⽀不均衡を是正する制度を設計」することになります。

 

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 で、実際にどう配分するのかですが、上の絵は今回の資料から持って来ています。前回のものよりわかりやすいので、今回のものだけ載せてますが内容は変わってません。特別移行後は大阪都特別区大阪府特別区協議会(仮称)を作って、そこで財政調整などを話し合う。将来的には特別区のみで共同機関を作ってそこで特別区が主体的に協議を行っていく形に移行するという形ですね。

 個人的にはこの大阪府特別区協議会(仮称)で、特別区間での政策策定の場を持たす機能を付加できないかと考えています。それぞれの特別区での独自政策もありますが、興津する部分もありますから、そういった部分での水平連携を取れる場にできないかと思ってます。そういった共通の政策・事務のコスト削減にもなるでしょうし。また、この大阪府特別区協議会(仮称)の規約に財政調整のこの協議会からどこかの区が脱退した場合の罰則規定を入れれないかとも思ってます。まあ、規約自体や制度自体に抜けれないようにはしてあると思うのですが、決定的にある特別区が抜けた場合は大阪府が承継する大阪市の債務をその抜ける特別区1区で引き受けなければならない、としたらいいのではないかと思います。前回の不安要素として特別区の財政調整がうまく機能するのかというものがありました。そこら辺を説明するにも1区が暴走して財政調整の場から抜けるのなら、大阪市の債務を1区で引き受けなければならない。それはその特別区財政破綻を意味します。そんなことはできないわけですから、必ずこの協議会で財政調整の椅子に座らなければならないことを強制します。そういった感じでの説明で、デマ対策や不安を覚える人にも説明しやすくなるのではないかと考えています。

 

⑤ まとめ

 

 まとめですが、個人的には前回と比べて今回は、事務配分、財源共に特別区に多く割り振ってるようにとらえています。事務数、その予算配分、人員などからそれが見えてきます。維新としては今後、それらバージョンアップした点をどれだけ強調できるかが住民投票の勝因の一つにかかってくるんではないかと考えています。

 

以上です。