粉屋の大阪to考想

大阪都構想否決を受けて、その辺をだらだらと書いてみます。大阪の政治状況も併せて書いていきたいですね。Twitter: KONAYA @PAN_KOYA

日本維新の会:目指せ法案100本提出 その27 原発再稼働責任法案① (原子力損害の賠償に関する法律及び原子力損害賠償・廃炉等支援機構法の改正)

o-ishin.jp

 日本維新の会が秋の臨時国会で100本の法案を提出します。これらの疑問に思った事やこれはいい、と思う点を書いていきます。基本的に維新の資料を見ただけで書くので、勘違いもあろうかと思います。その点、ご指摘頂ければ幸いです。 

 

第27回目は原発再稼働責任法案①(原子力損害の賠償に関する法律及び原子力損害賠償・廃炉等支援機構法の改正)です。

 

  今回の維新100本法案の第三段では、原発関連で五つの法案を維新は提出しています。5つの案を一言で纏めると以下のような感じです。

 

原発再稼働責任法案①(原子力損害の賠償に関する法律及び原子力損害賠償・廃炉等支援機構法の改正)

  国と事業者の賠償責任の範囲の再設定

原発再稼働責任法案②(原子力災害対策特別措置法の改正)

  原子力災害が起こった時の地域に設置される協議会を法定で位置付ける

原発再稼働責任法案③(発電用原子炉施設の使用の開始又は再開に係る特定都道府県の同意に関する法律案〔新規立法〕)

  原発の再開には都道府県知事の同意を必要とする

原発再稼働責任法案④(電気事業法等の改正)

  原発再稼働の際の政府の政策判断と責任の明確化

原発再稼働責任法案⑤(特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律の改正)

  最終処分場の義務化

 

 以上の5つになります。ここでは、最初の①原子力損害の賠償に関する法律及び原子力損害賠償・廃炉等支援機構法の改正を取り扱います。

 日本の原子力事故において、その損害に関する法律は3つあります。福島の事故(以下事故)以前からあったのが、 原子力損害の賠償に関する法律(以降原賠法)、 原子力損害賠償補償契約に関する法律(以降補償契約法)。そして福島の事故の三か月後にできたのが、原子力損害賠償支援機構法(後に原子力損害賠償・廃炉等支援機構法に改正。以降支援機構法)です。事故以前は現場違法と補償契約法の二つでした。これらで国の責任範囲額はたったの1200億円でした。まあこれでも世界で3番目の高さだったんですけど。あの事故のレベルの被害は想定したものでは全くなかったという事です。補償契約法は原子力事業者と国との間の補償における契約の法です。そして3つめの支援機構法により、原子力損害賠償・廃炉等支援機構が設立され、福島の事故の損害賠償・廃炉のスキームを担うことになりました。

 では今回の維新の改正案を見ていきたいと思いますが、私はこの改正案の方向性は高く支持するものの、その内容からこれに反対ではなく、否定をします。否定するのはなぜかというと、この改正案は原発の再稼働について認めない内容だからです。まず、今回のことを書くに当たり、私の原発に対する態度を明確にしておきます。私は原発の再稼働には賛成です。なぜ賛成かというと、再稼働をしない限り、日本経済は死ぬからです。私は原発には反対でした。(今もですが)反対する理由として、あの事故のようなシビアアクシデント(過酷事故)が起きた場合、どうしょうもないからです。その中でも特に思うのは原状復帰が困難な点です。ここを担保されているのであれば、原発もその危険性は置いて、悪くはないとは思うのです。しかし事故が起きた時にいくら金を入れても復帰できない。少なくとも現状の技術ではそうです。例えばコンビナートが吹き飛ぶようなシビアアクシデントが起き、大阪の沿岸が全て吹き飛んだとしても30年あれば、復旧できます。しかし原発の事故はそうではありません。よって反対の立場なのですが、いきなり原発のすべて停止をする、または、停止し続けるのは日本経済の死を意味します。もう政治判断をする時期を過ぎています。この後は最後の纏めに書きますが政治判断がいるんですよ。原発を使い続けるか、廃止をするのか。

 

 今回の維新案は以下のようなものです。

現行の原子力賠償制度の枠組みは、誰が、どこまで責任を負い、その負担をどのような形で国民に転嫁するのか分かりづらいことから、これを明確化・透明化する必要がある。
2 これに当たっては、原子力損害賠償について原子力事業者の有限責任を認めるのが国際的な趨勢であること等を踏まえるものとする。

 

 背景として上のようになります。日本における原賠法の特徴は原発事業者(東電・関電など原発を持つ電力事業者等)に対して、無過失責任主義無限責任を課しています。まず無過失責任主義とは何かというと、その原因に依らず、全ての責任は原発事業者にあるという事になります。日本の損害補償は過失責任主義です。例えば車で、対人事故を起こせば、歩行者と車でその過失割合を判断します。車が10:0で悪ければ、車側がその全ての補償をし、逆なら歩行者側。5:5なら等分に過失があると判断します。無過失責任主義の場合、車に乗る以上、あらゆる事故による補償はその車に載る人間が負うことを意味します。例え歩行者に責任があっても、事故を起こせば車側がその全ての責任を負うことになります。原発で言えば、原発事故を事業者が起こせば、その過失を算定することなく、事業者にその全ての責任があり、補償を行うというものです。これは被害者が原発事故に対して、その過失を立証することが難しいためです。一般人(保険会社などにしても)が原発事故の過失責任を追及することなんてできませんからね。よって事業者は原発事故があれば過失があったものとみなされます。無限責任はそのままで、その原発事故による補償は事業者が全て負うというものです。事業者に無限責任を負わし、国が有限責任の制度を持つのは世界でも少なく、日本のほかにはドイツとスイスのみです。

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一般社団法人 日本原子力産業協会 » 【47】諸外国の原賠制度の特徴(3)

他国は、事業者には有限責任を認め、それ以上については国が無限責任、ないし一定額の負担(政府の配分にり決定など)を負っています。これは原発事故が起きた際に、今回の福島事故のように1企業がその補償を背負うことはできない為です。維新の改正案ではこれを変えようというものですね。この方向性は支持をします。問題はその内容です。

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 維新はここで事業者に対して有限責任を認め、その有限責任の額を5兆円としています。今の原賠法では事業者は、1200億円(但し核燃料の加工・運搬・貯蔵等の場合には少額賠償措置が認められている)の賠償措置が義務付けられており、賠償措置は原子力損害賠償責任保険及び原子力損害賠償補償契約もしくは供託により行うことになっています。これは世界でも三番目の高さですが、維新はこれを5兆円に引き上げようという事です。私はこれに対して反対ではなく、否定します。これの意味することは原発の再稼働を認めないという事です。5兆円なんて額は民間の1企業では背負えない額です。それが東電であろうが、関電だろうが同じです。無理です。東電は事故の後、民間の銀行から2兆円の緊急融資を貰っていますが、あれも実質的な政府保証を付けたから民間は融資したんです。5兆円という遊び金を用意するなんてトヨタでもできません。第一、この5兆円は一体どういう形で集めるのか?という点もさっぱりわかりません。保険なんて微々たる額です。基金、供託の類になるんでしょうけど、5兆円なんて額の供託・基金を作ることなんて、いくら巨大な東電を始めとした電気会社すべてがそろっても不可能です。それならもう原発事業者は原発から撤退します。それに合わせて、原発の建設費の未償還分や再稼働に向けた新規制基準に合わすための投資などすべて政府にぶつけてきますよ。何を考えて5兆円という金額を設定したのか理解が出来ません。補償総額が7兆円だから5兆円にしたとか言ったら、もう維新には政権担当能力はない、永遠の野党でいいと断じますよ。本気で腹を立ててますからね、これ。維新というのは現実的に可能な政策を追求する政党なんです。受け狙いの政策は要らないんですよ。

 維新の資料でアメリカの原子力損害賠償責任額1兆4千億円になっています。私の持つ資料では、内訳は第一次賠償措置の責任保険は3億7500万ドル、第二次損害賠償措置の事業者間相互扶助制度は原子炉1基あたり1億1190万ドル、原子力事業者の責任額は125億9448万ドルに制限がされています。第二次損害賠償措置は、一つの原子炉あたり最大1億1190万ドルの遡及保険料とその5%に相当する争訟費用の104基分を合計した122億1948万ドルです。日本の該当する原発数は48基。どうやったって民間の賠償責任額の上限は58億$。1ドル=110円計算でも6400億円です。倍としても1兆円。ここが限度です、現実的に。なんで5兆円なんて額を提示できるのか、理解が出来ません。

 今回の維新の改正案では補償契約法は変えてません。だから電気事業者の原発における補償額は1200億円を維持する考えなのかもしれません。だったら事故が起きた時に原発事業者は5兆円近い負債をその時点で負います。そしたらどうなるか?今回の福島事故後に東電会社更生法を適用しようとしたみたいに逃げますよ。そしたら被害者救済なんて不可能じゃないですか。それをさせないために政府は2兆円を民間から緊急融資をさせ、支援機構法を作って原子力損害賠償・廃炉等支援機構を作ったんじゃないですか。そういった流れを国会議員なら理解してるだろうに、なぜ5兆円なんて額を提示できるのか本当に理解が出来ません。

 

 この原賠法における問題は、事業者の賠償責任を定めた第3,4条と国の措置(国の賠償責任)を定めた第16条です。事業者の賠償責任を無限とし、国の責任を有限としたことがそもそもの間違いなんです。この法律が施行されたのは1961年です。この法律を制定するにあたり、有識者の会議では事業者の責任を有限とし、国の責任を無限にするべきという答申をしています。しかし時の政府はそれを取らなかった。時代背景として原発を導入するにあたり、国の責任を無限にすると「原発は危険だ。国も事故を想定している」になり、風当たりが強くなりすぎて導入が出来ない懸念があったからです。そして結局、その辺は将来の課題として先送りになり、法案は事業者は無限責任、国は有限責任になりました。企業側が無限で責任を負える=100%の安全という意味の分からん理屈ですけど、これで当時も今も押し通しています。この法案は10年ごとに見直しの改正がありましたが、その責任に関する改正は都度、見送られ、補償額の引き上げのみをするような改正(50億→1500億(1200億+300億)で、その時々の政府はお茶を濁してきたんです。だから維新がその問題の部分を改正するという姿勢は熱烈に支持をします。しかし今回の改正内容は余りにお粗末です。4条での事業者の改正部分にしても4条に項を追加して、単に5兆円の負担を事業者に負えにしかなっていません。こんなものは無意味です。そして第16条の国の措置に関しても追加した4条2項に関することを追加しただけで抜本的な改正に踏み込んでいません。

 この原賠法での問題はまず民間の公的な責任範囲を有限にすることです。そして国の責任を無限にすることです。

 

 (国の措置)
第十六条  政府は、原子力損害が生じた場合において、原子力事業者(外国原子力船に係る原子力事業者を除く。)が第三条の規定により損害を賠償する責めに任ずべき額が賠償措置額をこえ、かつ、この法律の目的を達成するため必要があると認めるときは、原子力事業者に対し、原子力事業者が損害を賠償するために必要な援助を行なうものとする。
2  前項の援助は、国会の議決により政府に属させられた権限の範囲内において行なうものとする。

 

 この「援助を行う」ではなく、「措置をとる」等に変えるべきです。

(国の責務)
第二条  国は、これまで原子力政策を推進してきたことに伴う社会的な責任を負っていることに鑑み、原子力損害賠償・廃炉等支援機構が前条の目的を達することができるよう、万全の措置を講ずるものとする

 

 結局、原子力損害賠償・廃炉等支援機構法では、国は廃炉に対して万全の措置を取るとしています。この方があるから、ではなく、原賠法自体を変えないといけません。原子力事業者の賠償措置額を超える分については、その全てを国が負担するとすべきです。国がシビアアクシデントに対して無限に責任を負うという方向性を示すべきです。でないと原子力発電なんてやってられないんですから。原子力事故における今回の福島のような事例はもう事故ではなく、災害と捉えるべきです。公が責任を持ってやるしかないんです。シビアアクシデントが起きた際にはどうしょうもないことを理解して、国がその原子力政策を進めてきたんだから。

 この原賠法の最大の問題点は何かというと、福島のような事例を想定してない事なんです。あくまで1企業が賠償を行える事故の範囲しか想定していない。だから法が想定する補償は1200億円+政府の支援で収めれる事故しか想定してないんです。維新にはそこを改正してほしいんです。1200億円を超える事態が起きた場合にどうするか?そここそが維新にしか改正が出来ないところなんですよ。今までの自民も民主もみんな逃げてきたところなんだから。そこを安易に原子力事業者に押し付けても、問題は解決しないんです。勿論、こういう改正は様々な法とぶつかります。1企業に莫大な支援をすることになりますから。だったらそこをうまく回避する改正案を作って欲しいんです。今の支援機構を使った迂回融資みたいな形でもいいし。

 

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  支援機構法の改正に関しても言いたいことが一杯あります。今は国から国債を支援機構に5兆円入れて、いる分だけ国に言ってくれたら、その国債を換金して現金で渡すから、それ使ってなという制度になっています。維新の改正案ではこれを要返済のものにすると言ってますが、じゃあ返せるのかと言ったら返せるわけもありません。根本的におかしいですよ、この維新の改正案は。

 

 原発再稼働男に関して私が思うのは、憲法改正国民投票の前に「原発再稼働する、しない」「長期的に原発廃止する、しない」で国民投票をするべきだと思うんです。その結果、

A:再稼働の場合で廃止するなら時間を決めて順次廃止

B:再稼働でかつ、原発廃止しない、なら福島以前通り。

C]原発再稼働しないな原発廃止

で、はっきりすると思うんです。これこそまず国民投票をするべき問題だと思うんです。この3つのどれを選択してもつらい選択になります。どれを選択しても増税は避けられないし、電気料金も上がるでしょう。原発を稼働・廃止しない場合も巨額の補償金を積み上げることになりますからね。それは電気料金や税に跳ね返ってきます。でもそろそろ、政治的な判断を日本国民はしないといけません。現状のように長期間、原発を止め続けるのはそれだけ日本経済に深刻なダメージを与えます。原発を停止してもそれにかかる経費というのは0ではなく、巨額です。そして機械というのは動かさなければ、動かさないだけその性能と信頼は落ちます。勿論、不断のメンテも事業者はするし、その検査体制も新規制基準以降厳しいものになっているでしょう。でも機械は動かさなければ動かさない期間が長いだけ「悪く」なります。そしてそれを使う人間も知識を失っていきます。長期間の停止をし続けると、現場の人間で実際に原発を動かしたことのある人間の数はどんどん減っていきますから。マニュアルだけでは機械は動かせないし、メンテも行き渡らないんですよ。原発というのは最高度の安全性を追求しているものですから、そういう面は微小ですが、やはりあると思います。もうあと数年で福島からの停止が何年になりますか?もうデッドラインは近いですよ。そういう細かな積み重ねがアクシデントを生むんです。いい加減、原発は動かすか動かさないかを決める時期に来ている、もしくはその時期は過ぎていると思っています。政治的判断を維新こそがするべきです。

 

 <参考>

原子力損害の賠償に関する法律

(目的)
第一条  この法律は、原子炉の運転等により原子力損害が生じた場合における損害賠償に関する基本的制度を定め、もつて被害者の保護を図り、及び原子力事業の健全な発達に資することを目的とする。

原子力損害賠償補償契約に関する法律

 (原子力損害賠償補償契約)
第二条  政府は、原子力事業者を相手方として、原子力事業者の原子力損害の賠償の責任が発生した場合において、責任保険契約その他の原子力損害を賠償するための措置によつてはうめることができない原子力損害を原子力事業者が賠償することにより生ずる損失を政府が補償することを約し、原子力事業者が補償料を納付することを約する契約を締結することができる。

 

原子力損害賠償支援機構法の一部を改正する法律

原子力損害賠償・廃炉等支援機構法

 (目的)
第一条  原子力損害賠償・廃炉等支援機構は、原子力損害の賠償に関する法律 (昭和三十六年法律第百四十七号。以下「賠償法」という。)第三条 の規定により原子力事業者(第三十八条第一項に規定する原子力事業者をいう。以下この条及び第三十七条において同じ。)が賠償の責めに任ずべき額が賠償法第七条第一項 に規定する賠償措置額(第四十一条第一項において単に「賠償措置額」という。)を超える原子力損害(賠償法第二条第二項 に規定する原子力損害をいう。以下同じ。)が生じた場合において、当該原子力事業者が損害を賠償するために必要な資金の交付その他の業務を行うことにより、原子力損害の賠償の迅速かつ適切な実施及び電気の安定供給その他の原子炉の運転等(第三十八条第一項に規定する原子炉の運転等をいう。)に係る事業の円滑な運営の確保を図るとともに、原子力事業者が設置した発電用原子炉施設(核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律 (昭和三十二年法律第百六十六号。以下「原子炉等規制法」という。)第四十三条の三の五第二項第五号 に規定する発電用原子炉施設をいう。以下この条において同じ。)又は実用再処理施設(第三十八条第一項第二号に規定する実用再処理施設をいう。以下この条において同じ。)が原子炉等規制法第六十四条の二第一項 の規定により特定原子力施設として指定された場合において、当該原子力事業者が廃炉等(当該指定に係る発電用原子炉施設に係る実用発電用原子炉(第三十八条第一項第一号に規定する実用発電用原子炉をいう。)の廃止(放射性物質によって汚染された水に係る措置を含む。)又は当該指定に係る実用再処理施設に係る再処理(原子炉等規制法第二条第十項 に規定する再処理をいう。第三十八条第一項第二号において同じ。)の事業の廃止をいう。以下同じ。)を実施するために必要な技術に関する研究及び開発、助言、指導及び勧告その他の業務を行うことにより、廃炉等の適正かつ着実な実施の確保を図り、もって国民生活の安定向上及び国民経済の健全な発展に資することを目的とする。

 

日本の原子力発電の概要(プレスキット)2014年5月27日(一社)日本原子力産業協会政策・コミュニケーション部

 

一般社団法人 日本原子力産業協会 » 原子力損害賠償法

一般社団法人 日本原子力産業協会 » 【33】ドイツの原子力政策と原賠制度

 日本とよく似たドイツの賠償方法。というかドイツの方がえげつない。

 

 ドイツでは第1次SPD緑の党連立政権下で脱原子力の方針がとられ、2002年4月27日に施行された改正原子力法には、

(1)原子力発電所の発電電力量の制限
(2)使用済み燃料再処理の2005年6月までに限定した実施
(3)2005年7月以降の直接処分に備えた中間貯蔵施設の設置
(4)原子力発電所の運転継続に関する連邦政府の保証(今後の運転期間中にわたって連邦政府が安全基準などを一方的に変更し、運転継続を妨害しないという保証)
(5)新規原子力発電所の建設禁止

 が盛り込まれました。

 政府と国内4大電力会社は、原子力発電所の稼動期間を送電開始から32年とした上で、2000年以降の原子力発電電力量を国内合計で約2兆6000億kWhと設定し、各発電所の発電電力量の枠の移転・譲渡を可能とすることを合意し、規定の発電量になった原子力発電所から順次(ただし発電所間で電力量の譲渡が可能)、閉鎖することになっています。

 

 「電力の商業的生産のための原子力利用の秩序正しい終結に関する2002 年 4 月 22 日の法律」(ドイツ)

 http://www.ndl.go.jp/jp/diet/publication/legis/pdf/024407.pdf

  ドイツは福島の事故後、原発を停止をして廃止の方向性を打ち出して、一部界隈で「さすが俺らのドイツ」的称賛を浴びていました。しかしドイツはそもそもで2022年までで全ての商用原発を廃止する方針でした。で、事故後に政府の命令(モラトリアム命令)で原発を止めたものの、財産権の侵害で原子力事業者から裁判を政府に起こされて負けています。1990年代にドイツの4つの原子力事業者と政府は原発廃止で合意をし、それを法制化したのが上の法律です。目的としては「元を取ったら廃止な」ということで、ドイツ的合理主義に溢れていますね。ドイツの原賠法に当たる規定は、日本よりすさまじく、本気で企業側に無限責任を課しています。日本の場合は、異常に強大な天災や動乱(戦争など)は免責をしていますが、ドイツはその場合でも企業側の責任としています。隕石が落ちようがミサイルを打たれようが原発が壊れたら企業の責任です。ルールを守ることこそを至上とする、手段を目的化することに関しては日本より上のドイツ様です。まあ企業側からしたら、そんな国で原発を維持するのは御免蒙るって所で廃止なんでしょうね。

 

我が国の原子力損害賠償制度の概要内閣府原子力委員会)

 

 <参考文献>

原子力損害賠償制度の研究――東京電力福島原発事故からの考察 単行本 – 2013/9/28
遠藤 典子 (著)

1961年制定の「原子力損害の賠償に関する法律(原賠法)」は,未曾有の破局的事故に対して無力だった.本書は3.11以前の損害賠償制度の実体を示し,その不備をどのように乗り越えて現行の損害賠償スキームは短時間に構築されたのか,東京電力はなぜ破綻せず「国有化」されたのか,政策担当者への聞き取りに基づき明らかにする.

 

これが一番わかりやすい資料でした。ネチネチ書いてて私好みです^^

福島原発事故と法政策―震災・原発事故からの復興に向けて 編著者名
高橋 滋 編著

東日本大震災による福島原発事故からの復興に向けて、環境法政策の観点から、原子力損害賠償、放射線物質汚染対策、原子力施設の安全規制・立地選定等の課題について、一橋大学環境法政策講座での研究の成果をまとめたもの。
わかりやすい原子力規制関係の法令の手引き 著//広瀬 研吉

原子力規制関係法令をわかりやすく解説、網羅した手引書
原子力実務に携わる方のための安全規制を中心とした関係法令を網羅し、法律、政令、省令、告示などの関係をわかりやすい表の形で把握できる手引書!

解説 原子力損害賠償支援機構法—原子力損害賠償制度と政府の援助の枠組み 高橋康文 著

福島原発事故独立検証委員会 調査・検証報告書 単行本(ソフトカバー) – 2012/3/12
福島原発事故独立検証委員会 (著)