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粉屋の大阪to考想

大阪都構想否決を受けて、その辺をだらだらと書いてみます。大阪の政治状況も併せて書いていきたいですね。Twitter: KONAYA @PAN_KOYA

日本維新の会:目指せ法案100本提出 その23 介護規制の地方分権化法案 (地域の事情に応じた介護サービス等の 提供体制の整備に関する法律案)

o-ishin.jp

 日本維新の会が秋の臨時国会で100本の法案を提出します。これらの疑問に思った事やこれはいい、と思う点を書いていきます。基本的に維新の資料を見ただけで書くので、勘違いもあろうかと思います。その点、ご指摘頂ければ幸いです。 

 

第23回目は介護規制の地方分権化法案(地域の事情に応じた介護サービス等の 提供体制の整備に関する法律案)です。

 

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日本維新の会:目指せ法案100本提出 その17 保育所設置基準の分権化と保育士資格の多様化を図る法案 【地域の事情に応じた保育サービスの提供体制の整備に関する法律案 〔新規立法〕】 - 粉屋の大阪to考想

 

 法案の構成としては、第17回で書いた「 保育所設置基準の分権化と保育士資格の多様化を図る法案」と同じ形ですね。第17回では保育所設置基準を国が定めた基準に従うのではなく、地方自治体に裁量を持たすものでした。ここでは国が定めた介護規制に自治体が従うのではなく、自治体に裁量を持たすというものです。

 <立法の背景・趣旨>
高齢者・障害者(障害児を含む。)が利用する介護サービス等に係る施設及び事業をめぐる地域の事情は、それぞれ異なるにもかかわらず、現行の制度では、多くの施設及び事業で、その職員配置等に関する基準は、全国一律とされている。
→ 条例で、地域の事情に応じた基準を定めることができるようにする必要がある。

 

 全国一律ではなく、その自治体ごとに年齢構成も違いますし、人口も違います。それぞれの自治体に裁量を持たせ、それぞれの地域の実情に合わせた介護政策を自治体がとれるようにするのがこの法案の狙いです。では、維新の狙いについて以下。

 

(法制上の措置)
第三条 政府は、速やかに、次に掲げる事項に関し、法律上、国が定めることとされる基準であって、地方公共団体が条例で基準を定めるに当たり、従い、又は標準とすべきこととされているものについて、参酌すべきものに改めるために必要な法制上の措置を講ずるものとする。
一 介護サービス等の提供を目的とする施設の設備及び運営に関する事項
二 介護サービス等の提供を行う事業の設備及び運営に関する事項
三 前二号の施設及び事業のうちその介護サービス等の費用について介護保険法(平成九年法律第百二十三号)、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成十七年法律第百二十三号)又は児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)による給付の対象とされるものについての設備又は運営に関する事項

 

 政府がこの法案で取るべき法制上の措置。維新がこの法案で変えたい部分になります。国が定めることとされる基準を自治体が参酌して定めれるようにしたいということになります。以下に維新の改正案の一、二、三の狙いについて例を挙げながら見ていきます。

 

1の「介護サービス等の提供を目的とする施設の設備及び運営に関する事項」

 第五節 介護保険施設

 第一款 指定介護老人福祉施設

(指定介護老人福祉施設の指定)
第八十六条  第四十八条第一項第一号の指定は、厚生労働省令で定めるところにより、老人福祉法第二十条の五 に規定する特別養護老人ホームのうち、その入所定員が三十人以上であって都道府県の条例で定める数であるものの開設者の申請があったものについて行う。

 上は介護保険法から「指定介護老人福祉施設の指定」を例にします。厚生労働省の省令で定めるのではなく、これを「参酌する」ようにしようということですね。例えば入所定員の条件を現状の30人以上ではなく、20人にしたい自治体は条例で「20人」と定めて運用する事が可能になるのでしょう。これで入所定員が現行の30人から20人に引き下げて、その施設を介護老人福祉施設に指定ができるようになります。要件を緩和したり、逆に40人以上に厳しくしたりと、その自治体の裁量で変えたりすることができるようになるわけです。

 補足しておくと、この条文自体も規制が緩和をされ、改正されたものです。2012年の改正以前は人員基準及び設備・運営、利用定員・入所定員等に関する基準は、厚生労働省令で定められており、条例云々はありませんでした。それを各都道府県条例(地域密着型については市町村条例)に委任することとし、それぞれの項目ごとに厚生労働省令との関係で、「従うべき基準」、「標準」、「参酌」の3つの基準が適用されることになりました。この3つの基準については、「地域の自主性を高めるための法律」(第1次一括法、地方分権一括法)のもとになった「地方分権推進計画」(2009(平成21)年12月15日閣議決定)では次のように説明されています。

 

 すなわち、「従うべき基準」とは、条例の内容を直接的に拘束するものであり、必ず適合しなければならない基準である。「従うべき基準」の場合、当該基準に従う範囲内で地域の実情に応じた内容を定める条例は許容されるものの、異なる内容を定めることは許されないものです。

 

 「標準」とは、法令の「標準」を通常よるべき基準としつつ、合理的理由がある範囲内で、地域の実情に応じて「標準」と異なる内容を定めることが許容されるものである。

 

 「参酌すべき基準」とは、地方自治体が十分参酌した結果としてであれば、地域の実情に応じて、これとは異なる内容を定めることが許容されるものです。

 

 維新はこの最後の「参酌」を基準とするべきという立場であり、現状の「従うべき基準」「標準」と言った法令、政令で定められたものに対する法的基準・実施基準の規制を緩和し、地方分権の流れを一層、加速させることが狙いですね。

 

2の「介護サービス等の提供を行う事業の設備及び運営に関する事項」は、例えば介護保険の現行法だと以下になります。

 第三節 指定地域密着型サービス事業者

(指定地域密着型サービス事業者の指定)
第七十八条の二  第四十二条の二第一項本文の指定は、厚生労働省令で定めるところにより、地域密着型サービス事業を行う者(地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護を行う事業にあっては、老人福祉法第二十条の五 に規定する特別養護老人ホームのうち、その入所定員が二十九人以下であって市町村の条例で定める数であるものの開設者)の申請により、地域密着型サービスの種類及び当該地域密着型サービスの種類に係る地域密着型サービス事業を行う事業所(第七十八条の十三第一項及び第七十八条の十四第一項を除き、以下この節において「事業所」という。)ごとに行い、当該指定をする市町村長がその長である市町村が行う介護保険の被保険者(特定地域密着型サービスに係る指定にあっては、当該市町村の区域内に所在する住所地特例対象施設に入所等をしている住所地特例適用要介護被保険者を含む。)に対する地域密着型介護サービス費及び特例地域密着型介護サービス費の支給について、その効力を有する。
2  市町村長は、第四十二条の二第一項本文の指定をしようとするときは、厚生労働省令で定めるところにより、あらかじめその旨を都道府県知事に届け出なければならない。

 

 この2は事業者の指定をする際の国の基準をそのまま適用するのではなく、自治体の裁量に任せようというとこです。現行では、厚生労働省の省令により介護事業者としての認定基準は定まっています。これを各自治体の地域事情により、緩和しようという事ですね。事業者の類型は国が作る。例えば「指定地域密着型サービス事業者」という仕事の内容の基準・運用の大枠は国が作る。しかしそれに該当する入所定員や事業者指定の基準は定めるのは市町村に任す。という事になるかと思います。

 

最後の3についてはそれぞれの介護施設・サービスの給付に関して自治体に裁量を持たせるという事ですね。

(居宅介護サービス費の支給)
第四十一条  市町村は、要介護認定を受けた被保険者(以下「要介護被保険者」という。)のうち居宅において介護を受けるもの(以下「居宅要介護被保険者」という。)が、都道府県知事が指定する者(以下「指定居宅サービス事業者」という。)から当該指定に係る居宅サービス事業を行う事業所により行われる居宅サービス(以下「指定居宅サービス」という。)を受けたときは、当該居宅要介護被保険者に対し、当該指定居宅サービスに要した費用(特定福祉用具の購入に要した費用を除き、通所介護、通所リハビリテーション、短期入所生活介護、短期入所療養介護及び特定施設入居者生活介護に要した費用については、食事の提供に要する費用、滞在に要する費用その他の日常生活に要する費用として厚生労働省令で定める費用を除く。以下この条において同じ。)について、居宅介護サービス費を支給する。ただし、当該居宅要介護被保険者が、第三十七条第一項の規定による指定を受けている場合において、当該指定に係る種類以外の居宅サービスを受けたときは、この限りでない。
2  居宅介護サービス費は、厚生労働省令で定めるところにより、市町村が必要と認める場合に限り、支給するものとする。
3  指定居宅サービスを受けようとする居宅要介護被保険者は、厚生労働省令で定めるところにより、自己の選定する指定居宅サービス事業者について、被保険者証を提示して、当該指定居宅サービスを受けるものとする。

 

 こういう省令で定める部分を市町村に裁量を与え、柔軟な施策を展開できるようにしようという事です。1で事業内容、2で事業者の指定、3で介護における介護費の支給方法についてそれぞれ緩和しようという事ですね。

 

 実際、厚生労働省がこの問題に対してどう考えているかを、以下の部会での検討から引用します。

www.mhlw.go.jp

(第64回社会保障審議会介護保険部会資料、平成28年9月23日)

 この回の審議会の議題は、1 保険者等による地域分析と対応、2 介護保険総合データベースの活用、3 サービス供給への関与のあり方、4 ケアマネジメントのあり方でした。ここでは1,3に注目をしてみたいと思います。

 この資料では、 今後、75歳以上人口は、都市部では急速に増加し、もともと高齢者人口の多い地方でも緩やかに増加することが予想される。2025年、さらにはいわゆる「団塊ジュニア世代」が65歳以上となる2040年に向けて、大都市やその周辺都市、地方都市、中山間地域等、地域によって高齢化の状況及びそれに伴う介護需要も異なってくることが想定され、地域実情に合わせた地域包括ケアシステムを深化させていくことが必要。 また、各市町村が介護保険事業を担う中で、要介護認定率や一人当たり介護費用、施設サービスと居宅サービスの割合等について、地域差が存在している状況にある。介護保険制度には、保険者間の差を抑制し適正化を図る仕組み(全国一律の基準による要介護認定、居宅サービスにおける区分支給限度額等)や、差を必然的に生じさせる要素(高齢化の状況、都市部、山間部といった地理的条件、独居等の家族構成等の地域の実情が、サービス提供に反映)があり、多角的な地域分析が必要

となっています。要するに介護保険の運用には地域格差があり、それぞに問題が違う。それには多角的な地域分析が必要という事ですね。

 

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 審議会の論点としては、上のような感じです。余計なお世話で、市町村に任せろっていうのが維新の立場ですね。勿論、国によるガイドラインの策定や制度設計は必要です。制度の大きな枠組みは必要ですから。しかしその運用の基準と方法に関しては、市町村・自治体に委任してしまうのがいいと思うんですよね。地方自治体が国の下部組織として動くのではなく、各自治体が自律的にその制度運用を企画・実施できるようにしようという事です。この審議会ではそれらを「法律上明確化」として国の関与を謳っていますが、今回の維新の改正案のようにそれぞれの自治体が条例で明確をする方が、よりきめ細かく、地域実情に対応が取れると私は考えています。

 

 3のサービス供給ですが、これは市町村が被保険者に対してサービスを供給している現状について審議をしています。

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「在宅サービスの供給量(事業所数)は拡大しているが、一方で、訪問介護通所介護供給量が多いと判断している市町村もある状況にある。」ここですね。こういう問題に対して適宜、市町村がその供給をコントロールをすれば、無駄な介護保険支出も減ると思います。今は市町村も国が決めた法的基準や運用基準におんぶに抱っこしてる状態で、いわば人ごとなんですよね。国から与えられた義務的経費として自治体は会計処理をしています。自治体の財布が痛むわけでもなく、国の金という感覚だからその使い方に対しても疑問は持っても、まあいいか、で流しているような状況です。謂わば田品の金というとこですね。こういう状況を変えたいというのが維新の考え方だと私は捉えています。

 

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 この審議会でも維新の求める法案の形のようなことを考えており、現行法でも自治体に裁量を持たせる方向性で話は進んではいます。市町村協議制を作ったりとかね。でも上にあるように実効性は伴っていません。実効性を伴っていない理由を色々書いています。勿論、それらは正しくもあるんでしょうけど、国が枠をがっちり決めているために自治体が判断をそこに任せてしまっているからです。市町村の意見で、供給過多には当たらず、とか書いてあります。でもこれは国の枠を基準に考えれば、供給過多にはなっていないだけで、純粋に第三者から見れば供給過多なんですよ。国の枠ではなく、この供給過多になっている市町村が実情(需要)に合わせて供給を縮小すればいいだけです。そうすればその分の支出も減りますからね。

 

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論点としては上のような感じなんですが、まあ色々書いておられます。でもこの辺はその都道府県と市町村に任せて、自治体間での協議をできる枠組みだけを国は整備をして、後は任してしまうのが一番効率がいいですよ。だって実際にそのサービスを展開しているのは市町村ですから。地域事情も一番精通しているのは市町村です。ガイドラインや協議の仕組みとかは国が作ればいいんですが、運用は市町村に任してしまえばいいんです。

 

 介護保険の被保険者、実際にサービスを受ける老人たちも市町村によりその年齢分布はまちまちです。老人と言っても60、70、80歳代、それ以上で受ける介護サービスも違います。介護保険と言っても一つのサービスではなく、その選択できるサービスの選択肢は多いですからね。ある年齢代は介護サービスAの分布が多いでしょうし、逆にCは少ないなどがあるでしょう。また地域による格差もあるでしょう。そういった地域事情を勘案せずに、全国一律にやる、総量規制を掛けるのは逆に経費の増大を生み、介護保険料の高騰の原因にもなると思っています。また地方分権のより一層の拡充も望めます。よって、私はこの維新の法案に賛成をします。

 

 

<参考>

介護保険制度の概要 |厚生労働省

●地域の事情に応じた介護サービス等の提供体制の整備に関する法律案(第192回国会)

介護保険法

障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律

地方分権改革に関する閣議決定等 : 地方分権改革 - 内閣府

 

介護保険制度の12年・その主要な改革と変容(下)石橋敏郎、今任啓治;熊本大学

 介護福祉サービスの大部分が、拘束力の働く「従うべき基準」とされてしまうと、地方公共団体が地域の実情に合わせて、独自の基準ややり方を工夫していくという地方分権推進の趣旨(地方の自主性・自立性の推進)にそぐわないことになってしまう。事実、すべての地方公共団体で、2013(平成25)年3月までに条例化が完了すると思われるが、条例のほとんどがこれまでの厚生労働省令の内容をそのまま条例化したに過ぎないものになってしまっている。現に、地域の独自性をなんとか加えようとして、サービス評価事業の推進とか地産地消の奨励とか住民への啓発活動の強化とか、およそ介護サービスの基準内容とは程遠いような事項を条例のなかに盛り込んで、地域の独自性を何とか出そうと苦労する地方公共団体の姿があちこちで見受けられる。また、「標準」という基準は、合理的理由があれば、これとは異なる内容を条例で定めることが許容されるものであるが、「合理的理由」とはどういうものを指すのか、例えば、当該地方公共団体の財源が厳しいというような理由も(ケースワーカーの数は「標準」であるが、実際には守られていないのもこの理由であろうか。)「合理的理由」にあたるのかどうか、この点についてもいまだに定かではない。

 

地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律 ~第3次一括法~(平成25年6月14日法律44号

2009年9月の政権交代を経て、11月17日の閣議決定で、内閣総理大臣を議長とし、関係閣僚及び有識者で構成する「地域主権戦略会議」が設置され、地方分権改革推進法に基づく「地方分権改革推進計画」は、12月14日の地域主権戦略会議の初会合の議を経て、翌12月15日に閣議決定した。同推進計画の策定過程では、地方分権改革推進委員会(以下、「委員会」という)第3次勧告(2009年10月7日)で具体的に講ずべき措置として示された義務付け・枠付けを緩和すべき889条項のうち、地方側からの提言等に係る事項(70条項)を中心とした106条項の見直しが盛り込まれた(以下、「第1次見直し」という)。同推進計画の内容を法案化した「地域主権改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律案」は174国会(2010年通常国会)に提出され、177国会(2011年通常国会)において成立した(国会での法律名修正により「地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律」(平成23年5月2日法律第37号。以下「第1次一括法」という。)として成立)。

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よくわかる介護保険のしくみ―2012年度改正に対応 単行本(ソフトカバー) – 2012/7/26 牛越 博文 (著)

地域主権改革一括法の解説 単行本 – 2011/12/27 小泉 祐一郎 (著)