日本維新の会が秋の臨時国会で100本の法案を提出します。これらの疑問に思った事やこれはいい、と思う点を書いていきます。基本的に維新の資料を見ただけで書くので、勘違いもあろうかと思います。その点、ご指摘頂ければ幸いです。
第21回目は地方公営企業民営化要件緩和法案(地方自治法の一部を改正する法律案)です。
この法案は、地方自治体における公益企業を民営化する際の要件を緩和するためのものです。具体的に書くと、現在では議会において出席議員の3分の2以上の者の同意が必要とされる条例で定める特に重要な公の施設の廃止について、公の施設であった施設
が地方公共団体の行う企業の民営化等により当該地方公共団体以外の者によって引き続き住民の利用に供されることとなるものと議会において認めるときを除くものとする。とのことです。平たく言うと、重要な公の施設を廃止(民営化)する際に、その施設が民営化後も住民が民営化以前と同じようにつかるのなら、議会の過半数の可決で廃止(民営化)出来るようにするというものですね。
例としては大阪市で地下鉄民営化の話が出ていますが、これは2/3以上の賛成が必要になっています。大阪市営地下鉄は「交通事業の設置等に関する条例」という条例により設置されているためです。この改正案が可決されれば、1/2以上の賛成で民営化ができるようになるという事です。
具体的な改正内容としては、以下のようになります。
この「条例で定める重要な公の施設」で、大阪市でいえば地下鉄が定められています。これは以下のように変えます。
「企業の民営化等により当該普通地方公共団体以外の者によって引き続き住民の利用に供されることとなるものと議会において認めるとき」は1/2以上でいいという事になります。地下鉄が民営化後、大阪市民以外の利用になる場合はダメよってことですね。地下鉄が民営化し、その運営会社が「大阪市民が乗ることは罷りならん」とか言い出すような事はダメってことです。まあそんな事したら倒産しちゃいますが^^; 市民の財産だった施設だから、引き続き市民が利用できるようなら良しってことです。例えば市営プールを民営化して、会員制になるような場合はこの改正案の対象にはならないって事でしょうね。その為の条件を議会が確認をした上で、「重要な公の施設」から外すということです。
私はこの条例はいいと思います。2/3の賛成が必要な「重要な公の施設」という法律自体を改正するのではなく、その項目を外すための条件を設定しようというのがこの改正案になります。議会が民営化後も市民の利用が過不足なく行えると判断すれば民営化できる。市営だろうが民営だろうが、利用者にとっては変わりありませんからね。
<参考文献>
「公の施設」の定義ですが、大阪市の見解としては次のようになると思われます。
2-1 「公の施設」とは
地方自治法上の定義(第244条第1項)
「住民の福祉を増進する目的をもってその利用に供するための施設」
地方自治法上詳細な定義はされていないが、解釈上は次の5要件を満たすものとされている
○住民の利用に供するためのもの
⇒ 試験研究機関や庁舎などは「公の施設」ではない
○当該地方公共団体の住民の利用に供するためのもの
⇒ 当該地方公共団体の住民が利用できないような物品陳列所などは「公の施設」ではない
○住民の福祉を増進する目的をもって設けるもの
⇒ 競輪場、留置所などは「公の施設」でない
○地方公共団体が設けるもの
○施設であること
●公の施設の例
*文化会館、博物館、美術館、図書館、体育館、プール、公園、競技場、病院、特別養護老人ホーム、保育園、学校、公営住宅、道路、河川、墓地、上水道・下水道、電車・バス等の事業関連施設
●公の施設は必ずしも設置者(地方公共団体)の所有になければならないと言うことはない。
*私的所有にかかる財産であっても当該公の施設に対して地方公共団体が何らかの権原(賃借権、使用貸借権等)を有しておれば良いと解釈される。
●普通地方公共団体は、正当な理由がない限り、住民が公の施設を利用することを拒んだり、住民が利用することについて不当な差別的取扱いをしてはならない。(地方自治法第244条)
・地下鉄民営化で現在継続審議中の議案です。以下、道義案の関連法案及び条例
議 案 第 103 号
大阪市高速鉄道事業及び中量軌道事業の引継ぎに関する基本方針の策定について
http://www.city.osaka.lg.jp/contents/wdu260/result/pdf/2016gian103.pdf
大阪市高速鉄道事業及び中量軌道事業の引継ぎに関する基本方針の策定を地方自治
法第96条第 2 項の規定による議会の議決すべき事件とする条例(平成27年大阪市条例
第104号)第 2 条の規定に基づき、本市が出資を行い設立した株式会社(以下「新設
会社」という。)に鉄道事業及び軌道事業の引継ぎをするための基本方針を次のとお
り定める。
大阪市高速鉄道事業及び中量軌道事業の引継ぎに関する基本方針の策定を地方自治法第96条第2項の規定による議会の議決すべき事件とする条例
平成27年10月26日 条例第104号
大阪市高速鉄道事業及び中量軌道事業の引継ぎに関する基本方針の策定を地方自治法第96条第2項の規定による議会の議決すべき事件とする条例を公布する。
大阪市高速鉄道事業及び中量軌道事業の引継ぎに関する基本方針の策定を地方自治法第96条第2項の規定による議会の議決すべき事件とする条例
第1条 本市は、大阪市交通事業の設置等に関する条例(昭和41年大阪市条例第60号)第2条の高速鉄道事業及び中量軌道事業を廃止するときは、本市が出資を行い設立した株式会社に当該廃止に係る鉄道事業及び軌道事業を引き継ぐものとする。
第2条 市長は、前条に規定する場合には、同条の規定による引継ぎをするための基本方針を策定するものとする。
第3条 市長は、前条の規定により基本方針を策定しようとするときは、あらかじめ議会の議決を経なければならない。
附 則
この条例は、公布の日から施行する。
第九十六条 普通地方公共団体の議会は、次に掲げる事件を議決しなければならない。
○2 前項に定めるものを除くほか、普通地方公共団体は、条例で普通地方公共団体に関する事件(法定受託事務に係るものにあつては、国の安全に関することその他の事由により議会の議決すべきものとすることが適当でないものとして政令で定めるものを除く。)につき議会の議決すべきものを定めることができる。
(公の施設の設置、管理及び廃止)
第二百四十四条の二 普通地方公共団体は、法律又はこれに基づく政令に特別の定めがあるものを除くほか、公の施設の設置及びその管理に関する事項は、条例でこれを定めなければならない。
2 普通地方公共団体は、条例で定める重要な公の施設のうち条例で定める特に重要なものについて、これを廃止し、又は条例で定める長期かつ独占的な利用をさせようとするときは、議会において出席議員の三分の二以上の者の同意を得なければならない。
(設置)
第2条 本市域及びその周辺地域にわたり交通の便益を提供するため、高速鉄道事業、自動車運送事業及び中量軌道事業(以下「交通事業」という。)を設置する。