粉屋の大阪to考想

大阪都構想否決を受けて、その辺をだらだらと書いてみます。大阪の政治状況も併せて書いていきたいですね。Twitter: KONAYA @PAN_KOYA

日本維新の会:目指せ法案100本提出 その10 国家公務員総人件費 2割削減法案 (国家公務員の人件費の総額の削減の推進に関する法律案(新規立法))

o-ishin.jp

 日本維新の会が秋の臨時国会で100本の法案を提出します。これらの疑問に思った事やこれはいい、と思う点を書いていきます。基本的に維新の資料を見ただけで書くので、勘違いもあろうかと思います。その点、ご指摘頂ければ幸いです。

 

 第10回目は国家公務員総人件費2割削減法案(国家公務員の人件費の総額の削減の推進に関する法律案(新規立法)です。維新の身を切る改革の第2段階ですね。そしてこの法案は単純に公務員給料を下げるという目的だけではありません。

  目的は「国家公務員の総人件費を削減するために必要となる施策について、国の責務、基本方針等を定めることにより、これを総合的に推進する」ということですね。人件費を削減をするために国が、それを推進する部署を立ち上げて、国の義務として公務員の総人件費を削れという事です。 

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 方針としては5年以内に2割の削減を行うというものです。先行としてはまず給与平均を10%を下げる事。ここでの維新の目的はいくつかあると思うのですが、箇条書きにします。

 ① 平成26年度当初比で2割以上削減する

  これは「平成26年度」というのがミソですね。

www.sankei.com

 国家公務員の給与と賞与を引き上げる改正給与法が1月20日の参院本会議で可決、成立した。一般職の月給を平均0.36%アップし、夏と冬を合わせたボーナス(期末・勤勉手当)は0.1ヵ月分増やして月給4.2ヵ月分となる。

給与とボーナスの引き上げは2014年度に続いて2年連続。2年連続の引き上げは24年ぶりだという。1991年度以来なので、まさにバブル期以来である。

gendai.ismedia.jp

 

 2016/1/20の参議院本会議で公務員の給与アップが可決をされました。今年もまた上げるそうです。平成26年度に合すという事はこれらを無効にするという事ですね。直近までの給与アップを無しにして、平成26年時点での給与額の10%削減したものにするという事です。だから実質10%以上、削ることになります。まず、これが第一の狙いです。

 

② 人事院勧告方式の見直し

 

 常時使用する従業員の数が1人以上の民間の事業者の賃金実態に基づき、国の財政状況を踏まえるようにする

 

 今の人事院勧告の給与査定は、民間の給与の企業規模50人以上かつ事業所を実地調査事業所規模50人以の企業を基準にしています。維新の改正案ではこれを「一人以上」にしようということになっています。この人事院の調査対象企業規模については、民間企業従業員の給与をより広く把握し国家公務員の給与に反映させる観点から、平成18年にそれまでの100人以上から50人以上に引き下げられています。これを更に進めようというものですね。従業員が一人以上の企業の賃金実態に基づく=日本国の全企業の平均給与の額を基準にしろということです。それで大体10%近くに平均は下がる感じみたいですね。こういう基準になったら、人事院の勧告は今のように「上げろ」ではなく「下げろ」になるでしょう。下げるのかな?w

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給与勧告の仕組み人事院

 人事院での給与額算定の流れは上の図のようになっています。「人事院では、国家公務員と民間の4月分の給与(月例給)を調査した上で、精密に比較し、得られた較差を埋めることを基本に勧告を行っています。」という事らしいです。平たく言うと50人以上の事業所からピックアップした給与・ボーナスと、公務員給与を比較して給料を決めましょうってことです。

<月例給> 公務と民間の4月分の給与額を比較
○民間給与との較差 708円 0.17%〔行政職(一)…現行給与 410,984円 平均年齢43.6歳〕
〔俸給 448円 本府省業務調整手当 206円 はね返り分(注) 54円〕
(注)俸給等の改定に伴い諸手当の額が増減する分
<ボーナス> 昨年8月から本年7月までの直近1年間の民間の支給実績(支給割合)と公務の年間の支給月数を比較
○民 間 の 支 給 割 合 4.32月(公務の支給月数 4.20月)

平成28年 給与勧告の骨子

上のが平成28年度の人事院の勧告から引用した民間と公務員の給与比較になります。民間と比較して低い分を上げろってことになります。実際の上げ幅が以下。

月例給、ボーナスともに引上げ
① 民間給与との較差(0.17%)を埋めるため、俸給表の水準を引き上げるとともに、
給与制度の総合的見直しにおける本府省業務調整手当の手当額を引上げ
② ボーナスを引上げ(0.1月分)、民間の支給状況等を踏まえ勤勉手当に配分

 

 まあモデルを作るのはいいんですが、民間と公務員が等価というのがなんとも。こういうのを書くと「給与を下げると優秀な人間が公務員にならない」とかいう人もいますが、本来、優秀な人材は民間で働くべきです。逆にいうと、公務員給与が高いために公務員に優秀な人間が集まってしまう。民間に行くべき優秀な人材を奪っているとも言えます。また優秀な人材を確保するために必要なら、その部署だけ給与を上げればいいんです。経営・企画・技術などはそうですが、他の部署は特段に優秀でなくてもいいでしょう。元々、公務員は薄給が代名詞だったんだから、そこの基準に戻せばいいだけです。だからこそ、その時々の政治家は公務員には様々な手当てや天下りを設けて、そこを補填しようという事だったんですけど。しかし、ここまで給与を上げられるとおいおいってなるのが、ここ20年以上の流れですね。また給与を下げるとデフレに戻るという意見もありますが、別段、公務員の給与にそれを頼る必要はないんです。給与を下げた分の予算を縮小するわけでもないんだから、デフレに戻る訳ではないんだし。給与削減分は別の予算になって投下されるんですから、国の支出総額は変わりません。だから経済の縮小にはならないでしょう。見当違いの指摘だと思います。

 

③ 人員削減


  国の出先機関(地方支分部局)の統合・廃止・合理化により、施行後3年度以内に2万人以上を、施行後5年度以内に3.5万人以上を、純減させるものとすること。その他の方法により、施行後5年度以内に、更に2万人以上を、純減させるものとすること。

 

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 国家公務員58.3万人のうち2万+3.5万+2万=7.5万人を純減ということは12.9%の人員を減らすという事ですね。これと先に上げた給料10%削減で、20%の削減を目指すという事でしょう。

 これは維新の言う道州制への一歩だと思われます。人員削減とありますが、実質的な狙いは国の管轄する権限を地方に移譲することでしょう。人員削減をしてもその仕事がなくなるわけではありませんから。施行後5年以内に3.5万人以上ですから、その分の仕事の権限・予算と人員は地方に下ろさないといけません。だから国家公務員を(3.5+2)万人分、地方公務員にしろ、それに係る予算と権限を地方に移譲しろというのが目的ではないかと思っています。「その他の方法により」以降の施工後5年度以内に、さらに2万人以上を純減というのが実質的な人員削減幅になるとみています。

 

④ 総人件費削減推進本部 

 

行政機関の職員の総人件費の削減を総合的・集中的に推進するため、内閣に、総人件費
削減推進本部を置く。

 

 これもいいですね。官僚任せにするのではなく、本部を内閣に置き、内閣主導にするという点を評価します。なんでもそうですけど、金を握る=人事権ですから、より一層の官邸の権限強化に繋がります。私は官僚は敵とは思っていない人間ですが、それでも官僚にこういう仕事を任せてしまうと、骨抜きにされちゃいますからね。

 

 個人的に思うのは・・・。スゲー反対が出るだろうなw 2割削減の根拠とかは結構に言われるでしょう。だから単純な削減ではなく、こういう展開をするんだっていう説明が維新の方からどれだけ出るか、出せるかですね。

 

 <参考>

人事院勧告(国家公務員の給与)

 人事院の給与勧告は、労働基本権制約の代償措置として、職員に対し、社会一般の情勢に適応した適正な給与を確保する機能を有するものであり、国家公務員の給与水準を民間企業従業員の給与水準と均衡させること(民間準拠)を基本に勧告を行っています。
 人事院は、国家公務員の給与等勤務条件の決定について、法定すべき基本的事項は国会及び内閣に対する勧告により、具体的基準は法律の委任に基づく人事院規則の制定・改廃により、その責務を適切に果たすよう努めています。

 

平成 27 年分民間給与実態統計調査-調査結果報告-
  (平成 28 年9月 国税庁 長官官房 企画課)