粉屋の大阪to考想

大阪都構想否決を受けて、その辺をだらだらと書いてみます。大阪の政治状況も併せて書いていきたいですね。Twitter: KONAYA @PAN_KOYA

小池都知事の豊洲盛土会見への”好意的”解釈

2016年9月10日(土曜)に小池都知事が豊洲市場の盛り土について会見をしました。これについて今回は書いてみたいと思います。

www.sankei.com

 

 

 都によると、平成20年7月、専門家会議が汚染対策を提言。その中では汚染対策として、敷地内の表土約2メートルを削って汚染を除去した上で、きれいな土を搬入し、4・5メートル分の盛り土を行うことが盛り込まれていた。だが都はその後に建物設計を実施した際、独自の判断で盛り土を行わないことを決めていた。

 都は、建物床のコンクリートの厚さが35~45センチあり、土壌汚染対策に関する法律の基準は満たしているとしているが、豊洲市場の環境問題が物議を醸す中で議会の質問や報道機関の取材に対して変更を説明することはなかった。

 

f:id:pankoya:20160912004357p:plain

豊洲新市場予定地における土壌汚染対策等に関する専門家会議 報告書(要旨)

 豊洲市場では、工事前の地面の高さ(旧地盤面)から2M掘削して、汚染土を取り除き、さらに旧地盤面から2.5Mの盛土をしています。盛土をする理由は汚染された地下水から揮発したベンゼン、シアン化合物等がガスとして隙間や亀裂から建物内に侵入していくことが懸念されます。その為に盛り土をして分厚いコンクリートで蓋をしているわけです。問題としては、この盛土されている部分(2+2.5=4.5M)に建物のピット(地下構造物)などがあるので、おかしいのでは?という内容です。気化したガスを妨げるものがないのでは?ということですね。

 この会見への批判で安全面や施工面がありますが、私はこれらの批判は適切ではないと思っています。小池都知事が問題視している点はそこじゃないと考えています。

 

blogos.com

 そういった批判記事が上のものですが、見当違いだと捉えています。盛土の部分に建造物があるのを問題視しているわけではありません、小池知事は。それが決定されるまでの行政手続きに問題があるのでは?という問題提起が今回の会見です。ただ小池知事が問題視してる点について、私も疑義があります。

 

小池知事「知事の部屋」 / 記者会見(平成28年9月10日)|東京都

豊洲市場の建物の下の土壌の安全性について

www.youtube.com

 この問題につきまして、深いところにある、汚染土壌がある部分については、その土壌を除去して、きれいな土壌で埋め戻しているわけでございますけれども、しかし、ほかのところが、このところと同じように、全てが盛土されていると、入れ替えた上で盛土がされているというのは、この様々な情報と言いましょうか、現状においては、それは正しくないということでありまして、ここで訂正をまずさせていただきたいと思います。ただ、汚染土壌を除去して、その上に厚めのコンクリートを敷いているということで、建物の地下の土壌汚染対策の安全性についてはいかがかという問題があるわけです。つまり、空間になっているけれども、そこに厚いコンクリートを敷いて蓋をしたということによって、それで安全性が一体確保されているかどうかということなのですが、ずっとこの間、土壌汚染などについて、平田先生という専門の先生をヘッドにする、そのような会議がずっと開かれてきて、その議事録などは皆さんもご覧になることができます。ところが、その平田先生が率いる専門家会議というのは、ここの部分を蓋をした、コンクリートでもって蓋をしたことについて、それで安全性が確保できているのかどうかということを確認する前に、そもそも専門家会議を終えてしまっていて、解散してしまったというような、これは、私は行政的な問題であろうと、このように思っております。ということで、オーソライズされていないというのが今日の一番の大きな問題であろうと、このように思っております。よって、ではどうするかでありますけれども、この件については、別途改めて専門家の方々に判断をしていただくと。これはもともと、この土壌問題について、長い間専門家の会議を開いていただいていた平田先生にも、もう一度改めてお伺いをしなければなりませんし、平田先生にしても、全然違う前提でもっての、このところに蓋をしているという状況については、たぶん、御存じないのではないかと思うのです。よって、そういった状況の中で、この専門家の会議として、これで安全なのかどうかというのをもう一度聞いてみないといけないということだと、私はそのように理解したところでございます。

 

 長いですが、小池都知事会見での今回の問題点がこの点になると思います。要約すると、「盛土した部分に地下構造があり、そこに厚いコンクリートを敷いて蓋をしたことにより、安全性が確保されているのかという点を有識者による専門会議での見解を得ていない。安全性についてオーソライズされていない行政手続きに問題がある」というのが小池都知事の今回の件での問題点だと捉えています。

 

 都によると、平成20年7月、専門家会議が汚染対策を提言。その中では汚染対策として、敷地内の表土約2メートルを削って汚染を除去した上で、きれいな土を搬入し、4・5メートル分の盛り土を行うことが盛り込まれていた。だが都はその後に建物設計を実施した際、独自の判断で盛り土を行わないことを決めていた。

 

 産経の報道からですが、この「独自の判断で盛土を行わないことを決めていた」って部分が行政として問題なんでしょう。ただ、これがそうなのか?という点で私は疑問なんです。この「独自の判断」っていう報道はどうも独り歩きしてるように思えるんです。

 会見にある「専門会議」ですが、東京都のHPのリンクは以下になります。

 

豊洲新市場予定地における土壌汚染対策等に関する専門家会議|東京都中央卸売市場

 

 これの報告書を見ていたんですが、次のような見解になっています。

豊洲新市場予定地における土壌汚染対策等に関する専門家会議 報告書(要旨)

3.3 対策の考え方
実施すべき土壌汚染対策として表 1 に示す内容を提案する。この対策内容は表 2 に示す
地下水管理が行われていることを前提に検討したものであり、この内容で対策を行った場合の土壌処理を行う範囲の概念図は図 1 に示すとおりである。
このような内容で土壌汚染対策が実施されれば、汚染土壌の直接曝露による人の健康リ
スクおよび生鮮食料品への影響は生じず、地下水の飲用や地下水が地上に露出することによる人の健康リスクおよび生鮮食料品への影響が生じる可能性はないと考えられる。

 

 見解としては、表1、表2にあるような内容で土壌対策が実施されれば、問題ないというのが専門会議の回答ですね。その表が以下。

f:id:pankoya:20160912011134p:plain

 ここで※にあるように「新市場予定地は、その大部分が建物建設および道路・駐車場用地であり、厚さ 25~40cm のコンクリート床または厚さ 30~40cm のアスファルトで覆われる計画である。」とあるように、「厚いコンクリート」で蓋をすることが前提なんですよね。9-3には以下の記述もあります。

 

④上記①~③の対策を行った後、その上部に 2.5m の盛土および堅固なコンクリート
(厚さ 25~40cm)による被覆を施すことが計画されており、汚染土壌の直接曝露に
よる人の健康リスクはより確実に防止される。

 

だから、今回の小池都知事の問題視してる点がどうもわからないんです。専門会議ではコンクリートで蓋をすることが前提になっていますから、施工自体は専門会議の答申に従ってやってるんですよ。また、報道にある「都の独自判断により盛土を行わなかった」というのは、地下構造物がある建築物予定地には盛土をしなかったという事だと思います。ワザワザ盛土をして、建物を建てる際にまた掘り返してというのは、どう考えても金の無駄遣いですし。だからおかしなことはないんじゃないかと思います。まさか全くしなかったという事は無いと思いますし。だったら別の意味で大問題ですけど。盛土が地下構造物で無かったとしても、地下水から気化したガスは、地下構造物の周りの盛土を通って上昇するわけで、その間に問題のないレベルになるでしょうし。というかそもそも問題の無いレベルになるように施工もしていますし、大気測定でも問題は出てないということですしね。といいつつ、なんか青果棟のピットの床はコンクリでふさがずに剥きだしっていう報道も出てきましたけど。その辺はちょっとキナ臭いです。豊洲新市場は過剰に盛土やコンクリート厚を取っていますが、元々、風評被害を避けるための処置なのに、未だにこういうのが出るのは勘弁な話ですね。

news.yahoo.co.jp

 

 青果棟は出てきましたけど、以上のように専門会議の見解通り、豊洲市場の対策は取られているというのが私の基本的な観方です。駄目な部分が出たのなら直せばいいだけですし。だから今回の会見で小池都知事が問題視している、行政手続き上の問題という前提自体に私は疑義を持ちます。単純にピットはどんな建物を作っても出来ますからね。基礎部分はどんな建物でもあるわけですし。だからこの専門会議を再度招集し、さらに別のプロジェクトチームもセカンドオピニオンみたいな形で招集するという事ですけど、本当に必要なのかな? まあ会見の質疑応答で、埋めなかった盛土代が消えている云々というのもあり、その辺も調査するという回答を小池さんはされているので、その辺の建設費の洗い出しがこの問題の本丸なのかもしれませんけど。

 

ルパンを追っててとんでもない物を見つけてしまった!

どうしよう?

 

というのはカリオストロの城の銭形警部ですが、案外、こっちを狙ってるのかもしれませんね。「豊洲市場の安全性を調べていたら、こんな資料を見つけてしまった!どうしよう?」的な。だから無理筋のある安全性、でも文句の出にくい搦め手から攻めてるのでしょう。ある意味、今回の盛土問題は「別件逮捕」なのかもしれません。「豊洲市場建設費不正追及チーム」とかだったら都議会(の一部)も硬化しそうですし。

 

小池知事「知事の部屋」 / 記者会見(平成28年9月9日)|東京都

都政改革本部「内部統制プロジェクトチーム」の設置について

【知事】それから、次が「内部統制プロジェクトチーム」、この設置についてお伝えをさせていただきます。都政改革本部は9月1日からスタートいたしておりますけれども、本日付けで都政改革本部内に新たに内部統制プロジェクトチームを設置いたします。これは何度も繰り返させていただいておりますが、「都民ファースト」、「情報公開」、「税金の有効活用(ワイズ・スペンディング)」でありますけれども、この三つの原則に従いまして、法令の順守が、コンプライアンスです、より適正で効率的な行政運営を行うということから、内部統制の仕組みを全庁的に強化していこうというものであります。そこで、管理部門の都庁の各局とそれから、外部から招聘いたしております特別顧問によりますチームを設置いたしまして、都庁におけるこれからの内部統制の在り方について検討を行うという役割でございます。
そして、具体的な内容でございますけれども、まず各局で、これまでの制度を「自律改革」の対象といたしまして総点検をする。次に、他の自治体の例なども手がかりとしてプロジェクトチームで都庁の内部統制の改善策を検討いたします。チェックをして改善策を検討し、そしてまた、改革本部の方で議論をしていただくこととなります。当面、具体的には、契約や入札の在り方、出資法人の管理の在り方などについて検討をさせていただきます。また、海外出張費など、前知事のもとで幾つか問題となった点なども、これらについてもここで検証させていただくことといたします。
それから、プロジェクトチームのメンバーでございますけれども、これは庁内関係各局、そして特別顧問によります合同チームとさせていただきます。各局からは、複数名を指名いたしまして、10月をめどにそれぞれ参会をしていただくこととなります。
特別顧問については、もうこれまでもご紹介をさせていただいておりますけれども、7名の方々に参加していただくことといたしております。詳細については、総務局にお尋ねいただければと存じます。

 

 都制改革本部に「内部統制プロジェクトチーム」を設置して、東京都の金の問題についてはチェックしていくという体制はもう作られていますが、それの豊洲専門チームになるのかな。

 

 私は小池さんの考えは「豊洲市場」は都議会対策、「オリンピック」は国対策だと思っています。もしくは両方。豊洲新市場とオリンピック会場は環状道路建設で繋がっていますから、将棋の両利きのような関係にもありますし。それぞれの猪瀬さんの言う「ボス」の首に鈴をつける、ないし動きを抑える為のものです。「私の考えに反対するならするでいいけど、これはどうします?」って所なんじゃないなのかと。だったら面白いなーという期待でもありますけどw  あと都庁にも鈴をつけるのも目的かな。

  

小池知事「知事の部屋」 / 記者会見(平成28年8月31日)|東京都

築地市場豊洲新市場への移転に関して

今、申し上げましたような幾つかの大きな課題、これらを総合的に勘案いたしました。立ち止まって考えてまいりました。そして、その結果は、冒頭に申し上げましたように、11月7日の築地市場豊洲移転は延期をして、次の措置を講じていきたいと思います。そして、この作業、具体的には、「市場問題プロジェクトチーム」という組織を立ち上げることといたしておりまして、その作業には、小島特別顧問を中心として、建築の専門家、土壌の専門家、公営企業経営の専門家などなどのご専門の皆様方によるプロジェクトチームを設けていきたいと思っております。そして、今、申し上げたような様々な、都民の皆様方が抱いておられる不安、不信、こういったものにちゃんと答えられる、若しくはここがおかしいといったようなことを精査していただきたいと思っております。
その中身なのですけれども、まず第1に、土壌汚染の安全性を少なくとも今年11月18日以降に採水された地下水の検査を行って、2年間の地下水モニタリングの結果を確認してから判断をするということであります。
ちなみに、ディベロッパーの方々に聞きますと、「大体もうこれだけやっていれば安全性は確認できているのだ、だからいいのです」という話は聞きますけれども、それはディベロッパーの都合であって、私たち都民の安全性に対する信頼性が、その2年間を待たずしてそれでオッケーを出してしまうということについてはいかがなものかと思います。
昨日も三菱自動車が、記者会見を行っておられます。大気汚染の問題もこれまでもありました。いろいろな計算の話もありました。やはりそういったことを企業がやるわけですから、そのことを私は2年間であるならば、これはきっちりやるべきであるというのがまず1点。ですから、プロジェクトチームでこの点についてチェックをしていただきたい。
2番目ですけれども、豊洲新市場の施設でございますけれども、実際に事業される業者の方々の声を率直に聞いて、可能な限り安全で働きやすいものにいたしてまいりたいと思います。言ってみれば、「仕立てた服に体を合わせる」というのではなくて、実際にそこの市場で働かれる方々が「体に合った服を仕立てる」ということが大切なわけで、どのような改善策が必要なのかといったことも同時にプロジェクトチームでチェックをしていただきたいと思っております。
3番目に豊洲新市場に関する経済的な観点からの事業の継続性、予算の適正性、これについても調査をしてまいります。
そして、新たな移転時期でございますけれども、これらの調査の進展を待ち、できる限り速やかに判断をいたします。もちろん私も、先ほどのオリンピック・パラリンピックの話もございました、道路の建設を優先した結果、このように前倒しになったという話も聞きます。ですけれども、それら、こういったことをきちんと精査をした上で、そして時期についての結論は判断していきたいと考えております。
それから、5番目でございますけれども、豊洲新市場に移転される方々、または移転に当たって廃業される方々への支援、特に廃業される方々についてもいろいろと支援もこれまで検討してまいったところでございますけれども。それから、築地の場外市場です、この方々への支援、延期に伴って生じます事柄に対しての相談、これについてもしっかりと検討をしてまいりたいと、こう考えております。

 

 上は8月31日の会見で豊洲への移転延期が決まったときの会見です。

 ① 移転は二年延期 ② 新市場の改善策 ③ 新市場の予算の適正化 ④ 新たな移転時期の「判断」 ⑤ 市場の現場への人々への新たな支援

 纏めるとこんな感じかな。うまいね。①で二年延期だけど、④で含みを持たせている。②と⑤で現場をなだめつつ、③の新市場の金の調査が本命なんでしょう。

 

 今の小池さんは、あちこちに「錘」を付けてバランスを取ろうとしてるのだと思います。公益と私益(小池さんの政治的立場)のバランスが危ういんですけど、有権者としては見てる分には面白いので(ひどいw)、今後の進展、特に議会とオリンピック委員会を通した国との、特に森さんとの折衝は楽しみにしています。

 

以上でこの稿を終わります。