昨日、読んだ本で思い至ったのですが、都構想の第二幕を上げるのは想像以上に難しいのかもしれません。
本書は大阪府で最初の民間出身者の女性課長の視点で書かれた体験記である。府庁で戸惑った特別の論理と橋下知事府政の都市魅力課の仕事を臨場感を持って描いている。
(レビューから)
企業経営者の筆者が、橋下知事の下、様々なプロジェクトをこなしていく・・・その中で橋下知事の人柄も描かれており、楽しい一冊になっています。大阪府庁の様々な問題も上げておられるのですが、私の心に残ったのを一つ上げます。
大阪府庁には遅刻がない
どういうことかというと、遅刻しそうになったら「一時間休」を取る。始業時間から一時間休みなので、遅刻にはならないんですね。しかもこれ、上司の許可は必要なく、個人の判断で取れる。すごいですね~@@ さらにこの休み、一時間単位で休みを取れる。3時間給とかが出来る。なんじゃそりゃ。こういった事がいろいろ書かれてます。また実際に取り組んだプロジェクトや議会での答弁など、役所の実務の体験記として非常にまとまった良書です。文章も非常にうまいので、維新を支持される方は手に取ってみてください。ただ絶版になってるっぽいので図書館になるのかな。私は図書館で借りました。
この本の中で行政訴訟の話が出てきます。筆者はこの課長職に就く際に、行政訴訟に備え、個人賠償保険に入りました。しかし、知事は・・。ここを以下、引用します。
知事職の場合、個人賠償保険に入ることができなかったからです。
この点については、毎日のように家族に対して殺人予告が来ることや、失職するかもしれないことなどは慣れて怖くなくなったという知事も、現実に19億円の請求訴訟を起こされた市長がいたりすると、
「個人で賠償しなくてはいけないというのは、きつい」
と、ポロリと語っていました。
( 中村 あつ子『私と橋下知事との1100日』 (羊泉社、2012)P.139~)
課長職の場合なら、訴訟額数億円レベルを想定してという感じでしょう。だからそういう保険もあるでしょうが、大阪府知事となると数兆円レベルの予算。これに応える保険はないでしょうね。仮にあったとしても保険料が払えるレベルじゃない。
これを読んで思ったんですが、仮に都構想が賛成で可決されたとしましょう。特別区移行の際に何がしか不手際が出た場合、悪くすると行政訴訟の対象になるんですよね。例えば移行時にコンピュータ関連は新システムに移行します。これが全く動かなかった場合が考えられます。こういった可能性はほぼないとは思います。多少、人為的、プログラム上の障害などは出るかもしれませんが致命的なものはないでしょう。しかし、仮に数週間、もしくは復旧の目途も立たない、大阪市の旧システムに戻す以外ないとなった場合。この場合、大阪府、大阪市の役所、そして橋下市長及び松井知事に巨額の行政訴訟が起きるでしょうね。それも数十億から数百億円レベルのものになると思います。また民間からも訴訟が起きるでしょう。許認可の遅延からくる機会損失などの補償etc 数万件以上の訴訟が起きる可能性もあるわけです。こうなったらもう完全に身の破滅です。都構想での効果額もその額を巡っていろいろ取沙汰がありましたが、あれも回収でき無ければ訴訟の対象です。リスクが高すぎるんですよ。実際、住民投票後には住民投票の説明会の支出に対して監査請求が成されました。また大阪市長の出直し選挙も多数の住民監査請求が起こされました。
橋下市長が知事時代、大阪市長と知事のW選挙に出馬する際に松井さんに知事への出馬を要請しました。引き受けたのは橋下市長と松井知事は盟友だからと単純に考えていました。勿論そうなんでしょうけど、言い方は悪いですがある意味、都構想の連帯保証人になったということなのかもしれません。一蓮托生。お二人には頭が下がります。
都構想の第二幕をやるのであればこういったリスクを腹に収める人間が二人必要になります。はっきり言って手を上げる人間はいないと思います。擁護をするわけではありませんが竹山堺市長は、都構想にNoといいました。政治信条もあるでしょうが、これだけのリスクを抱えることについてはやはり二の足を踏みますよ。橋下市長や松井知事は住民投票に行けたことは奇跡と仰ってました。大都市法の可決や住民投票条例の可決など奇跡的な形で住民投票に持っていけたわけですが、真の奇跡は橋下市長と松井知事の両者が並び立ったことですよ。本当にあの住民投票はラストチャンスだったんだなと今、しみじみ思います。
とはいえ日和っても仕方ないので、都構想、広域行政一元化の道を探さないといけません。なんとかしないと。