粉屋の大阪to考想

大阪都構想否決を受けて、その辺をだらだらと書いてみます。大阪の政治状況も併せて書いていきたいですね。Twitter: KONAYA @PAN_KOYA

大阪自民の総合区は中之島一家の強化にしかならない<総合区について考えよう 第一回>

大阪自民の作る総合区は、利権誘導型の従来の自民政治の延長にしかなりません。

言ったきりもなんなので、大阪自民の総合区について考えてみようと思います。

とはいえ、あまりにも資料がない・・・というか、総合区ってほぼ内容がないんですよね。骨格だけ、というより方向性だけ法律で提示されていて、後はそれぞれの政令市が条例で仕事内容は決めてね、そのために緩く法律を作っておいたからという制度です。

 

今回は、以下の4回に分けて書いてみます。

1.大阪自民の総合区案を予想してみる。

 大阪自民の総合区案を勝手に考えてあげようという感じ。まあネガティブになります。

2.大阪市での理想的な総合区案を考える。

 大阪市で総合区を展開するとどういう形がいいのかを自分なりに考えてみる思考テスト。維新が過去に出した総合区に対する考え方を元に作ってみます。

3.大阪都風味で総合区案を考えてみる。

 今回の大阪都構想での大阪の問題点を総合区案でどう解決できるか?を考えてみる。

4.番外編:公明党の総合区案を考える。

 公明党の総合区案を別の角度で見てみる。公明党というのは特殊な党で、今のところ出ている情報は、区割り案と市議の定数削減位だけど、これだけでも公明党の「選挙に対する考え方」は、立証できると思う。数字を出さないといけないから、難しいかもだけど。ところで共産党案は?あ、党内の反対で無いんですか?

 

では、今回は大阪自民の総合区案を予想してみよう。

まず総合区について軽く解説をしてみたい。

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1.行政区と同じく法人格は無し

2.総合区区長は、市長が議会に提案をし、選任される。

3.総合区長は特別職。一般職の今までの区長とは違い、任命以降は簡単には辞めさせることはできない。

4.総合区長の権限は条例により定まる。法的には、総合区長以下の一般職の職員任命権がある。(一応の制限はある)あと、総合区長から市長へ予算意見具申権がある。(予算編成権はない)

 

 ではこれらを元に大阪自民の総合区を予想してみよう。

 総合区長の仕事について整理してみます。まず、総合区長は大阪市長が選任して、それを大阪市会がそれを承認する形です。これだと、大阪市長任命責任が出ます。つまり総合区長が独自政策を行い、それがうまくいかなかったら総合区内に混乱を起こすことが懸念され、それは市長の責任となります。また総合区長が各自で、独自政策を打ち出した場合、現状の大阪市役所の制度では大混乱になることが予想されます。

 総合区には複数の現在の行政区をその行政範囲内に治めることになると思います。その場合、総合区には政策を立案、変更する能力はありません。そういった能力は全て現大阪市役所にあります。現行政区には、大阪市から与えられた政策を実行する実務能力に人数は限定されているためであり、そもそも政策を立案したり、変更したりする能力はありません。現行の大阪市役所をそのままで単に総合区を導入した場合、例えば、政策の説明という業務の一つに絞っても、市長+総合区長×人数 の回数の説明が必要になります。基本的に大阪市役所の人数が今のレベルで市の行政を維持できているのは、大阪市の各区に均質の、まったく同じ住民サービスを行っているから現在の人数でも可能になっています。都構想の時によく出ていた、各区に図書館一つずつ、というやつですね。住民サービスの政策は、全て同質・均質・平等にやっているから、政策は一つ作り、それを全ての区で施行すれば済んでいました。しかし、それぞれの総合区長が、与えられた権限内のものとはいえ、それぞれの総合区で独自政策を打ちだそうとするとどうなるか?現在の大阪市役所では大阪市単体一つ、267万人を対象に考えて済んでいたのが、総合区の数とその権限の数だけの政策を総合区長の意見を取り入れつつ、政策案を出さないといけなくなります。その結果、現行の大阪市役所の人数では政策立案、変更に対して対応ができなくなります。

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 上の図は予算の流れを表していますが、これは政策の流れにそのまま置き換えれます。大阪自民は現在11から12で総合区の数を検討しているそうです。(総合区長の権限、仕事内容も決まってないのになぜ総合区の数を11に設定できるのか?まずそこからして謎ですが)大阪都構想における特別区の場合、5つであれば現在の市役所区の規模でも対応できると大阪市役所は判断しました。これを参考にすれば、政策立案、考える部署の大阪市役所の人数は、11/5~12/5=2.2~2.4倍の人数が最低ライン必要になります。これは、下の図のX局長の部署の人間が増えるということです。これは、総合区長に譲られる権限に対応する現在の大阪市役所の部局の人数が最低2倍程度に増やさないと対応できないことを示しています。また、それぞれの総合区長の直下につく人間もつけないといけないでしょう。それの規模が、総合区の政策立案をする人数をそれぞれ用意するのか?また、単に大阪市と総合区に含まれる各現行政区に対する連絡事務だけに絞っても相応の人数が必要になるでしょう。総合区制度を11~12の総合区長を入れて導入し、かつまともに機能させることを考えた場合、大阪市役所の人数は数百から2000人?程度は増やさないと対応できないと考えられます。これらの総合区導入を計画して実行するのは相当な労力が必要です。今回の都構想を考えた大都市局のように最低数百人規模の官僚集団が年単位で構想を作らないと不可能です。ちなみに大阪自民は総合区案を考えるのに大都市局を使ってはどうか?という橋下市長の意見は蹴りました。よって大阪自民だけで総合区案を作るようです。はっきり言ってこの時点で大阪自民の総合区案の程度が知れます。まあ総合区の方向性も決まってないのに、指示されても官僚側も困るでしょうが。

 次に合区について考えてみます。公明党は合区を提唱していますが、大阪自民は合区については消極的です。大阪自民が消極的な理由は簡単です。選挙区が広くなるからです。選挙区が広がった場合、大阪自民にとってはデメリットしかありません。まず、選挙区が広がることにより、議席を得る為の得票数が上がります。これは選挙費用の高騰に直結します。単純にビラやポスターの枚数でも二区を合区すれば倍になります。またこれより重要なことがあります。以下は現状の大阪市の選挙区です。

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赤色が大阪市議会の選挙区になります。これを見ると選挙区の議員定数が2や3が多いのがわかります。これが合区されれば定数5の選挙区になります。この結果どういうことになるのかというと、議会において過半数を取る政党が現れます。現状、例えば、定数2のところに政党が二人の候補を立てるのは難しいのです。なぜなら支持票を食い合って共倒れになる可能性が出るためです。よって定数二のところには一人しか立てれません。定数3のところでも同じ理由で難しい現状があります。この選挙区の為、大阪市議会では一党が過半数を取るのは非常に難しい環境にあります。定数が5あれば候補を3立てることが容易になり、議会の過半数を取る党が現れます。これを大阪自民は嫌がっているのです。よって、大阪自民案では合区はあり得ません。公明党が合区を提唱しているのはここも絡んでるのですが、それは次回以降に譲ります。

 では、以上の点を踏まえて、大阪自民の総合区案を想像してみましょう。

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これは、総合区長の仕事を図にしたものになります。総合区長の仕事としては、①~③の仕事が想定されます。ここで大阪自民は総合区長に②の権限のみしか与えないと考えます。①③の基礎行政に影響が出る権限を与え、その政策を失敗するとそれは即ち、現市長の失敗となります。またそれらの権限を有効に活用するとすれば、それを行う官僚グループが必要になり、これらは行政コストのアップに直結します。また、大阪市議会議員の各総合区予算やその執行への監査業務も膨大に膨れ上がります。結局、「大阪市役所」に関係する人間にとって、総合区導入は何の意味もありません。仕事を増やすという意味合いしかないのです。しかし、今回の住民投票で、大阪自民は都構想への対案を出して、それを実行しなくてはならない立場にあります。都構想に反対したのだし、現状の大阪市の問題点を認識し、変えないといけないと言ってるのだから当然、その責任があります。しかし、そのために大阪自民は都構想の対案として、現法制上唯一存在する総合区を導入しないと「いけなくなりました」

 よって導入しないといけないのですが、彼らはこの②の「総合区の住民の交流を促進する事務」のみを念頭に導入するでしょう。それはどういうことかというと、総合区長の仕事は「盆踊り」の差配人になるということです。もう少しいえば、総合区におけるイベントプロデューサーですかね?たったそれだけの意味合いしかない総合区を、大阪市民へ対案をしたというポーズをとる為だけに導入するでしょう。

大阪市会議員(自民党)活動外伝:総合区 - livedoor Blog(ブログ)

上は、大阪自民の柳本議員のブログで、総合区について書いた回になります。(突っ込みどころ満載なんだよなぁ、このブログ。この回だけでも一本書けそう)ここで彼は以下に書いてます。

「総合区の活用を契機として、例えば調達事務を複数の行政区で行いハブとなる行政区を総合区として位置付けるということも念頭に置いている。」

5月27日時点において、彼が総合区のメリットとして挙げているのはこの「調達事務」のみです。検討中だから他にメリットを上げれないのかもしれませんが、まず調達事務というのがわかりません。この調達事務が何かというと、単純に現在の行政区でコピー用紙を買うのを二つの区で買えば安くなるんでは?という意味合い位のものでしかありません。もう少し、いいように捉えれば、大阪市役所全体のコピー用紙を買う権限をある総合区に集約して(ハブとして)安く調達するということなのかもしれません。でもそういった調達事務コストの削減はそれこそ、大阪市役所でやればいいのでは?と思います。コピー用紙を例にあげれば、大阪市大阪市役所及び区役所が年間に使うコピー用紙が100万枚とします。それを入札にかけて、一番安い提示のあった納入業者に、市役所・各区役所がそれぞれで発注を掛ければいいんです。各区役所は、大阪市にコピー用紙代を支払い、大阪市役所がまとめて納入業者に支払う。これだけの話でしょう?まあこういったことは現に導入されているかもしれませんが、総合区のメリットとして調達事務をまず、例にするというのが理解できません。普通は、住民サービスに直結した権限を利点にあげるのが普通でしょう?調達事務削減は行政コストの削減にとって重要ではないと言いませんが、住民サービスの向上を目的とした総合区導入ならば、あくまで間接的な意味合いしかありません。例として挙げるのであれば、例えば福祉の権限でこういった使い方を総合区でやれば、現行制度でやるよりこういったメリットが総合区では出るというのを例示するのが普通です。まあ、現在の大阪自民の話し合いで権限としてとりあえず考えているのが「調達事務」しかないのかもしれませんが、大阪自民が何も考えてないというのがよくわかります。逆にいうと、大阪市役所全体の各調達事務をばらばらにして各総合区に権限として下ろすことで、各総合区での利権化を狙ってるのかも?と邪推もできます。結局、総合区はそういった「イベント関連」と「調達事務」の予算などの直接的な基礎行政に影響が出ないものを合わせて、総合区の予算規模だけはそれなりに整えた形になるでしょう。そしてそういった権限での失敗は、大阪市民の生活には影響は直接は出ません。

 

 結論として、大阪自民の総合区案は

 

1.総合区長の権限は住民交流のみに絞り、いわゆる基礎行政としての都市計画や福祉・健康などの根幹部分の権限移譲はしない。今ある行政区長職は、名前を変えて温存し、行政の継続性は確保。

2.合区は24区を維持するためにやらない。総合区は二区程度を管轄下とはしつつも、現行政区を維持する。

 

 結局、大阪自民での総合区長は、予算も権限もなく、「お飾り」のポストとしてお茶を濁した形のものになるでしょう。市政に影響されるような権限が渡されることはありません。単なる現状維持であり、大阪市民にとって無駄な制度導入になるでしょう。しかし、これは無駄に導入されるわけではありません、大阪自民にとっては。大阪自民案における総合区長は地元有力者、名士と言われる人たちが、選考基準になり、そういった人達が総合区長になるでしょう。これは単純に総合区長が「市長のための集票マシーン」になるということです。つまり、大阪自民の総合区案は「中之島一家」の強化・延長にしかつながりません。 そういった総合区長の仕事は何かというと、今ある住民サービスの予算を削って与えられた予算から、「盆踊り」をして一部の支援者に対して利益誘導をすることです。与えられた「調達事務」の予算から地元企業への発注もあるでしょう。それがたまたま、支援者の企業であるだけです。また、総合区長には配下の区役所に対して人事権が認められてます。コネ、口利きの復活です。まあ一言でいえば、「町内会長の権限強化」ぐらいの意味しかない総合区長になるでしょうね。

  正直、今回はかなり悲観的な見方をしています。こうならないといいとは思ってますが、ほぼ確実にこの線でしょう。どういった権限と予算、それに合して市役所のどういった部局がどれだけの人数規模でそれをバックアップし、組織改編が行われるのか? そしてそれらにかかる行政のランニングコストはどこから捻出するのか?単純に総合区長の給料だけでも相当額になります。こうならないようにするためにはしっかりとした市民の監視が必要です。

 最後に私自身の総合区への評価ですが、ほぼ意味がない制度という認識です。身もふたもないですが。結局、大阪自民が私の予想をいい意味で裏切って多くの権限を総合区につけたとしても、仙台市横浜市程度には付けれないはずなんですよね。現行制度で仙台市横浜市が行政区につけている権限以上のものを付けようとしたら区長公選制にするしかなく、それは現行法では規定がありません。だから総合区の導入を考えている政令市というのが、ほぼないんです。

 総合区は制定する市側に自由を持たすためにわざと白紙にしている制度なので自由度が高すぎるんですよね。そんなわけで具体的なメリットも想像しにくいです。なので、次の回では私なりに考えた大阪市における理想の総合区を想像してみたいと思います。

 

 

参考文献:

大阪市会議員(自民党)活動外伝:総合区 - livedoor Blog(ブログ)

地方自治法の一部を改正する法律関係資料

2014年地方自治法改正の制定過程と論点 ~大都市制度等の見直しと新たな広域連携制度の創設~ 岩 﨑 忠

 第186回国会 総務委員会 第18号(平成26年4月24日(木曜日))

●地方自治法の一部を改正する法律案